遅咲きのニューヒロイン・渡辺倫果、運命を変えたコーチとの出会い。「ジャンプ自体怖くなくなりました」大技習得の裏に“魔法の言葉”
世界6ヵ国で開催された氷上サバイバル『フィギュアスケート・グランプリシリーズ』。
激闘を勝ち抜いた上位6名が、現地時間12月8日から行われる『グランプリファイナル』で世界一を争う。
その舞台に初めて立つのが、日本のニューヒロイン・渡辺倫果だ。
世間の注目を浴びたのは、初出場となったカナダ大会。ショート6位で迎えたフリーで大技・トリプルアクセルを成功させ、大逆転で初優勝を成し遂げた。
フィギュア界では遅咲きといわれる20歳のニューヒロインは、いかにして檜舞台にたどり着いたのか?
その道のりには、苦難の中で生まれた出会い、そして手にした“大技”があった。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、遅咲きのニューヒロイン・渡辺倫果が歩んだ栄光までの道のりを特集している。
◆趣味は“ダイオウグソクムシ”
渡辺:「こちらが、ダイオウグソクムシのぬいぐるみです。丸みを帯びているこの感じ、脚のワシャってしている感じが好きです!」
自慢のぬいぐるみを笑顔で紹介してくれた渡辺。
初優勝を果たしたカナダ大会では、記者から趣味について質問され、こんな風に答えていた。
渡辺:「中学生くらいの時に水族館でダイオウグソクムシを見て、6年間断食しても生きられるという魅力に惹かれました。今は、コレクションしている次第であります!」
この明るいキャラクターも相まって、海外でも一躍注目される存在になった。
そんな渡辺がスケートをはじめたのは3歳のとき。
渡辺:「荒川静香さんが金メダルを獲ったトリノオリンピックを2、3歳の時に観て、母親に『これをやりたい』と言ってフィギュアをはじめました」
12歳の頃に開催された世界国別対抗戦では、開会式で日本国旗を持つ大役を果たす。
当時、全国大会で優勝も経験していた彼女は、大会最終日に行われたスケート教室でトリプルトウループを披露。同世代に頭一つ抜けた実力を見せつけていた。
◆自分を変えてくれたコーチとの出会い
しかし、その後は不遇の10代を過ごすこととなる。
渡辺:「全日本ノービスB(10歳以下の全国大会)を2年目(10歳)で優勝しました。自分のスケート人生で本当に明るかった頃って、正直自分の中ではそこだけなのかなと思っています」
15歳でカナダへ練習拠点を移すが、大きな大会では目立った成績を残すことはできず、18歳のときにコロナ禍の影響で帰国してからも活躍はなかった。
しかし、19歳になった2021年8月に大きな転機が訪れる。
多くの有望なジュニア選手を指導している中庭健介コーチとの出会いだ。渡辺は中庭コーチに、これまでの考え方を一変させられたという。
渡辺:「試合前日や当日の練習が完璧じゃないと本番でもできないというマインドを持っていたけど、先生からは『ちゃんと練習していたら本番での成功率は高いというだけで、別に失敗しないとも言い切れないけど、失敗する確証もないでしょ』と言ってもらいました」
本番での失敗を恐れすぎていたあまり、本来の実力を発揮できないまま結果を残せずにいた渡辺。そこで、漠然とした恐怖や不安への乗り越え方を課題として取り組むように。
中庭コーチは「1年半でずいぶん変わってきたなと、そこは自信を持って言えますね」と教え子の成長に目を細める。
◆大技習得を実現させた“魔法の言葉”
さらに渡辺は、自分を変えるために大技の習得に挑むことを決めた。
それが、「トリプルアクセル」。
今シーズンのグランプリシリーズでも、女子では3人しか挑戦していない難度の高い技だ。これまでは失敗によるケガのリスクを考慮し、取り入れてはこなかった。
しかし今シーズン、リンクには何度転んでも立ち上がり、跳び続ける渡辺の姿があった。
渡辺:「『怖いと思う感情を自ら引き出して呼び起こしているから、逆に怖いと思った時は自分が普通に跳べている時のことを思い起こしてください』と言われて。最近それをするようになってからジャンプ自体そんなに怖くなくなりました」
その言葉の意味を、中庭コーチは次のように語る。
中庭:「結局この競技って、新しいジャンプを取得するまでの練習は全部失敗なんですよ。だから失敗した時に怖くなったり不安になるよりも、次どうしようとか、その先への意識の持っていき方が一番教えている部分ですね」
練習の成果はすぐに表れた。
9月に行われたロンバルディア杯。世界女王・坂本花織も出場するハイレベルな大会だ。
渡辺は同大会のフリーで、ついにトリプルアクセルを国際大会で初めて成功させる。失敗を恐れない挑戦が優勝へと繋がった。
そしてこの大金星が、さらなるチャンスを手繰り寄せる。
グランプリシリーズ・カナダ大会にエントリーしていた選手が欠場。ロンバルディア杯の成績が認められ、代打として出番が回ってきたのだ。
渡辺:「夢見心地というか、小さい頃から憧れていた大会のうちのひとつに出られることを、本当に光栄に思っている」
大会前のインタビューで、そんな風に喜びを語った渡辺。
めぐってきた突然の大舞台。ショートはトリプルアクセルの着氷が乱れ、6位に終わる。
翌日は、逆転に必要なトリプルアクセルを中庭コーチと入念に確認しながら、フリー直前の練習まで繰り返し跳んでいた。
迎えた勝負の4分間。今度は見事にトリプルアクセルを成功させ、その後もジャンプを次々と決めていく。
演技後には渾身のガッツポーズ!
代打エントリーとなったグランプリシリーズで大技を成功させ、大逆転優勝。コーチと二人三脚で栄光を掴み取った。
渡辺:「中庭先生は私以上に私のことを信じてくれるので、先生が信じてくれるのであれば、私はもっともっと上に行きたいと思っていますし、もっともっと恩返しできるようにがんばっていきたいと思います」
続く2戦目との総合成績により、初めてのファイナル進出が決定した渡辺。
選ばれし6名で争われる世界一決定戦の舞台は、イタリア・トリノ。そこは、彼女が憧れる荒川静香がオリンピックで金メダルを獲得した場所でもある。
遠回りしたぶん、喜びは大きい。
渡辺:「今までのスケート人生を考えると、苦しんだぶん良い方向に向いていっているんじゃないかなと思うので、小さい頃の自分に『ファイナル行けたよ』『いい演技できたよ』って言えるように頑張ればいいんじゃないかなと思います」
※番組情報:『フィギュアスケートグランプリファイナル2022』
◆地上波
12月9日(金)よる8:30~ 男子ショート・ペアショート
12月10日(土)よる8:00~ 女子ショート・男子フリー・ペアフリー
12月11日(日)よる9:55~ 女子フリー・エキシビション
◆テレ朝動画
12月8日(木)~11日(日)有料LIVE配信!
見逃し視聴、特典映像も!詳しくは、テレ朝動画HPへ
◆CSテレ朝チャンネル2
12月28日(水) あさ8:00~ ほか
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