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「とんでもないことでございます」は魔法のことば<アナコラム・矢島悠子>

<テレビ朝日・矢島悠子アナウンサーコラム「ことばの装い」>

 

◆街なかで見かけた「クッソかわいい」女性のことば遣い

アナウンサーの矢島悠子と申します。

今日は「ことばの装い」についてちょっと書いてみます。

ことばを、たとえば服のように、身にまとうもののひとつと考えてみるという話です。

高いブランドの洋服はお金がなければ買えません。前衛的な服はセンスに自信がないと着こなせません。個性も出したいし素敵になりたいけれど、限界はある。

でも、ことばもひとつのファッションだったら?

お金をかけずに、使い方をちょっと変えてみるだけで、今までと違う自分に見せられる。そして、もしかしたらワンランクアップさせることも出来るとしたら?

そんなことを書きたいと思います。

アナウンサーという職業柄、人のことば遣いが気になってしまうのですが、つい最近、10代後半だと思われる女性と街なかで出会いました。

笑顔がとても素敵で、お人形さんのような顔立ちのそのお嬢さん。あんまり輝いて見えたので、信号待ちでなんとなく見ていたら、友だちと話しているのが聞こえてきて…仰天しました。

「アレ、マジクッソかわいくて、クッソしんどい。チッ!(舌打ち)」

どうやらとっても強く、熱い気持ちで何かをほめているようですが、うーん…すごく汚い。

あああ、なんだか残念だ。そうです、やっぱり残念だと感じました。ほめるならもっと素敵なことばがあるのに! 「クソ」なんて言わなくてもいいのに、と思わずにはいられませんでした。

みんなが使っていたら使いたい表現というのがあるのはわかりますが、周囲の人から見たら残念ながら「クッソかわいいけど、クッソ言葉が汚い人」。発したことばと同等の評価を受けてしまうのがこの世の現実です。

この点では、服装や髪型よりも、ことば遣いはよりシビアに人の印象に関わるものだと言えます。老若男女に言えることです。使い方ひとつで損も得もする…のであれば、得したほうがやっぱりいいですよね。

◆「とんでもないことでございます」は魔法のことば

ことばに関して言えば、やはり「ちゃんとしている」ほうが得をします。「ちゃんとした」ことばは、あなた自身をよく見せてくれるアイテムです。

たとえば、ちょっと高い靴を履いた時の気分。最初は慣れないけれど、凛としたような、背伸びしているような、そんな気持ちになるものです。

ヨーロッパのことわざに、『靴はその人の人格を表す』や『素敵な靴はあなたを素敵な場所に連れて行ってくれる』なんていうものがあるのだそう。

あのココ・シャネルも『良い靴を履いた女性は決して醜くならない』と言ったとか。「靴」を「ことば」に置き換えれば…言わずもがなですね。

ちなみに「ちゃんとした」という点で、とても素敵で便利なことばを紹介します。「ちゃんとして」見せたい時にぜひ使ってみてほしいです。

「とんでもないです」という謙遜を表すことば。ぜひそんなときは、「とんでもないことでございます」とさらりと言ってみてください。

細かい話をすれば、「とんでもない」というのは全体でひとつの形容詞なので「とんでも+ない」ではないんです。

だから「とんでもございません」や「とんでもないです」という使い方は違うんだ、ということなのですが、今では一般的に「とんでもな~い」という柔らかい使い方で十分通じてしまっていますよね。

普段はもうそれで“OK”になってきていますが、ちょっと「ちゃんとした」場所で、さらりと「とんでもないことでございます」と言ってみてください。理解している人は、あなたを見る目が一気に変わるはずです。

実は昔、ある会社の偉い方にインタビューをしに行ったとき、「なんだ!知らない女子アナだなぁ。もっと有名な人が良かった」と、とても不愛想にされてしまい、ハートがズタズタになりかけたことがあります。

その時、隣にいたその会社の方との会話で「とんでもないことでございます」と返したわたしのことばを聞いて、この偉い方の態度が急変して、その後とても快くインタビューを受けてくださったことがありました。それもどうかなって正直思いますけど(笑)

ただ、「とんでもないことでございます」はそれだけパワーがあり、あなたを素敵な場所に連れて行ってくれることばであるということ。たとえるなら…ルブタンの靴でしょうか?

このことばひとつでワンランクアップの印象を持たれるなんて、簡単だけど魔法のことばだなぁと思います。スマートで、お金もかからず、パワーワード。言うことなしです。

でも、いつも「とんでもないことでございます」じゃなくていいとも思います。大事なのは、TPOに合っているかどうか。鏡の前で「今日は何を着よう?」と迷うように、ことばにもクローゼットがあるイメージです。

今日の自分のスタイルはどんなものですか? どんなあなたでいたい日でしょうか?

あなた自身は変わらなくても、ことば遣いひとつで、どんな風にでも見せられる。ことばは最強の自己プロデュースアイテムなのではないかと思っています。

その一方でわたしは、「ちゃんとしていない」ことばで話す時間もとても大切に思っています。

次は「ちゃんとしていない」ことばについて……まじめに楽しく書けたらと思います!

<文/矢島悠子、撮影/本間智恵

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