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『星降る夜に』第2話、主人公が発した「かわいそうなの?」の温かさ。“正しい”を決めつけないドラマの魅力

<ドラマ『星降る夜に』第2話レビュー 文:横川良明>

『星降る夜に』を観ていると、なんだかとても優しい気持ちになれる。

それは、このドラマが僕たちの抱えている刷り込みや決めつけを柔らかく覆してくれるから。決して「あなたの考え方は間違えている」と声高に押しつけたりはしない。

こんなふうに考えてみることもできるんじゃないかな。

そう新しい絵の具を手渡すように、僕たちのパレットに今までと違う色を加えてくれる。おかげで、世界がさらに彩り豊かになる。

第2話もまたとびきり温かい色で、僕たちの世界を塗り替えてくれた。

◆その人が「かわいそう」なんて誰が決められるのだろうか?

「俺も、かわいそうじゃない?」

そんな柊一星(北村匠海)の問いに、考えたこともなかったという調子で、「一星は、かわいそうなの?」と雪宮鈴(吉高由里子)は尋ね返す。

その根拠に「普通と違うから」と重ねた一星に、鈴は納得したように、一星の「普通と違う」ところを挙げていく。

強引なところ。趣味が多すぎるところ。AVについて熱く語りすぎるところ。

真っ先に出てくるのはそれらで、耳が聴こえないことでも、親がいないことでもないことが、すごく、すごく、温かった。

気を遣っているわけでもなく、美辞麗句でコーティングしているわけでもない。シンプルにそれらは鈴にとって何も同情することではなくて。

それよりも羨ましいことが、自分にないものが一星にはたくさんあるから、そう言っただけ。

鈴のそのフラットさが、なんだかとても心地よかった。

ことの始まりは、マロニエ産婦人科医院に突然転がり込んできた匿名妊婦(清水くるみ)。彼女は名も告げず男児を出産し、姿を消した。

望まれずに産まれた子ども。産後2日で母親から捨てられた子ども。周囲はその赤ん坊を「かわいそう」な目で見て、母親を連れ戻すことが「正しい」とした。

それは、これまでたくさん「かわいそう」と言われ続けてきた一星でさえ同じだった。子どもは、親のもとで育つことが「正しい」んだと決めつけていた。

でも、鈴だけ違った。母親が帰ってきたところで幸せだという保証はないと言い、然るべき手続きを経て、福祉の手を借りた。

もちろんこの選択が「正しい」と決まっているわけじゃない。この赤ん坊の未来に何が待っているかは誰にもわからない。いつかあのとき母親を連れ戻さなかったことを悔やむ日が来るかもしれない。

それでも、いなくなった母親を探すことだけを考えていた人たちのパレットに、鈴の選択は違う色をくれた。

血のつながった親のもとで大きくなることだけが幸せではない、という色をくれた。

そうやって世の中の見方を広げてくれることが、いろんな価値観を持たせてくれることが、ドラマの一つの魅力であり、だから思う、『星降る夜に』はとても魅力的なドラマだと。

◆人と関わることで世界の見方が広がっていく

しかも、第1話と第2話で役割が入れ替わっているのがいい。

第1話では、一人で母を死なせたことに罪悪感を抱える鈴に、一星が「寂しかったと決めつけるのも違うんじゃないでしょうか」と教えてくれた。

第2話では、置き去りにされた赤ちゃんを憐れむ一星に、鈴が「まだ2日しか生きていないのに、かわいそうだとか不幸だとか決めつけられるのは、なんか、おかしい気がする」と気づきを与えた。

常にどちらか一方が正しくて、どちらか一方の価値観が偏っているというわけではなくて。お互いそれぞれ世界の見方が違っていて、共に関わり合うことで、世界の見方を広げていく。そんな関係性が、美しい。

あそこで、鈴に「かわいそうなの?」と確かめられ、首を振る一星の表情が見事で。

喜怒哀楽で簡単に振り分けられない機微がそこにはあって。心のいちばんデリケートな場所にふれられて、幼い子どもに返ったみたいな顔をしていた。

ちょっと強引で、自己肯定感がめちゃくちゃ高そうな一星を、北村匠海は溌剌と演じていて、その天真爛漫な表情にぐいぐい心が引き寄せられてしまうけど、あの首を振ったときの一瞬の表情にこそ、ト書きでは決して指定しきれない役の内面を的確に汲み取る北村匠海の感性が凝縮されていて、胸を掴まれた。

そして、毎回のことながら、どうして吉高由里子はこんなにも聖女のようにすっと立ち、少女のように無邪気に笑うことができるんだろう。

吉高由里子の演じる鈴には、35年の人生を自分の足で生きてきた強さと聡明さがある。それでいて、足跡ひとつない真っ白な雪原のような無垢もある。

吉高由里子が演じることで、どんな人物もとびきりチャーミングなヒロインになる。雪宮鈴もまたそうした共感と愛着を誘うヒロインになりつつある。

役割が入れ替わると言えば、前半は一星が既読のまま返事が返ってこないことに悶々としていたのが、後半では鈴が既読スルーされていることにモヤモヤしているのもよかった。

そうやって糸と糸が絡み合うように、心を近づけていく2人。ラストでは、早くも一星が告白をした。はたして鈴はなんと答えるのだろうか。

◆今回、新しく手話をいくつ覚えましたか?

また、発話と手話をクロスさせながら描いていくことで、相手が読み取れなかった言葉を、上手に隠したり言い換えたりしているところもいい。

春(千葉雄大)との居酒屋のシーンでは、ダイレクトすぎる下ネタをオブラートに包んで伝えたり。鈴にわからないと思って一星が「つき合ってるもん」と見栄を張ったり。口元を隠して、一星のことを尊敬していると春が鈴に伝えたり。そのやりとりが微笑ましい。

でもいちばんは、やっぱり鈴から「かわいそうなの?」と言われたあと。

「その赤ん坊がめちゃめちゃハッピーに生きますように」と手話でお祈りした一星は、何と言ったのかを聞かれて、「その赤ん坊に俺を見習うように言っとけ」と返す。

いつも見せる一星の自信満々な態度の裏側には、こんな優しい心があるんだなと思えて、ますます一星を好きになった。

お互いの名前を手話でどう表すのかを教えるシーンもすごく可愛らしくて、一星の手話を見ながら、鈴と同じように画面の前で真似てみた視聴者もきっと多かったはず。

きっとこのドラマが終わる頃には、たくさん新しく手話を覚えていることだろう。

鈴と一星の飾らない関係性と、『星降る夜に』の温かい世界に、ますます惹きつけられていくことを確信するような第2話だった。(文:横川良明)

※番組情報:『星降る夜に
【毎週火曜】よる9:00~9:54、テレビ朝日系24局

※『星降る夜に』最新回は、TVerにて無料配信中!(期間限定)

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