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あまりにも大きな喪失。寄り添ってくれたのは、エンタメでした<アナコラム・本間智恵>

<テレビ朝日・本間智恵アナウンサーコラム>

 

◆去年、愛犬の死を経験した

すこし前に36歳になった私。同世代の友人らと顔を合わせると、だいたい美容と健康の話で盛り上がる。30代も後半になると、身近に様々な「別れ」があり、心身の健康に気を配らなければと意識する。

あまり占いや神仏、縁起物などを意識せずに生きている私だけれど、女性の30代には厄年が二度あり、前厄と後厄を含めると10年のうち6 年が厄年と聞くとさすがに気が重くなっていた。

厄年とは、自分や身の回りの人を気遣っていかないと不幸なことが起きる年齢になってきたよ、という意味なのだろう。

私は本厄だった去年、愛犬の死を経験した。ともに暮らし、常に一緒にいた存在がいなくなってしまったショックはあまりに大きかった。

表向き悲しみを隠し通していたつもりだったけれど、訃報を知った人から「家族みたいなものだもんね」と慰められると、「みたい、ではなく家族そのものなのですが…」と少しモヤモヤした。

愛犬は保護犬だったので、高齢に足を突っ込んだ頃に我が家にやってきて、一緒に過ごしたのは4年ほどだったけれど、大切な存在かどうかに時間は関係ない。

どうしようもなくつらいとき、さみしいとき、「別れ」を経験したとき、あなたはどう向き合うだろうか。

私が悲しみに飲み込まれそうになったときに寄り添ってくれたのは、いくつかのドラマ作品だった。つまりエンタテインメントだ。

私が言うまでもなく、エンタテインメントの力というのは偉大なのである。

◆人生において大切にしたい作品

36歳の男女3人と周囲の人の人生を数珠つなぎのように幅広く、時代を交差しながら深く描いたアメリカのドラマ『THIS IS US』(NBC)。

日々命のはじまりや終わりが訪れる病院で、患者たちとともに生きる5人の医師の日常をコミカルだが淡々と描く韓国のドラマ『賢い医師生活』(tvN)。

「ひとりで生きられるけど、ひとりで生きたいわけじゃない」というキャッチコピーとともに、日常の中でわざわざ言葉にしてこなかったけれど確かに存在する感情や関係性に光を当ててくれた『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ制作、フジテレビ系)。

この3作品は、私がこの先の人生でずっと付き合っていきたい、何度でも見たいドラマだ。

主要な登場人物たちは皆いわゆるアラフォー世代。属性は様々で住んでいる場所も違えど、きっと私たちの誰もが「こういう気持ちを認めてほしかった」と思える描写に富んでいる。

だって、3~40代ってまだまだ若い。人生100年時代、これからの人生の方がきっと長い。楽しいことも幸せなこともたくさんあってほしいけれど、つらい別れや苦しみもやってくるはずで、それでも生きていかなくてはいけないのだ。

かといって立ち上がる気力が湧かないときもある。ましてや、人との接触を避けろと言われるご時世、気軽に助けを求められる存在がいない人もいるかもしれない。

そんなときは、エンタテインメントに頼ってほしい。繰り返すが、エンタテインメントの力というのは偉大なのだ。

つらいことがあったり悩んだりしたときにあなたの心に寄り添い、背中を優しくさすってくれるような、“人生において大切にしたい作品”はあるだろうか。私にとってこの3つのドラマは、まさにそれだ。

「ハマったドラマ」とか「オススメ海外ドラマ」とか、そんな言葉では表現しきれないほど、これからの人生を一緒に生きていく相棒のような、大切な存在なのだ。

まだ寒さが続く今の時期、温かい部屋にこもって大好きなエンタテインメントに触れていると、足元にふと愛犬の体温を思い出す。幸せな思い出があるからこその悲しみと上手く付き合っていくヒントは、ドラマから得ることができた。だから、きっと大丈夫。

<文/本間智恵、撮影/矢島悠子