加藤ローサ、3週間“主婦業”から解放された映画ロケ。結婚して10年、初めて体験した時間は「最高のデトックス」
2011年、人気絶頂の26歳のときに、サッカー元日本代表の松井大輔選手(現在Y.S.C.C.横浜)と結婚して芸能活動を休止し渡仏した加藤ローサさん。
フランスで第一子となる長男を出産。フランス、ブルガリア、ポーランドの3カ国で3年間の海外生活を経験した後、2014年に松井選手がジュビロ磐田でプレイすることになったため帰国。母親が暮らす鹿児島で第2子となる次男を出産し、静岡県で4年間過ごした後、松井選手が横浜FCに移籍。加藤さんは芸能活動を再開することに。
◆連続ドラマ復帰はちょっと早かったと思ったが…
静岡時代は雑誌の表紙に次男と一緒に登場したり、CMに出演することはあったものの、ほとんど仕事はせずに主婦業に専念していたという加藤さんだが、2019年に女優業に復帰。『地獄のガールフレンド』(FODオリジナルドラマ)に主演する。このドラマは、それぞれ事情を抱え、シェアハウスで同居することになった3人の女性の日々を描いたもの。加藤さんはバツイチのシングルマザーを演じた。
-全10話だったので、撮影が大変だったのでは?-
「そうですね。子どもが夏休みというのもあってやらせていただいたのですが、あのときは下の子がまだ幼稚園生だったんですよ。子どものケアも大変だったので、連ドラはまだちょっと早かったかなあと思いました。
(撮影期間は)育児はほぼできませんでしたけど、だからと言ってまったく家に帰らないわけじゃなくて、家に帰れば帰ったでやることがいっぱいあったので、どっちつかずになっちゃって…」
加藤さんは、それから2年後の2021年には『きれいのくに』(NHK)に出演。このドラマの舞台は、美容整形が当たり前となり、大人の男性の顔はみんな稲垣吾郎さん、女性の顔は加藤さんの顔をしているという不条理な国。美容整形が禁止になり、大人がみんな同じ顔をしている中で、それぞれ違う顔をした若者たちが繰り広げる恋愛、悩み、容姿に対するコンプレックスなどを描く青春ダークファンタジー。
-ユニークな設定のドラマでしたね-
「はい。大手事務所を辞めたとき、もうドラマは無理かもしれないと思っていたんですけど、幸運なことに。こんな大役がやってくるとは思わなかったのでビックリしましたが、ありがたかったです。夢みたいだなって思いました。
“みんなが憧れる顔”という役柄だったので、『私で大丈夫かな?』って心配になりましたけど(笑)。でも、プロデューサーの方が『これまでにないドラマを作りたい』と熱くおっしゃったので、私も一緒にチャレンジしたいと思いました。もう二度とこんなことはないかもしれないなあって。
実は『きれいのくに』が決まったときに、初めて演技レッスンに通ったんですよ。めっちゃ楽しかったです。私はこういうことをしたかったんだって思いました(笑)。ちゃんと演技の勉強をしてから仕事をはじめたかったなあって。贅沢(ぜいたく)な話なんですけどね」
※映画『凪の島』
公開中
配給:スールキートス
監督:長澤雅彦
出演:新津ちせ 島崎遥香 結木滉星 加藤ローサ 徳井義実(チュートリアル) 嶋田久作 木野花
◆結婚後初となる3週間の単身ロケは最高のデトックスに
加藤さんが出演している映画『凪の島』が現在公開中。この映画は、両親(徳井義実&加藤ローサ)の離婚によって母の故郷である山口県の小さな島で暮らすことになった小学4年生の凪(新津ちせ)が、周囲の人々との交流を通して成長していく姿を描いたもの。
長澤雅彦監督とは10代のときに『夜のピクニック』、20代のときに『天国はまだ遠く』でタッグを組んだ経験があり、今回で3作目。加藤さんにとって、約10年ぶりの映画出演となった。
-山口県で3週間のロケだったそうですが、ご家族は?-
「それがまた『本当に神さまっているんだな』って(笑)。夫は10カ月間ベトナムに行っていて、帰ってきたタイミングだったんですよね。夫が帰国して2日後に私が山口に出発することになっていて。
コロナ禍で、海外から帰国したときの隔離が2週間だったので、彼は帰国したはいいけど2週間外出がダメで仕事ができなかったんです。
なので、その2週間は子守りをすることに。隔離と言っても家にいれば良かったので、ガッツリ子どもを見てもらいました。10カ月間ベトナムでいなかった父子の絆を深めておいてみたいな感じで(笑)。
それで2週間経って彼が社会復帰したときに、お義母さんが来てくださって子どもの面倒を見てくれたので、山口で3週間、何の心配もなく過ごすことができました」
-お子さんたちはママがいないと泣いたりすることもなく?-
「『ご飯どうするの?』とか、不安がってはいましたね。すべてのライフラインを私がやっているので不安がってはいたけど、何とかなっていたみたいです」
-3週間主婦業から解放されたわけですね-
「はい。そんなことは結婚してから初めてのことだったので、瀬戸内海を見たときの感動は今でも覚えています。『生きていて良かった。ここに3週間もいられるの?ご褒美(ほうび)だなあ』って思いました、本当に(笑)。
私が演じた真央は、離婚して都会から娘と島に出戻るので、心はズタボロの状態だったと思いますが、私と同じようにこの地でデトックスしたに違いないって思いました。
撮影中は3連休とか4連休があったんですけど、コロナ禍だから東京に戻っちゃダメということで、一人でいろんなことをゆっくり考える時間もたくさんあって。家事も何もしなくていい、1日24時間、全部自分だけの時間なんて夢のようでした。
『じゃあNetflixに入ろう。今まで見たいのがいっぱいあったのに見る時間がなかったから、好きなときに好きなものを見て、好きなものを食べて、好きなときに寝て…って、こんなに幸せなことなんだ』って(笑)。
結婚して10年。本当にプレゼントだと思いました。3週間も家事、育児何もやらなくていいなんてことは、子どもが育つまで無いんですよね。だから贅沢なことだなあって思いました。
めっちゃ心の底からリフレッシュしました。デトックス。身体からヘドロみたいなのがいっぱい出たと思います(笑)」
-長澤(雅彦)監督とは3作目になりますね-
「はい。10代のときに『夜のピクニック』、20代のときに『天国はまだ遠く』で、30代で今回の『凪の島』。うれしかったです。監督から連絡をいただいたとき、すぐに『やる、やる!』って言って、マネジャーさんの連絡先を伝えました」
-夫役も『天国はまだ遠く』で共演経験がある徳井義実(チュートリアル)さんでしたね-
「はい。今回は優秀な外科医だけどアルコール依存症の元夫という設定でしたけど、久しぶりにお会いできてうれしかったです。
監督が2010年から山口にも在住しているので、スタッフの方はほぼ山口の方で、映画の撮影は初めての方たちが多かったんですけど、『みんなで頑張って作りましょう』という温かい感じの現場でした。とても楽しかったです。
山口ではキャスターもやっている方が映画の撮影のときには美術をやっていたりとか、本当に皆さんがいろいろ力を合わせて、それぞれ足りないところを補いあってやっていたので、手作り感満載でホッコリしました」
-実生活では2人の男の子のお母さんですが、劇中では女の子のお母さん役でした。いかがでした?-
「楽しかったです。男の子2人だと、言葉を交わすというよりかは、『ワーワー、ドタンガシャーン』という感じなので、じっくり言葉を交わすというのはあまりないんですよね。
(新津)ちせちゃんは私の子どもより学年が一つ上というのもありますけど、すごくしっかりしているから、いろんな話もできたのがすごく楽しかったです。女の子だとアクセサリーやファッションの話もできるからいいですよね」
-一緒に海に飛び込むシーンもありましたね-
「はい。クランクイン前から泳ぎの練習をしていました(笑)。家族が再生していくステキなシーンだなあって思いました」
◆仕事に復帰したことで子どもたちに変化が
約10年間、家庭生活を優先してきた加藤さんだったが、芸能活動に本格復帰したことで子どもたちにも変化があったという。
-お子さんたちは加藤さんがお仕事をされることに関してはどのように?-
「理解してくれていますし、活躍してほしいみたいです。たまに街で声をかけられたりすると、『良かったね』って言ってくれたりしています(笑)。
あと、私に似ている方がこの間テレビに出ているのを見て『これは何でママじゃないの?ママもやりたかったでしょう?』って言ってくれたりとか。私が仕事が好きだということが伝わっているんだと思いました」
-お仕事をされて留守にしたりすると、しっかりしてくる部分もあるかもしれないですね-
「そうなんですよ。私は何でもかんでもやってあげちゃっていたんですよね。育児の反省点です。色々小言を言うよりも自分がやっちゃったほうが早いので全部やってあげていたんです。そうしたら何もできない子どもになっちゃって。
『凪の島』の撮影中にいろいろ考える時間もたくさんあったので、『何であんなに全部やってあげていたんだろう?』って反省しました。
夫はご飯も作らない人だったし、子どもたちの習い事とか、何が好きで何が嫌いかとか何も把握していなかったんです。それで私にいちいち『ねえねえ、習い事の道具はどこ?』って連絡が来て、『何年も続けている習い事なのに、まだそれ知らないの?』という感じで。
私が全部完璧な状態で準備をしてあげちゃっていたんですよね。アイスとかを食べた後の袋を置いたままにしていたのも全部私が捨てていたんだけど、これじゃあダメだ、本当に何もできない人になってしまうと思いました。
今は置きっぱなしにしていると『これ自分で捨てて。ママだっていつもいるわけじゃないんだよ』って、ちゃんと自分で捨てるまで言って自分たちでやらせています」
-お仕事に関してはどのように?-
「そろそろ本腰を入れてできるんじゃないかなって思っています。夫がまだ現役なんですけど、40を越えているのでそろそろかなという話は2人でしています。もともと現役を引退したときはバトンタッチするという約束だったんですけど、私が最初思っていたより現役生活が長かったですね」
-今やってみたいお仕事は何かありますか?-
「こうやって丁寧に一つの作品と向き合う楽しさを知ることができたので、一つひとつ、じっくり向き合ってこの役の1番の理解者になれそうだと思える役が来たらいいなあって思っています。一つひとつの役を大事にしていきたいですね」
-一度休業したというのは、良かったかもしれないですね-
「そうなんです。無理をしてやっていたら途中でできなくなって迷惑をかけたかもしれないですし、休業したことによって、仕事が好きなんだということがわかりました。
何でイヤになったかって言うと、一つひとつの仕事を丁寧にやりたかったのにできなかったことだったんですよね。本当に忙しすぎて一睡もしないでシャワーだけ浴びて次の仕事に行くということも多々あったんですよ。
考えることもできずに、ただ決められた場所に立ってセリフを言えばいいみたいなときもあったので、それが自分の中でイヤだったんだなあって。
この10年で今が一番楽しいです。出演している映画の番宣に出るなんて、昔はそのありがたみとかが全然わからなかったんですけど、今は、『やるよ、やるよ、私で良ければ応援団』という感じです(笑)」
キラキラした瞳で朗らかに話す姿は昔と変わらず、とてもキュートでまぶしいほど。『凪の島』がきっかけで、山口県でゴルフの番組に出演することになり、毎月収録に行っているという。さまざまな経験を経て、本格復帰した加藤さんの今後の活躍が楽しみ。(津島令子)
ヘアメイク:三宅茜
スタイリスト:浜木沙友里