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「予定がない」ということは、こんなにも素晴らしい<アナコラム:田中萌>

<テレビ朝日・田中萌アナウンサーコラム>

わたしは、“予定がない日”というものが大好きだ。

その日が休みなら何時に起きてもいいし、何時に寝てもいい。家にずっといてもいいし、気の向くまま出かけてもいい。そんな、予定がない1日。

予定を入れなかったわけではない。入らなかったのだ。

この世界でわたしが何も考えずに自分から誘えるのは、3歳下の妹だけ。それ以外の人に対しては「忙しいかも…」「気を遣わせてしまうかも…」「わざわざわたしとは遊びたくないかも…」などとマイナスに考えてしまって、わたしの性格をよく知る親友ですら誘えない。非常に臆病者なのである。

つまり、わたしの日常は誰かから誘われれば予定が入るし、誘われなければ予定は入らない。そういうシステムで出来ている。

でも、予定がないからといって寂しくなることもない。むしろ、だいぶ先に予定が入っていると少し心が苦しくなってしまう。

女子会の予定、ゴルフの予定、大学時代の友人との集まりなど、複数人で日程を合わせて行くようなものはどうしてもそれぞれの暇な日を探るので1、2カ月先になることが多い。そうなると急に、遂行しなくてはならないタスクのような気がしてきてしまう。

広い海の中で小さな島が一つだけ浮かんでいるかのように、数カ月先の空白のスケジュール帳にポツンと予定が入ると、自由な世界の中で自分が押さえつけられているような感じがしてそわそわするのだ。「今日、暇?」という突然の誘いのほうが100倍気は楽である。

ただ誤解のないように説明すると、ひとつひとつの予定はとても楽しみではある。大好きな友人や先輩後輩、職場の同僚など、定期的に会ってくれる人たちがいて自分は幸せ者だなと心から思う。

そんなやっかいな性格なので、予定がない日は壮大な自由を手に入れた王者のような気分になる。冒頭でも書いたが、自分の好きなように何をしてもいいのだ。

よくすることといえば、サウナだろうか。事前にピックアップしていた行きたいサウナの中から、今日行く場所をその時の気分で決める。平日だと馴染みのあるところに行くことが多いが、休みの日は新規開拓をすることにしている。

お風呂&サウナを2時間弱楽しんだあと、地図アプリを開いて近場の行きたいお店を探し、ふらっと入ってみる。サウナ後のビールは格別だ。1、2杯飲んでつまんで、気分はもう上々。楽しく帰宅する。夜は見たかったドラマや映画などをまとめて見て、眠くなったら寝る。うん、書いているだけで楽しい。

また、溜まった家事などを一気に片付けるのも好きだ。普段の生活の中では後回しになってしまうことも、時間があればやろうという気持ちになる。

家事は時間のパズルだと思っているので、それぞれにかかる時間などをうまく組み合わせてこなしていくのがゲームのようで楽しい。冷凍用にまとめて炊くご飯が出来上がるまでに洗濯機を回して、その間に水回りを掃除して、薬局に行って日用品を買って…と、もっとも時間のロスのない計画を立てて実行する。

日々の家事のほかにクリーニング、衣替え、粗大ゴミの申請などなど、身軽な独り暮らしでもやらなくてはいけないことがたくさんある。家庭を持って他の人の分までやっている人には本当に頭が下がる。

たくさんの予定があっても忙殺されることなく行える人は素晴らしいと思うが、わたしのように要領がそこまでよくない人間には、“予定がない日”というのは自分自身を整えるために必要なのだ。

やりたかったこと、やらなければいけないこととじっくり向き合うことができる。他人の時間や気持ちを気にする必要もない。

もしかしたら20代~30代くらいのわたしと同世代の人たちの中には、予定がないことで焦ってしまったり寂しさを感じたりする人もいるかもしれない。しかしわたしは、“予定がないこと”の素晴らしさを提唱したい。

自由に過ごせる日――。これは、現代の様々な選択肢に囲まれて忙しなく生きているわたしたちにとって、ひとつの大切な時間なのだと思う。

<文:田中萌、撮影:@kaku_photo>