高橋克実、映画初主演に驚き「こんなオヤジを誰が主役に?」 監督の名前を聞いてさらに驚きの展開に
1990年代後半、ドラマ『ショムニ』(フジテレビ系)でブレイク以降、数多くのドラマ、映画、舞台、CMに出演してきた高橋克実さん。
『フルスイング』(NHK)、『僕らプレイボーイズ 熟年探偵社』(テレビ東京系)、『確証~警視庁捜査3課』(TBS系)、『デジタル・タトゥー』(NHK)など主演ドラマも多く、『トリビアの泉~素晴らしきムダ知識~』(フジテレビ系)の司会や『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ系)のMCとしても活躍。
2022年10月14日(金)には初主演映画『向田理髪店』(森岡利行監督)の公開が控えている。
◆大好きだった本格刑事ドラマに主演
2013年、高橋さんは『確証~警視庁捜査3課』で民放ドラマ初主演を果たす。このドラマは窃盗犯を担当する警視庁捜査3課のベテラン・萩尾刑事(高橋克実)と新たに配属された若手女性刑事(榮倉奈々)がコンビを組み、さまざまな事件に挑む姿を描いたもの。
「刑事ドラマが大好きだったので、とてもうれしかったですし、何よりも榮倉(奈々)さんとコンビが組めたのが楽しかったですね(笑)。最近、榮倉さんとは『オールドルーキー』(TBS系)でもご一緒でした。
『確証~警視庁捜査3課』では、捜査1課のエリート警部補を演じたバナナマンの設楽(統)さんが印象的でした。僕の役とはお互いのプライドをかけて何かと対立するという設定で、そのやり取りが自分でもやっていておもしろかったです」
-主演ということでプレッシャーはありましたか?-
「そのときはあまり感じていなかったんです。普段よりセリフと撮影日数が多いなあ、という感じで(笑)。でも実際は、プレッシャーを感じる余裕もなかったんだと思います」
-セリフ覚えはいいほうですか?-
「いいえ、必死ですね。毎回必死です。『セリフ覚えがいい』と言ってみたいです(笑)。先輩の中に、まるで複写機みたいにセリフを覚えられる人がいらっしゃいますが、ちょっと台本を見るだけで頭に入るなんて信じられないです」
-大好きな刑事ドラマということですが、何か事前にされたことは?-
「撮影前に、元捜査3課だったという刑事さんにお会いする機会があったんですが、全然刑事に見えなかったんです。その方が『刑事は、一般の人と同じようにして街の中に溶け込まないとダメだ』っておっしゃったんです。それを聞いて、僕が演じた萩尾も普段は刑事に見えないようにしようと心がけながら演じました」
◆生番組のメインキャスターのオファーにビックリ!
2015年、高橋さんは、安藤優子さんとともに『直撃LIVE グッディ!』のMCをつとめることに。
「聞いたときにはビックリしました。僕が情報番組のMCで、しかも安藤優子さんの隣に立つなんて、どう考えてもありえないじゃないですか(笑)。
でも、僕ならやれる、僕のためになると考えてくださった方がいたわけですから、覚悟を決めてやることにしたんです」
-生番組を5年半、大変だったでしょうね-
「たしかに大変なこともありましたね。今から考えると、よくやっていたなあと思うこともあります。でも、安藤さんがいらっしゃるわけですから、僕は安藤さんに付いていくだけでした。安藤さんなしでは僕なんかモゴモゴ言って終わりだったでしょうね」
2019年には、『デジタル・タトゥー』に瀬戸康史さんとW主演。これは、インターネットに疎(うと)い50代の“ヤメ検弁護士=元検事の弁護士”(高橋克実)が20代の人気ユーチューバー(瀬戸康史)とバディを組み、「デジタル・タトゥー」と呼ばれるインターネット上に書き込まれて消せない誹謗(ひぼう)中傷や個人情報の拡散によって苦しめられている人たちを救い出す姿を描いたドラマ。
-今の時代ならではのドラマでしたが、わからないネット用語が結構ありました-
「そうですよね。僕もネット用語がわからなかったからスマホで調べてみたりしたんですけど、結局わからなかったです(笑)。
でも、インターネットに疎いという設定なので、わからないままやってもいいのかもしれないと思い直しました。僕世代にはインターネットが苦手な人もたくさんいますから、そういう人たちが身近に感じて楽しめるドラマになっていたと思います」
※映画『向田理髪店』
2022年10月7日(金)より福岡+熊本先行公開
2022年10月14日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開
配給:キャンター
脚本・監督:森岡利行
出演:高橋克実 白洲迅 板尾創路 近藤芳正 筧美和子 根岸季衣 富田靖子ほか
◆コロナ禍で細心の注意を払いながら初主演映画を撮影
2020年9月に『直撃LIVE グッディ!』が終了して以降もドラマ、映画、舞台で多忙な日々を送っている高橋さん。2022年10月14日(金)には初主演映画『向田理髪店』が全国公開される。
これは、寂れた元炭鉱町「筑沢町」にある理髪店の親子の葛藤を軸に、過疎化、介護、結婚難など、どこの地方も抱える深刻な問題に直面しながらも懸命に生きる人々を描いた映画。
高橋さんは、若い頃夢を抱いて上京したものの挫折、親の介護と跡を継ぐために地元に戻り、理髪店を営む主人公・向田康彦を演じている。
-主演ドラマは多いですが、映画は初主演なのですね-
「ビックリですね。『僕?』って(笑)。『こんなオヤジをいったい誰が主役にキャスティングしたんだ?』って思っていたら、監督の名前を聞いてさらにビックリでした。
森岡(利行)監督とは20代の頃に同じ劇団で一緒に芝居をしていた間柄なんですけど、それ以来になるので、一緒に仕事をするのは約30年ぶり。監督も僕と同じようにすっかりオヤジになっていました(笑)」
-理容師さんということで、ヘアカットの仕方とかハサミの使い方を教えていただいてから撮影に臨まれたそうですね-
「はい。今年(2022年)1月に100年続いた理容店を閉めたばかりだという92歳の先生に、富田(靖子)さんと一緒に教えていただきました。あの先生はすごかったです」
-先生が高橋さんと富田さんはとてもお上手だとおっしゃっていたとか-
「僕はそんなにうまくはなかったと思います。本当に難しかったですから、うまく見えたとしたら、それは撮り方が良かったんだと思いますよ。
お店もすごくいいセットでしたし、スタッフさんやキャスト、多くの方に協力していただいて、ポスターを見たときに『ああ、こういう床屋さんいるなあ』って思いましたから」
-後継者問題や過疎化など、地方が抱えるいろいろな社会問題を盛り込みながらもユーモアたっぷりで心温まる作品ですね-
「そうなんですよ。いろんな地方の“あるある”というか、普遍的な問題がテーマに盛り込まれているんですが、全然説教臭くないんです。ただ笑ってホロリとしていたら、気づかないうちに色々な問題を考えさせられていた…という感じで。とてもいいバランスの映画だと思いました」
-奥さん役が富田靖子さん、絶妙なコンビネーションでしたね-
「全部富田さんが引っ張ってくださって、助けていただいていました。富田さんじゃなかったらこうはならなかったでしょうね、本当に」
-東京で働いていた息子(白洲迅)が突然帰郷し、会社を辞めて店を継ぐと言い出しますが、素直に喜ぶ奥さんと対照的ですね-
「そうですね。自分の過去が頭をよぎり不安を感じる。寂れていく街を何とか活性化させようと考えて息子がいろいろアイデアを出しても、そんなに簡単にいかないこともわかっていますからね。その辺のジェネレーションギャップもよく描かれていると思います」
-板尾創路さんと近藤芳正さん演じる地元の幼なじみと大人になっても続いている友情も微笑(ほほえ)ましかったです-
「そうですね。それぞれに子どもがいて問題も抱えているんですけど、あの辺がやっぱりおもしろかったです。お二人と一緒で本当に楽しかったですね」
-撮影で印象に残っていることは?-
「やっぱり大牟田の皆さんの温かさです。街の人たちが全面協力してくださって、エキストラから何から全部何でもやってくださいました。
たとえば、劇中着ている緑色のジャージの上下も、最初に用意されていたものは、ちょっとカッコよすぎるイマドキのものだったんです。
『僕らのイメージは胸に子どもの名札が付いているような、緑色のやつなんですよね、子どもが学校で着ていた体操服をもったいないから親が着ているという感じ』って言ったら、大牟田の商工会議所の人たちがすぐに揃(そろ)えてくれたんです。ものの数十分もしないうちにですよ。本当に驚きました。
そういう地元の皆さんの力で成り立っていると今回強く感じたので、たとえばJリーグのチームのように、映画も地元に根ざして盛り上がっていったら、どんどん作れるのではないか…と感じたりしました」
-劇中で映画の撮影クルーが地元に来て歓待されるというシーンがありますが、実際もああいう感じでした?-
「そうです。一度体育館で映画を上映したときに僕たちが紹介されて一言ずつあいさつしたんですけど、盛大な拍手をしていただきました。本当に温かい方たちばかりでしたね、大牟田の皆さんは」
-コロナ禍での撮影は大変だったのでは?-
「はい。いろいろ対策を講じながらの撮影でした。そうやって細心の注意を払いながらみんなで力を合わせて作り上げた作品なので、たくさんの方に観ていただけたらいいなあと思っています」
-コロナでいろいろなお仕事が中断されたりとかあったと思いますが-
「本当にドラマの現場でも舞台でも同じですが、誰かひとりでも感染すると中止や延期になるので、どこかいつも緊張が続いている気がします。この状態が、いつになったら終わるんだろうと考えたりしますが、とにかく自分たちでできる限りの対策をして、前を向いて進んでいくしかないですよね」
-今後はどのように?-
「これまでと同じように、いただいた一つひとつの仕事と真剣に向き合って大切にしていきたいと思っています。それに、この仕事は僕一人では何もできないですから。スタッフさんたちや共演者の皆さんに助けていただいてやってきているので、これからもそういう人と人のつながりを大切にしていきたいと思っています」
-私生活では二人のお子さんのパパですね。お子さんたちとはどのように?-
「まだ子どもが小さいので、休みは全部子ども優先になりますね。息子は少年野球をやっているので、それに付き合ったり、子どもたちの送り迎えもやっていますよ。
とにかく今の生活の中心は子どもたちです。『今が1番可愛いときだよ』と周りに言われるんですが、たしかに家族と一緒にいるのが楽しいですし頑張れますね(笑)」
お子さんたちのお話をされるときの優しいまなざしが印象的。主演映画の公開も控え、公私ともに多忙な日々が続く。(津島令子)
ヘアメイク:国府田雅子(b.sun)
スタイリスト:中川原寛(CaNN)