全員が怪しい…。考察欲掻き立てドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』、第1話で浮かび上がった“謎”【ネタバレ有り】
<ドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』第1話レビュー 文:横川良明>
なりたい大人になれた人は、どれくらいいるのだろう。あの頃無邪気に描いた夢を、今もてらいなく口にできる人はいったいどれくらいいるのだろうか。
だから、ピュアだったあの季節を共に過ごした仲間と久しぶりに会うのは、少し胸がヒリヒリして、そしてかすかに事件の匂いがする。
いよいよスタートした金曜ナイトドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』。
1月14日(金)に放送されたその第1話は、14年ぶりの再会が巻き起こす波乱に胸ざわめくイントロダクションだった。
<※以下、第1話の一部ネタバレとなる記述も含まれています>
◆事件の幕開けは、14年ぶりの同窓会
念願の漫画家デビューを果たしたものの、その後芽が出ず、アシスタント生活を送っている主人公・今井望緒(いまい・みお、演:波瑠)。
仕事はどん詰まり。後輩・岡崎りえ(松村沙友理)からもいいようにコケにされ、実家の母は口を開けば小言ばかり。
うんざりするような毎日の望緒のもとに届いた、同窓会の知らせ。幹事は、女子生徒の憧れの的・雨宮秀一(あめみや・しゅういち、演:林遣都)だ。
雨宮は望緒に同窓会の受付をやってほしいと言う。
久しぶりに訪れた故郷・甲府。14年ぶりに集まった同窓の友たち。
どんなに時間が流れても、顔を揃えればあの頃の空気に戻る。だけど、あの頃は夕映えの畦道を肩並べて歩けたけれど、今はそれぞれ立場や環境に違いがあることもわかる。
結婚した人、していない人。仕事が成功している人、していない人。嫉妬。劣等感。マウンティング。そんな負の感情を会話の端々に忍ばせながら、物語は進んでいく。
そして、最初の事件が起きた。望緒(波瑠)の自宅が何者かによって荒らされたのだ。犯人は、誰か。渦巻く悪意が、視聴者の覗き見欲を掻き立てる。
昨今、こうした視聴者の考察を促すサスペンスは連ドラの“華”だ。本作も、登場人物全員が、いかにも怪しい人ばかり。なぜこの瞬間にこの人はこう言ったのか。なぜあんな表情をしたのか。深読み要素が至るところに散りばめられている。
第1話のポイントを整理しながら、今後の展開を考察したい。
【1】奈々江は誰と一緒にいたのか?
望緒の部屋を荒らした犯人は、岩崎奈々江(いわさき・ななえ、演:新川優愛)だった。
女子アナとなって海外セレブに見初められる未来を夢見ていた奈々江は、家庭の事情により地元の短大に進学し、そのまま就職。ハリウッドどころか、生まれ育った土地に縛られ続ける人生を送っていた。
東京で華々しく活躍しているように見えた望緒への嫉妬心から犯行に及んだ奈々江。
すべてがバレて咎められた後でもあまり反省した様子はなく、それどころか奈々江は河原で“誰か”と会い、決して好きではなかったであろう地元の自然を眺めながら「言いたいこと言ったらスッキリしちゃった」と伸びをしていた。
その顔は、望緒に見せた険のあるそれとは別人のようだった。きっと心許せる“誰か”と一緒にいたのだろう。はたしてそれは誰なのか。
そして、その直後に起きた第1話最大の衝撃展開。ここにもその“誰か”は関係しているのだろうか。
【2】中野幸とは何者か?
掘り起こされたタイムカプセルに残っていた1枚の紙。そこに記された「みんな 忘れないよ 中野幸」の文字。中野幸(なかの・みゆき)とは、途中で転校していったクラスメイトだという。
しかし、望緒にはその記憶がない。中野幸とはいったい何者なのだろうか。
おそらくヒントになるのは、冒頭に映し出された火事の光景。燃えさかる民家を眺めている少年の後ろ姿が、そこにはあった。この少年が中野幸なのかもしれない。となると、目の前で燃えている家は中野幸の家か。
あるいはそれはミスリードで、後ろ姿の主は雨宮か稜ということも考えられる。いずれにせよこの火災事件が、中野幸の転校と、そして今回の奈々江殺害に関連している可能性は高い。
逆上した奈々江は言っていた。「犯罪? それを言うなら、あんただってそうでしょ。知らんぷりしているようだけど、私は私たちがしたこと忘れない」と。
つまり、あの火災事件は望緒たち6人によって引き起こされたものなのか。
中野幸と望緒たちの間に何があったかが事件の鍵となりそうだ。
【3】玲子は何を隠しているのか?
かつて埋めたはずのタイムカプセルがなかなか見つからず、周囲が断念しようとする中、ひとり異様な執念を示していたのが本田玲子(ほんだ・れいこ、演:本仮屋ユイカ)だった。
玲子はなぜあんなにタイムカプセルを掘り起こそうと躍起になっていたのだろうか。裏返すと、玲子にはどうしてもタイムカプセルをこの場で掘り出さなければいけない理由があったと考えられる。
そのひとつが、おそらくタイムカプセルに入っていた“手紙”だろう。玲子は望緒に聞かれても手紙の中身を明かさなかった。望緒たちには知られたくないことが、そこには書かれていたのだろうか。
望緒の味方であるように見えて、玲子は今ひとつ本心が見えないところがある。
「望緒ってさ、今まで何かに本気になったことある?」「本気で、人を傷つけてでも、これだけは絶対に譲れないと思ったものある?」
そう玲子は、望緒に聞いた。つまり玲子にはあるということだ、人を傷つけてでも譲れないものが。
単純に考えると、中野幸と玲子が恋愛関係にあったと予想できる。そもそもみんなおおむね中学時代の雰囲気を残して大人になった中、玲子だけが様変わりしていた。
玲子にとっての14年間は、あの頃の自分を変える、あの頃の自分と決別するための14年間だったのだ。いったい玲子は何をそんなに捨て去りたかったのだろうか。
【4】なぜ望緒は記憶がないのか?
第1話の中で、望緒の記憶が曖昧な部分が何度かあった。
それは中野幸について覚えていないこともそうだし、6人で撮った集合写真を見て、かつて同じような写真を撮ったことがあるような気がするのに思い出せないのもそう。なぜこんなに望緒の記憶はあやふやなのだろうか。
考えられるのは、何かしらの事件のショックによって、望緒自身、あるいは外部の手によって記憶が消去されたということ。そしてその事件とは、当然、中野幸と、あの燃える家が関連しているものと思われる。
この作品のテーマが「嘘」なら、最も大きな「嘘」をついているのは望緒と考えるのがドラマ的には常道だ。となると、火を放ったのは望緒なのかもしれない。
そして、望緒を愛する誰かが、望緒の心を守り、また犯行を隠すために、望緒の記憶に細工を仕掛けた。そう考えると、タイトルの「愛しい」という意味もすんなり通る。はたして「愛」のために「嘘」をついたのは誰だろうか。
【5】7人のついた嘘とは何か?
「ひとつの嘘は、7つの嘘を生む」というモノローグから察するに、中野幸含む主要キャラクターである7人全員が嘘をついていると考えられる。それぞれの嘘とはなんだろうか。
平凡なOL生活をSNSでインフルエンサーのごとく虚飾している奈々江はすでに嘘にまみれているように見えるし、名家に嫁ぎ幸せそうに見える野瀬優美(のせ・ゆうみ、演:黒川智花)も、実態はモラハラ夫・正(徳重聡)に怯える嘘だらけの暮らしだ。
当然、雨宮、そして深沢稜(ふかざわ・りょう、演:溝端淳平)にも嘘がある。
深沢ワイナリーを訪れた望緒が集合写真について話したとき、稜はまるで興味のないような素振りを見せた。けれど、その後ひとりこっそり浮かべた意味深な表情から考えると、稜はかつて同じように集合写真を撮った記憶があるのだろう。
ではなぜそれを望緒に隠す必要があったのか。幼なじみである稜は望緒と最も縁が深い。つまり、望緒を最も案じているのが稜だとも考えられる。稜が「嘘」をついているとしたら、それは望緒のためかもしれない。
そして最も謎めいているのが、雨宮だろう。突然現れ、望緒への好意を隠さない雨宮。その好意自体がすでに疑わしい。
そもそも同窓会の幹事は、雨宮。タイムカプセルを掘り出そうと発案したのも、雨宮だ。つまり雨宮の思惑通りに事が進んでいることになる。雨宮は地中深くに眠らせた過去を暴きたかったのだろう。だから、同窓会を企画した。ではなぜそうしたのか。
あの火災事件に対し最も恨みを持っているのが雨宮で、もう一度あの事件を白日の下に晒すために同窓会を企画したと考えると辻褄が合う。もしかしたら、あの火災で亡くなったのが中野幸で、雨宮がその復讐をしようとしていると考えるのは、飛躍しすぎだろうか?
いずれにしても、この雨宮と稜という男性2人が、最大のキーパーソンと見て間違いないはず。
第1話の最後、「だけど、これは悲劇の始まりに過ぎず、私たちはこれからさらにおそろしい事件に巻き込まれることになっていく」とモノローグで語られている。
これからどんな展開が待ち受けるのか。この冬の“考察班”は、『愛しい嘘~優しい闇~』に釘付けになりそうだ。(文:横川良明)
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※番組情報:金曜ナイトドラマ『愛しい嘘~優しい闇~』
【毎週金曜】午後11:15~深夜0:15放送、テレビ朝日系24局(※一部地域で放送時間が異なります)