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玉山鉄二、仕事の向き合い方が変わった難役。リアリティー追及のため「人が刺される映像をしこたま観ました」

2006年、映画『手紙』(生野慈朗監督)で成績優秀な弟の学費を手に入れるために強盗殺人の罪を犯した無期懲役犯役を演じ、高い演技力を評価された玉山鉄二さん。

大河ドラマ『天地人』(NHK)、『BOSS』シリーズ(フジテレビ系)、映画『フリージア』(熊切和嘉監督)、映画『ハゲタカ』(大友啓史監督)など次々と話題作に出演することに。

 

◆映画『ハゲタカ』で日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞

2007年に主演した映画『フリージア』の舞台は、犯罪被害者が加害者を処刑できる“敵討ち法”が成立した近未来の日本。そこでは被害者が処刑を依頼した“執行代理人”と、加害者が自分の身を守るために雇った“警護人”が繰り広げる壮絶な戦いが繰り広げられている。

玉山さんは過去のトラウマからすべての感情や感覚を失ってしまった主人公、執行代理人のヒロシ役。熊切和嘉監督が玉山さんを主人公にキャスティングした理由は、顔も佇まいも美しいからだという。その言葉通り、端正なルックスとキレのいいガンアクションが印象的な作品。

「ヒロシはすごく不感情な男なので、撮影期間中は家に帰ってからも、毎日毎日落ちた感じでしたけど、それだけ役に入り込んでいたということだと思います」

-ガンアクションが絵になっていました-

「ガンアクションは初めてでしたし、すごく難しかったです。(ガンアクションの)先生にもついていただきましたし、撮影の2カ月くらい前から小道具のガンを貸してもらって家でかなり練習もしました。あとはガンシーンがある映画を観たりして研究していました」

2009年には映画『ハゲタカ』に出演。主人公は、徹底した合理主義で多くの企業の買収を成功させてきたアメリカ帰りの敏腕ファンド・マネージャー、鷲津政彦(大森南朋)。日本の閉鎖的なマーケットに絶望し、海外にその活躍の場を広げていたが、中国系ファンドによる日本の大手自動車メーカー買収を阻止するため、再び日本で戦うことになる。

テレビシリーズのファンだったという玉山さんは、中国からやって来た“赤いハゲタカ”こと劉一華(リュウ・イーファ)を演じ、第33回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。

-『ハゲタカ』はテレビ版もご覧になっていたそうですが、映画版の話が来たときにはどうでした?-

「うれしかったです。うれしかったけどめちゃくちゃ怖かったです。ドラマ版を見ていたというのもあるし、当時はどうしてもキラキラした映画がすごく多かった中、ああいう社会派ドラマみたいな作品の映画がすごく少なかったんです。でも、数少ないそういう社会派ものの作品に声をかけてくださったのが当時本当にうれしかったのは覚えています」

-難しい役でしたね。中国残留孤児ということで中国語のセリフも多かったですが、覚えるのが大変だったのでは?-

「大変でした。中国語も苦労しましたけど、それまでのドラマや映画の現場とは違う緊張感があり、カメラの回っていないときにも糸が張りつめたような感じで、撮影期間中は生きている心地がしなかったです。プレッシャーもそうですし、すごくセンシティブな役柄でしたしね。

監督が圧倒的に他の監督と違う部分があって、役者を悩ますんです。『このシーンはこうだからこういう風にやってくれ』とか、あえて意図を言わないんですよね。

そうすると役者が悩んで、悩んで悩んでカラカラの雑巾(ぞうきん)みたいになって、最後の一滴が出て来たのが答えだみたいな感じだと思うんですけど。

やっぱりいろんなタイプの監督さんがいらっしゃって、『自分の頭に描いている通りに動いて欲しい、セリフを発して欲しい』という監督さんもいらっしゃるし、役者に自ら悩んで悩んでそこから滲み出てきたものを探している監督さんもいらっしゃる。

大友さんは圧倒的にその後者だったので、苦しかったです。すごく苦しかったし、『良かったよ』とかも言わないんですよ。だから、芝居が合っているのかどうかもわからない。ずるい監督ですよ、本当に(笑)。

だから高良健吾くんとのお金を拾わせるシーンとかも、僕に言っていることと、多分彼に言っていることは違うんですよね。後から聞いてわかったんですけど、あえて噛み合わないように言っているんです。だから罪な監督ですよ、本当に。おもしろい監督です」

-玉山さんが演じたリュウは壮絶な最期を遂げます-

「そうですね。刃物で刺されて死ぬシーンがあったので、YouTubeで人が刺される映像をしこたま観ました。

僕は幼い頃からずっとテレビドラマや映画を観て育ってきて役者が表現した芝居に影響を受けてきましたけど、YouTubeなどを観てみると、僕がそれまで観てきたような刺され方、刺されてすぐに『ウワーッ』ってなる人は1人もいなかったんですよね。

みんな最初は『あれ?』みたいな感じで、刺されたことに気づいていない感じだったんです。『そういう表現が何で今までなかったんだろう?』って思って、『ハゲタカ』では刺されてすぐに『ウワーッ』とはならない芝居にしようと思ったというのはあります。

だから僕は結局その先入観とか、セオリーとかは作品を作るにあたっては雑念でしかないと思っているんです。いかに空白にしてリアリティーと表現したいことを混ぜ込んで、どこまでがリアルの限界なのかとか、そういうことばかり考えています。それは今でもすごく考えているし課題でもあります」

-『ハゲタカ』で刺されたシーンは印象的でした。監督の演出プランとは合致していたのですか-

「大友さんという監督は、結構僕の考え方と似ていてすごくリアリティーを大事にしてくださる方なので、結構すぐに理解していただけました」

-完成した作品をご覧になっていかがでした-

「『こうなっているんだ』ってすごく思ったし、監督にうまく翻弄(ほんろう)されたなって思いました」

-すごい作品でしたね。見応えがあっておもしろかったです-

「そうですね。それで初めて賞をいただけてすごく報われたというか、僕が歩んできたものとか、掴もうとしていたもの、目指そうとしていたもの、僕のアプローチは間違っていなかった、多少は合っていたんだという思いがして救われた感じがしたのは覚えています。

僕たちはいろんな作品をやるけど、結果が明確に数字で出るわけでもないし、評価が曖昧なんですよね。

作品は1人で作っているわけでもないし、いろんな部所の方々と関わり合いで作っている中で、自分が歯車として本当に輝いているのかどうか、やっぱりいつも不安はありました。

でも、昔はその不安をひた隠してプライドとともに、たいして光っているかどうかもわからないのに、『光っている』って自分に言い聞かせていたときもありましたね、若いときはとくに。

ただ、年をとればとるほど、『より光るためにはどうすればいいんだという考えをしないとダメだ』と思うようになって。だからやっぱりその辺ぐらいからすごく考え方とか仕事との向き合い方はすごく変わったと思います」

-あれだけ難しい役を全身全霊でやっていると撮影が終わったときに燃え尽き症候群みたいになりませんか-

「なりました。クランクアップして2週間くらいは抜け殻のようになっていました。カメラが回ってないときも糸が張りつめた感覚になっていたし、何か1回リセットというか、真っ白にしないとほかに臨めないような感じでした」

 

◆「俺はこのままだったら終わるなあ」っていつも思っていた…

映画、テレビドラマ、CMに引っ張りだこでコンスタントに主役も演じ、俳優として着実に歩んできたように見える玉山さんだが、このままでは終わってしまうという危機感を抱いた時期もあったという。

「僕は、25歳ぐらいからお仕事は本当に目一杯いただいていましたけど、自信もなかったし、『俺はこのままだったら終わるなあ』っていつも思っていました。でも、それを知られないように周りには強がって見せていたり、たいしてできもしないのに『できる!』と言い張ったりしていました。

それぐらいのときから『本当にこのままだったら自分は終わるなあ』と思って、ちゃんと準備するようになったし、役の向き合い方をより深く掘り下げるようになりました。だから本当に自分の自信のなさをそこで埋めていたという感じです。自分がもう本当にぐったりするほどすべてを出し切らないとちゃんとやってないんじゃないかという衝動にかられていましたね。

適当にやっている現場なんてないですけど、『うまく楽にやればいいじゃん』て先輩から言われたりしても自信がないからできない。自信がない自分に対して自信をつけるために、いろいろ調べたり、役のことを掘り下げたりする作業が毎回あるという感じです。だから、『今回の現場は楽だったなあ』みたいなことはないです」

-カッコいい役から『ハゲタカ』のような社会派作品、そしてコメディー作品、幅広いジャンルでチャレンジ精神旺盛ですね-

「僕の中では選んでいるつもりはまったくなかったんですけどね。僕は結構何でもやるし、こうでなきゃいけないみたいなこととかも僕にはないので。あまり自分がこう見えたいとか、自分はこうでなきゃいけないというのが僕は本当にないんです」

『ハゲタカ』と同じ2009年、玉山さんは映画『カフーを待ちわびて』(中井庸友監督)に主演。この作品は、沖縄の小さな島で愛犬カフーと暮らす口下手な青年(玉山鉄二)と悲しい秘密をもつ謎めいた女性(マイコ)とのラブストーリーを描いたもの。玉山さんは、それまでのイメージを覆し、伸ばしっぱなしの髪に無精ヒゲ姿で主人公を演じた。

「沖縄の今帰仁(なきじん)村という結構北のほうの小さな村で撮っていたんですけど、沖縄の独特のゆるさってあるじゃないですか。その独特のゆるさをどうにか表現したいとずっと思っていました。

でも、沖縄弁というのはすごく難しいし、そういうところがToo Muchになるのはすごく嫌だなという思いを持ちながらずっとやっていて、撮影がないときは近くのカフェにひとりで行って、波の音を1日聞いたりしていました。現地のおじいちゃん、おばあちゃんが本当に優しくて、差し入れを持って来てくれたり、温かい言葉をかけて下さって、すごく貴重な体験ができました。

役柄的にすごく自信のないキャラクターだったので、当時の自分自身とうまく噛み合ったという感じでした。どっちかというと、僕はすごい自信がありそうに見られるんですけど、僕の本質ってこっちなのかなって思ったりとか(笑)。

だから、幸せなことに演じる役でいろんな人の性格を体現して、それがきっかけで自分の本質を知るみたいな感じです。意外と自分のことって、ちゃんと見れていないというか、自分の本質的な部分というのは、本人はあまりわかってなかったりするんだなと思います。

『自分にはこういう一面あったんだ』とか、『よくよく考えたら俺の本質的な部分はもしかしたらこうなのかな』とかって、30歳を過ぎた頃から気づくことがすごく増えました」

さまざまな役柄を演じて新たな自分を発見しているという玉山さん。2014年には連続テレビ小説『マッサン』(NHK)に主演。2018年には『バカボンのパパよりバカなパパ』(NHK)、明石家さんまさん役を演じた『Jimmy~アホみたいなホンマの話~』(Netflix)などコメディードラマにも挑戦するなど幅広い分野で活躍。

次回後編では連続テレビ小説『マッサン』、主演ドラマ『トップリーグ』(WOWOW)、2022年4月8日(金)に公開される主演映画『今はちょっと、ついてないだけ』(柴山健次監督)の撮影エピソードも紹介。(津島令子)

ヘアメイク:TAKE for DADACuBiC@3rd
スタイリスト:袴田能生(juice)

©2022映画『今はちょっと、ついてないだけ』製作委員会

※映画『今はちょっと、ついてないだけ』
2022年4月8日(金)より新宿ピカデリー他全国順次公開
配給:ギャガ
監督:柴山健次
出演:玉山鉄二 音尾琢真 深川麻衣 団長安田(安田大サーカス) 高橋和也ほか
かつて秘境を旅する番組で人気カメラマンとして脚光を浴びながら、表舞台から姿を消した立花(玉山鉄二)。彼に写真を撮る喜びを思い出させ、再び自然へと導いたのは、シェアハウスに集う不器用な仲間たちとの笑顔の日々だった…。

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