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矢本悠馬、自信がなく“とがっていた”飛躍の年。親友・間宮祥太朗との初共演時は「仲よくしようと思わなかった」

「大人計画」の研究生試験を受けて合格した5人のひとりとなった矢本悠馬さん。

才能を発揮し、早い段階で宮藤官九郎さんの舞台に出演することになるが毎日先輩にダメ出しを出される日々。ムカついて「実力じゃ勝てないけど、名前と顔だけは、今僕にボロクソ言っている先輩たちより売れてやるぞ」と思っていたという。

研究生になって2年目には、テレビや映画に出演するようになり、『水球ヤンキース』(フジテレビ系)、連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)、映画『ちはやふる』シリーズ(小泉徳宏監督)、大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK)など話題作が続き注目を集める存在に。

 

◆カッコいい体づくりをするトレーニングなどしたこともなく…

2014年、矢本さんは『ごめんね青春!』(TBS系)、連続テレビ小説『花子とアン』(NHK)、『水球ヤンキース』(フジテレビ系)など次々と話題作に出演することに。

-『花子とアン』も印象的でした-

「あれは意味わからなかったです。昔『てるてる家族』に出たことはありましたけど、朝ドラのオーディションなんて行ったこともないのに…。

当時のマネジャーに『朝ドラのオファーが来たんですけど』って言われて、『嘘だろう?』って(笑)。それで、『どうせ1シーンちょっと出るような役名がないAとかBとかC、そういうのだろうなあ』って思って台本をもらったらビックリでした」

-地主の息子のタケシ役でしたね-

「そうなんですよ。ヒロイン(吉高由里子)とか窪田正孝くんの幼なじみのメインキャストだったので、『何で?なぜだ?』みたいな感じで(笑)。本格的にはじめて2年後ぐらいにそういうのが来たので天狗になりかけたというか。『楽勝じゃん』とかって思っちゃったですね。プラス、映画のオーディションとかにも受かったりしたので。

舞台で頑張っていたので、頑張っているのは見てくれている人は見てくれているんだなという奢(おご)りみたいなのも出てきたかもしれないですね。何かちょっと調子に乗りはじめた時期ではあったと思います」

2014年7月から9月まで放送されたドラマ『水球ヤンキース』は、かつてヤンキーに助けられたことがある帰国子女の主人公(中島裕翔)が、廃校寸前の高校に転校し、ひょんなことから“水中の格闘技”と呼ばれる水球をはじめることになり、仲間とともに“てっぺん”を目指す姿を描いたもの。

矢本さんは、中島裕翔(Hey! Say! JUMP)さん演じる主人公のチームメート・宮口幸喜役。ほかのチームメートとして山﨑賢人さん、吉沢亮さん、間宮祥太朗さん、千葉雄大さん、中川大志さんが出演した。

「今考えたら、『あんな輝かしい人たちの中に何で僕が呼ばれたんだろう?』って思いますよ」

-そんなことはないと思いますが、水球シーンが大変だったとか-

「そうですね。練習で血を吐きました(笑)。びっくりしましたけどね。水泳は、小学生のときに夏休みだけスイミングスクールに行っていたから泳ぐことはできたんですけど、久々の運動というのもあって体力もなくなっていたので。

水球の基礎練習としてクロールをずっと泳がされるんですけど、何百メートルか泳ぐというのを急にやったので、自律神経がいかれたんでしょうね。しんどくて吐きそうだと思ったら、血を吐いてしまいました(笑)」

-ほかの皆さんはどうでした?-

「周りは日頃からフィジカルトレーニングというか、体作りをしていたみたいなんですよね。ボディメイクでトレーニングをしているので、体力もあるし、準備をしていたんだと思いますよ。

僕は全然、『大人計画』で笑いを探求する旅に出ていたので(笑)。カッコよく体を作るトレーニングなんてまったくしていなかったので、きつかったです」

-『水球ヤンキース』で初めて間宮祥太朗さんと出会って、『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)でも共演、そして現在公開中の映画『破戒』でも共演されていて親友だということですが、第一印象は?-

「普通に年下の男の子っていう感じでした。普通に敬語で話してきて、あいさつもしっかりしていましたね」

-長く深いお付き合いになるとは?-

「思っていなかったです。僕自身、『水球ヤンキース』のときには共演者と仲よくしようというメンタリティーもなかったですから。ライバルとしか思っていないというか、ライバルとも思ってなかったかもしれないですね。『そっちはそっちの世界で戦ってくれ。僕は別にほかの道で戦っていくから』みたいな感じで(笑)」

-結構とがっていた時代があったとか-

「そうですね。あまりとがっているとかは言いたくないですけど、だいぶピリピリしていたし、普段仕事場にいないときもとがっていたかもしれないです。

おもしろくなるためじゃないですけど、自分が今おもしろいかどうかを確認するためにも、仕事場でもプライベートでもずっと自分が今あるアイデアとかイメージとか、お笑いの武器みたいなのを他人で練習のようなこともしていましたね。

当時、風刺的なお笑いとかが自分の中で得意なのかなみたいな感じで、そっち系に走っていたので、性格もどんどん悪くなっていきましたね。おもしろいのを見つけるために。だから結構ブラックな笑いもやっていたし、とがっていました。何とか爪痕を残さないとやばいというのもあったので」

-それが変わったのは、何かきっかけがあったのですか?-

「別に変わったつもりはないんですけど、多分何者でもなくて、誰にも認められていなかったというのは、とがりやすい状況だったのかもしれないですね。自分にあまり自信がなかったから刺々(とげとげ)しくしていたというのはあるかもしれないです。

早く周りの評価が欲しいと焦る気持ちみたいなのが、とがりに出ていたんだと思います。今もそれは持っていなきゃいけないと思うんですけど、ある程度の人が僕のことを知ってくれていて、共演する同世代とか下、近い上の先輩とかも僕がどういう俳優なのかというのを知ってくれていますからね。

昔はそれすらなくて、『お前誰なん?』『何なん?』みたいなのを僕も感じていましたし、どこかで自分を売っていくのは自分自身でもあるから強くいなきゃいけない、立場が弱いときほどというのもあったので、余裕がなかったんでしょうね」

 

◆『ちはやふる』シリーズの撮影現場は学校にいるみたいで…

2016年、矢本さんは2部作の映画『ちはやふる-上の句-』(小泉徳宏監督)と『ちはやふる-下の句-』(小泉徳宏監督)に、かるた経験者で創設されたばかりの“競技かるた部”のムードメーカーの“肉まんくん”こと西田優征役で出演。映画は大ヒットを記録し、2018年には『ちはやふる-結び-』(小泉徳宏監督)が公開された。

-肉まんくんがすごく印象的でした。瑞沢高校かるた部のメンバーは、広瀬すずさん、野村周平さん、上白石萌音さん、森永悠希さん、皆さん年下でしたが、現場はいかがでした?-

「この業界にいると、みんな精神年齢は高いですから、年下という感じは年齢だけで、内面的には別に感じなかったです。

それこそ(広瀬)すずと(上白石)萌音が多分僕と芸歴が一緒で、ほかのみんなは芸歴でいったら一応先輩だったので、結構刺激はありました。今も活躍しているメンバーと下積みじゃないですけど、まだ今ほど知名度がないときに共演できたことは貴重な体験だったと思います。

あのときはみんなプロ意識というより、撮影していて仕事があることが楽しいという感じで。年が近いみんながいて、遊びと仕事の狭間(はざま)にいるぐらいな感じもあったと思うんです。

本当に学校にいるみたいな感じもありました。本当にみんな仲がよかったので、あの作品が人気を集めたのは、撮影の環境がよかったというのもあるかもしれないですね。そういう現場を経験できたというのはありがたかったです」

-映画は3本作られましたから、結束力も強まりますよね-

「そうですね。本当は結束力で年齢を重ねても一緒に何かやりたいんですけど、年齢重ねてキャリアもあると、みんなプロ意識も強くなっていって、友だちを作るということじゃなく、作品をどう良くしていくかということを考えますからね。

共演者同士が仲よくなるという選択肢がどんどん薄れていくというか消えていくので、そういうのは寂しいし、大人になればなるほど新しい友だちってできづらいんだなあというのも感じています」

 

◆作品ごとにまったく違う顔を見せる俳優として注目を集めて

2017年、矢本さんは、鳥人間コンテストに挑む若者たちの奮闘を描いた映画『トリガール!』(英勉監督)に人力飛行サークルの設計責任者・古沢役で出演。マッシュルームのようなおかっぱ頭にメガネ、しゃくれという個性的な姿で、すぐにはわからないほど外見も変えて演じていたのが印象的だった。

-まったく違う感じで、すぐにはわからなかったです-

「そうですね。あの頃はとくにそういうのも意識していたのかもしれないです。毎回同じ人に見えないように、矢本悠馬って気づかれないように頑張ろうみたいな感じで(笑)」

-マッシュルームのようなおかっぱ頭にメガネで顎をしゃくれて-

「僕は欲にまみれた俳優なので、勝手に自分でやっていることですからね。誰かに言われてとかじゃなかったので、あれは映像を見ていたら正解ですけど、顎が歪(ゆが)みそうで痛かったです。『なんであんなことを選択してしまったんだろう?』って後悔しました。

リハまではしゃくれてなかったんですけど、本番の直前で思いついちゃったんですよね。『本番、ヨーイ』のヨーぐらいで『しゃくれるか』ってなっちゃったので。

現場が“英監督を笑かせる大会”みたいになっていたので、ビックリさせてやるかみたいな感じでしゃくれたんです。それが初日でしゃくれたものだから、『これはずっとしゃくれなきゃいけないんだ、コイツは』ってなっちゃったんですよね(笑)」

-監督の反応は?-

「喜んでいましたね。でも、あの作品は僕がメガネの集団を引き連れていて、その中でひとりがしゃくれるということが決まっていたらしいんですよ。監督に『君はしゃくれで、君は舌足らずで、君はモジモジしている』とか、そういう割り当てがいろいろあったらしいので、その子には申し訳なかったなって思います。その子が中途半端なキャラクターになってしまったので」

-あの状態でずっとセリフを言うのは大変だったのでは?-

「それがしゃくれているほうが滑舌(かつぜつ)はよくなったんですよ」

-もともと矢本さんはものすごく滑舌がいいですよね。歯切れがよくて聞き心地がいいです-

「滑舌はもしかしたら自信があるほうかもしれないですけど、最初はめちゃくちゃ下手でしたよ」

-訓練でよくなったのですか-

「訓練ですかね。バナナマンさんのコントDVDで標準語を覚えたという感じです。設楽さんがしゃべる標準語が心地よくて、説明ゼリフも聞き取りやすくて好きだったので、この間で標準語をしゃべりたいなあって思って。設楽さんのセリフを真似して、『今ぐらいで標準語イケてるかな?』みたいな感じでした」

-完成した作品をご覧になっていかがでした?-

「自分はああいう自由度の高い作品が好きなんだろうなあって思いました。俳優に任せてくれるというか、『自分たちがおもしろいと思っていることをやってみて。それがよければこっちで編集するからやってくれ』という、作品を背負わされている感じのものが好きなんだと思います」

矢本さんは、確かな演技力に加え、アドリブの才能も発揮し、『今日から俺は!!』シリーズ(日本テレビ系)、『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)、主演映画『ノーマーク爆牌党』(富澤昭文監督)など多くのドラマ、映画に出演することに。

次回後編では、その撮影エピソード、現在公開中の映画『破戒』(前田和男監督)も紹介。(津島令子)

ヘアメイク:永瀬多壱
スタイリスト:深海佳宏

©全国水平社創立100周年記念映画製作委員会

映画『破戒』
丸の内TOEIほかにて全国公開中
配給:東映ビデオ
監督:前田和男
出演:間宮祥太朗 石井杏奈 矢本悠馬 高橋和也 小林綾子 七瀬公 ウーイェイよしたか(スマイル) 大東駿介 竹中直人/本田博太郎/田中要次 石橋蓮司 眞島秀和

島崎藤村の不朽の名作『破戒』を60年ぶりに映画化。亡き父の強い戒めを守り、地元を離れ、自分の出自を隠して小学校の教員として奉職する丑松(間宮祥太朗)は、出自を隠していることに悩み、また、差別の現状を体験することで心苦しさを抱えていた。やがて衝撃的な事件が勃発。その事件がきっかけとなり、丑松はある決意を胸に、教え子たちが待つ最後の教壇へ立つことに。

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