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41歳、解説者からの現役復帰!カーリング「そだね~ジャパン」に“新メンバー”がもたらした新たな武器

ついに開幕した北京冬季オリンピック。

カーリング女子日本代表は、平昌オリンピックで銅メダルを獲得したロコ・ソラーレ(LS北見)が、2大会連続の表彰台を目指す。

(C)JCA IDE

平昌ではその戦いぶりはもちろん、試合中に連呼していた「そだね~」や休憩時間の“もぐもぐタイム”が大いに注目を集め、社会現象といえるほどのブームを巻き起こしたロコ・ソラーレ。

あれから4年、彼女たちはどんな進化を遂げてきたのか?

テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、北京オリンピックに挑むロコ・ソラーレを特集。彼女たちの強さの秘密と進化に迫った。

◆「まだまだ強くなりたい。強くなれる」

2010年、北海道北見市常呂町で結成されたロコ・ソラーレ。

現在のメンバーは、司令塔であるスキップの藤澤五月(30)、その補佐を務めるサードの吉田知那美(30)、セカンドの鈴木夕湖(30)とリードの吉田夕梨花(28)、そして2020年に加入した石崎琴美(43)の5人。チームの創設者である本橋麻里は、平昌オリンピック後にゼネラルマネージャーに就任した。

平昌での銅メダルの後も強さは衰えず、世界ランキングは最高4位。世界のトップチームだけで戦うグランドスラム大会でも3度ベスト4に食い込んでいる。

「実力的にはしっかり毎年成長している。立ち止まらないということを大切にしています」と胸を張るのは、スキップの藤澤。

ではロコ・ソラーレには、いったいどんな強みがあるのか? 平昌オリンピック男子代表・山口剛史は、「コミュニケーション」が大きな武器だと分析している。

カーリングは、40メートル近い長さのアイスリンクで20キロのストーンを投げ、正確さを競う競技。

厄介なのは、リンクの表面にできた無数の氷の粒がストーンを不規則に変化させること。そのうえ、氷の状態は一定ではない。

「会場の観客の数や冷凍機の動きなど、いろいろな要素で氷の状況は刻々と変わります。全員が今もっているアイスの情報を出し合っておけば、ショットが決まる可能性は上がります。ロコ・ソラーレは、試合の間や試合以外のところでも、チームでコミュニケーションをとっている時間がほかのチームより圧倒的に多いと思います」(山口)

では実際、どんなやりとりをしているのか? オリンピック中継では一部の音声しか聞こえなかったが、2017年の国際大会で彼女たちの会話はあまさず克明に記録されていた。

吉田(知):「ウエイト(石の速度)悪くないと思ったんだけど、当たりが強かった」
鈴木:「ちょっと(氷に)霜が多いのかな」
吉田(知):「ちょっと白っぽい」
鈴木:「たぶん若干(ストーンを)上げていいよね。さっきの練習よりは」
吉田(知):「ちょっと上げていいわ」
鈴木:「練習のときより2個くらい上げていいと思う」
吉田(知):「こっち側すごい滑っているから。こっちサイドだったらウエイト落としていいかな」
藤澤:「ちょっとこっち、霜が多い感じがした」
吉田(知):「じゃあこっちは(スピードに)幅を持たせたほうがいいかも」

ハーフタイムにはこんなやりとりも。

本橋:「ちょっと寒くない?」
吉田(知):「うん。チーム数の感じかな」
本橋:「(前の試合の)男子のほうがお客さん入っていたから、男子のときより寒いのかな」

観客の熱気は氷に影響し、滑りが変わる。このときは前の試合から観客が減ったため、寒さで氷が硬くなり、滑りにくくなっていた。

そんな風に試合の最中、彼女たちは必ず話し合っていた。

氷の質の変化にとどまらず、スピードや曲がり幅の変動、ストーンのクセ、霜の降り方…。時々刻々と変化するなかで、感じたことを逐一伝え合う。それが彼女たちの流儀だ。

そして、それがわかった上でどう攻めるか、何十時間何百時間と話し合い、作った作戦を傾向と対策をもとに遂行する。

明るくにこやかに話している印象のロコ・ソラーレの本質は、さまざまな状況にシビアに向き合う“緻密な情報戦略家”なのだ。

試合中には、こうした局面も訪れた。

相手の黄色のストーンが、得点につながる一番内側に位置している。最後の一投ではじき出したいが、直接は難しい。そこで、手前の赤色のストーンをはじいて黄色に当てようと考えた。間接的に当てるため、狙いはピンポイントだ。

チームの全員でしっかり話し合った末、ロコ・ソラーレはミスを恐れず強めに投げ、ブラシで微調整。見事黄色を押し出した。

これぞ情報共有のなせる技。全員が思い描いたショットだった。

4年前の平昌オリンピックでの銅メダルも、緻密なコミュニケーションが生む細やかな意思統一によって生まれた。

そして今、彼女たちが目指すのは誰しもが認める“世界最強チーム”。

平昌以降はそれを合言葉に、登山やフリスビー、エアロビクスなどさまざまなジャンルのトレーニングを取り入れ、体の動きを磨いてきた。

海外遠征も期間を伸ばし、あえてさまざまなカーリング場の氷を経験することで、コミュニケーションの幅を広げた。チーム一丸、上だけを見てやってきたのだ。

みんなが『まだまだ強くなりたい。強くなれる』と思っていることが私たちの一番いいところだと思います。今の自分たちに限界を感じず、まだまだ強くなれるという気持ちがあるからこそ練習もできますし、長い遠征にもチャレンジできます。どんな試合でも自分たちの課題を見つけてしっかりクリアしたいという気持ちがあるぶん、成長できるのかなと思っています」(藤澤)

◆41歳の新メンバーがもたらした新たな“強み”

さらにロコ・ソラーレは2020年の秋、大胆な強化策に出た。当時41歳の石崎琴美を新メンバーとして迎え入れたのだ。

石崎は2002年のソルトレークシティオリンピックではじめて代表に選出。2010年バンクーバーオリンピックには31歳で出場し、本橋麻里とともに戦った。その後は2013年に一線を退き、テレビ中継の解説者としてカーリングに関わっていた。

ロコ・ソラーレとの接点は2015年にさかのぼる。

当時はじめて日本代表になったチームに、産休中の本橋の代役として加入。その際、ミーティングでチームの課題を的確に指摘し、メンバーたちの信頼を得る。全員がそろって突っ走り、同じ方向しか見えなくなってしまうロコ・ソラーレにとって、石崎の意見は目からウロコだった。

以降はチームのご意見番的存在に。解説者として臨んだ平昌オリンピックでは、ロコ・ソラーレとの絆が垣間見えるシーンがあった。

準決勝の韓国戦。日本は接戦を競り負け、惜しくも決勝進出を逃した。そのインタビューゾーンで、悔しさのあまり号泣する藤澤に「よくやった」と声をかけ、なぐさめていたのが石崎だった。

「私も選手と同じ気持ちでずっと戦っていたので、選手のことを思うと悔しいです」(石崎)

チームを離れても、ともに戦っていた。だからこそ試合後、本橋からメダルをかけられると、抱き合ってよろこび合った。

そして2020年。転機が訪れる。

これまでフィフスを務めていた本橋がチーム運営に回り、石崎に声が掛かったのだ。フィフスとはリザーブとも呼ばれる5人目の選手のことで、用具やスコア管理など雑用もこなすポジション。

「最初はちょっと私には難しいんじゃないかという考えがありました。客観的に考えて、今第一線でプレーしている人のほうがいいんじゃないかという…」(石崎)

それでも「琴美ちゃんしかいない!」と食い下がられ、心が揺れた。

「本当に何回も言ってくれたんです。何回も私がいいと言ってくれたので、もうこれはやるしかないなと思いました」(石崎)

チームのメンバーたちが強く望んだ石崎の加入。彼女の強みは、どんなところにあるのか?

4人でずっと試合をしていると主観的になることが多く、琴美ちゃんが入ってくれることで、外から自分たちのチームを見る機会をもらったのがすごく大きな出来事でした」(吉田知那美)

かくして41歳の現役復帰。石崎の加入によって、ロコ・ソラーレは自分たちを客観視する“目”を持った。

そして2021年9月、いよいよ北京オリンピック代表を巡る決戦へ――。ロコ・ソラーレ特集の後編では、「カーリングの神様を振り向かせた」ロコ・ソラーレの“奇策”に迫る。

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜日夜25時25分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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