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初優勝&初表彰台!トヨタ、“母国ラリー”で今季2勝目!【世界ラリー(WRC)】

2017年のFIA世界ラリー選手権(WRC)、第9戦となる「ラリー・フィンランド」が7月27日~30日に開催された。

©WRC/無断転載禁止

古いラリーファンの間では“1000湖ラリー”として名をはせたラリー・フィンランド。歴史も長く、北欧では最大級のモータースポーツイベントと言われており、毎年じつに50万人もの観客が集結するという。

そんなラリー・フィンランドの特徴は、なんといってもシーズン随一の“超高速ラリー”であること。ジャンピングスポットも多く、その攻めどころは奥深い。単純に度胸だけで勝負できないのがラリー・フィンランドだ。

そうしたラリーだけに、現在のWRCでは珍しく、地の利が大きく影響するラリーのひとつと言われている。つまり、北欧勢の強さが圧倒的ということ。なかでも地元フィンランド人ドライバーはとくに強く、“フライング・フィン”でなければ勝負できないラリーのひとつとなっている

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そして今回大いに注目を集めたのが、ここフィンランドにチーム拠点を構えたトヨタの動向だ。チーム代表のトミ・マキネンはラリー・フィンランドで4勝、エースドライバーのヤリ‐マティ・ラトバラは3勝をあげており、ユホ・ハンニネン、エサペッカ・ラッピ、さらにコドライバーを含め、全員がフィンランド人ドライバーで固められている。

当然、ラリー・フィンランドは事実上のチームの“母国ラリー”として受け止められており、その経験や地の利を最大限に生かした戦いが期待されていた

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初日の木曜日は、2.31kmのSS1。フライング・フィンが上位を占めるかと思いきや、トップはエストニア出身のオット・タナク(フォード)、2位にティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)、3位に王者セバスチャン・オジェ(フォード)が続き、フライング・フィンは5位のラトバラまで入らなかった。しかし、ここはあくまでも顔見せ。勝負は2日目からとなる。

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2日目、SS2からSS13までを争い、なんとWRC4戦目の新人ラッピ(トヨタ)が首位。2位にはラトバラ(トヨタ)がつけ、3位にも同じくフィンランド人のテーム・スニネン(フォード)が入り、1~3位をフライング・フィンが独占した。

一方、ライバルたちにとっては厳しいラリーとなった。王者オジェ(フォード)はSS4でクラッシュ、初日トップだったタナク(フォード)もSS4で1分半以上をロス、ヒュンダイのヘイデン・パッドンもSS4でクラッシュとなった。

王者オジェは、「SS4の最後のあたりの着地の衝撃が大きすぎてサスペンションを痛めてしまった。デイリタイアを選択するしかなかったよ」と、ジャンピングスポットの多いラリー・フィンランドならではのトラブルに見舞われた。

一方、トップのラッピを追いかけるラトバラは、ラッピの速さに少々驚いたようだ。「今日の僕は出来ることをやったつもりだ。でも、ラッピはさらに速かった。さて、明日の自分は何が出来るかを考えなくてはいけないね」

ハンニネンも5位につけ、フライング・フィンが上位5人中4人を占める結果となった。いよいよラリー・フィンランドは、3日目に名物のオウニンポウヤ(SS16とSS19)を迎えることとなる。

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3日目、75以上のジャンピングスポットを持つ名物オウニンポウヤを含め、もっとも難しいラリー・フィンランドの1日を制したのは、再び新人のラッピ(トヨタ)だった!

じつはSS14からSS18まではラトバラ(トヨタ)が完全にラリーを支配していたが、SS19の11km時点で突然マシンがストップ。原因は電気系統のトラブルだったが、そこまで完璧なラリーをしていたラトバラの悔しさは大きく、国際映像でもその様子が流れた。結果、ラトバラはデイリタイアを選択し、最終日のパワーステージに勝負をかけることとなった

これにより、トップ3はラッピ(トヨタ)、スニネン(フォード)、ハンニネン(トヨタ)となり、変わらずフライング・フィンがラリーを支配することに。

2位のスニネンは、「今日は悪くなかった。途中、ひとつのジャンプで少々ワイドになってしまったけれど、問題とまではならなかった。あとはこの調子を続けるだけだ」と、表彰台獲得にむけて意欲を見せた。

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そして迎えた最終日。意地を見せたのはラトバラだった。

SS22、23をトップタイム、SS24はハンニネンに次ぐ2位。そして最後のパワーステージ(SS25)では4位となった。

一方、大いなる緊張感に包まれたのが、初優勝がかかるラッピ(トヨタ)と、同じく初の表彰台がかかるハンニネン(トヨタ)だ

26歳、WRCデビューイヤーにして母国ラリー優勝という大きな目標を目の前にしたラッピは、これまでに築いた49秒1のリードをフルに生かし、残り4つのSSを走った。

SS22はトップから5秒1遅れの7位、SS23は10秒4遅れの8位、SS24は7秒1遅れの10位と、後ろとのタイム差を見ながら安全マージンを取りつつも攻めた走りという、昨年のWRC2王者らしいクレバーさを見せる。

一方、激しい2位争いをしているハンニネンは攻め続けた。SS22は2位、SS23は4位、そしてSS24は1位となり、最後のSS25を残し0秒9差で2位に浮上。まさに最後のパワーステージが雌雄を決する場となった。

一方のドライバーは安全さを、また一方のドライバーには激しさを求められたトヨタ。ラリー後にトミ・マキネン代表は、「僕も1994年に初めて勝ったラリー・フィンランドのことはよく覚えている。きっと、ラッピもハンニネンもこの週末のことをずっと覚えているに違いない」と語っており、最後のSS25のパワーステージは、トヨタドライバー全員にとってその1秒1秒が記憶に刻まれるものとなっただろう。

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まずは、2位を争ったハンニネン。スタートでミスをしてしまい、最終的にエバンスに2位を奪われてしまった。

「もちろん、最後まで2位を守れなかったのは残念だよ。けれども、昨日からこのラリーは決して楽じゃないと分かっていた。お互いに競い合っているなかでの結果だから、それは仕方ない。僕はSS25最初のコーナーでミスをしてしまったからね。でも、それでも本当に初表彰台は嬉しい。チームのみんなが一丸となって、この結果をもたらしたのだからね」と、悔しさはのぞかせたが、チーム立ち上げ時からヤリスWRCのマシン開発を担当してきた自身の初の表彰台を素直に喜んだ。

そして、フィンランドに“フライング・フィン”と呼ばれるニューヒーローが誕生した。若干26歳のラッピだ。

「本当に驚きの週末だった。色々なことが本当に突然とやってきた感じで、まだ自分自身でも実感が沸かないんだ。正直、表彰台に上れれば最高だ!って思っていた。それが真ん中なんだから、もう何と言っていいか、驚きでしかないよ!

トップを守ったまま迎えた最後のパワーステージ(SS25)、正直なところナーバスになっていた。だって、一度も経験したことない状況だったからね。なんでこんな気持ちになってしまっているのかさえ分からなかった。でも、最後のスタートを切ったとき、やっと元の自分に戻った感じだったよ。

嬉しかったのは、表彰台に向かう前、すべてのドライバーが僕を祝福してくれたこと。そして多くの観客が表彰台の周りを埋め尽くしてくれた。この週末、本当に観客が熱狂的で、ものすごく追い風を感じた。本当にありがとうと、すべての応援してくれた人に言いたい」

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こうしてトヨタは、18年振りの世界ラリー復帰初年度に2勝目を上げた。この望外な結果に、マキネン代表はこう答えている。

「ラリー・モンテカルロでの結果を受けて、ラリー・スウェーデンはチャンスがあると思っていた。ラトバラが得意とするラリーだからだ。でも、その後のラリー・メキシコ以降は、まだチームには勝つだけの力は備わっていないことも理解していた。僕達にできることは開発を続けること。つねに上を目指すこと。車体のすべての分野で開発は続けられた。すべてにおいて一足飛びはない。“ステップ・バイ・ステップ”、つまり一歩一歩開発を進めていった。

そして、その結果はすでにポーランドで兆候として見えていた。そして、ラリー・フィンランドに向けてテストを強化した。そこで大きな前進を感じることができた。ここでの(優勝という)結果を受けて、チームは次のラリーに向けても自信を持って準備できると思う」

このように語っており、初年度で早くもトップチームの一角としての成長を実感できたようだ。

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第9戦を終えて、ドライバーズランキングは160ポイントでヒュンダイのティエリー・ヌービルがトップ、2位には同ポイントでフォードのセバスチャン・オジェが続く。3位には119ポイントでフォードのオット・タナク、4位には114ポイントでトヨタのラトバラが続いている。そして今回初優勝したラッピは、45ポイントでランキング10位に登場した。

チーム同士が争うマニュファラクチャーズランキングは、285ポイントでフォードがトップ。2位にはヒュンダイが251ポイントで続く。3位は、今回1位と3位で大きくポイントを稼いだトヨタは193ポイント。そして4位シトロエンは、135ポイントとなっている。

次戦の舞台はドイツ。路面は一転してターマック(舗装路)となる

ターマック(舗装路)を得意とする王者オジェ(フォード)が過去3勝を上げ、ヒュンダイのヌービルと同じくヒュンダイのダニ・ソルドが過去に勝利している。

ワイン産地でのラリーだけに、ブドウ畑をバックに走るのどかな風景が楽しめるドイツでのラリー。トヨタは、さらなる追い上げを見せるのか? 総合トップに立ったヒュンダイのヌービルがライバルを引き離すのか? 王者オジェは?

夏のドイツは、みどころの多いラリーとなりそうだ。

<文/田口浩次(モータージャーナリスト)>

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