体操・村上茉愛、母へ捧げる“現役最後の演技” 「人生で最高の1分30秒」に込める感謝の想い
「(今大会が)最後になるかもしれない。体操人生が21年目なんですけど、20年間のすべての思いを入れられたら」
そう語るのは、東京五輪・体操種目別ゆかで3位となり、日本女子史上初となる個人種目でのメダルを獲得した村上茉愛だ。
本日10月24日(日)の世界体操・種目別決勝で、現役最後の舞台を迎える。
村上の心にあるのは、小さい頃から応援し、支えてきてくれた母・英子さんへの感謝の想い。
「やっぱり母に近くで演技を見てもらいたいっていう思いが、自分の結果よりもすごく強かった」(村上選手)
日本のエース・村上茉愛の体操人生は、母とともに歩んできたものだった。
◆生後数カ月で母が感じた体操の“素質”
1996年、神奈川県の体操一家に生まれ、物心つく頃から競技をはじめた村上。
小学6年生でシニアの選手でも成功させるのが難しいH難度の大技「シリバス」を成功。中学2年生の頃には全国大会で優勝し、幼い頃からその才能は際立っていた。
そんな娘の才能に、母・英子さんは早くから気づいていたという。
「オムツをかえたりしていた生後何か月かのときに、股関節が柔らかいなと。生まれもった素質があるなってそのときは思いました」(英子さん)
村上のトレードマークといえばショートカット。その髪型を整えているのも、美容師である英子さんだ。
2017年、世界体操の直前には、大一番に臨む娘への想いをこんな風に明かしていた。
「私はとくにかく悔いのないようにしてくれたらいい。何もできないもん、お母さんは。応援するしか…」(英子さん)
そして迎えた世界体操の本番。村上は種目別ゆかで日本女子63年ぶりとなる金メダルを獲得した。
会場で村上にひときわ大きな声援をおくっていたのは、大会が行われたカナダまで駆けつけていた英子さん。国内外問わず、ほとんどの大会で娘を見守ってきた。
◆歴史的な五輪銅メダルを支えた母の愛
しかし、2019年のNHK杯、村上をアクシデントが襲う。腰痛が悪化し、大会を棄権したのだ。
日常生活にも支障が出るほどの腰の痛みを抱え、この年は思うような演技ができなかった。2年連続メダルを獲得していた世界体操も、日本代表から落選。
さらに追い討ちをかけるように、コロナ禍で予定されていた大会が延期や中止となり、自粛により練習もできなかった。
「五輪出場」という目標を見失い、一時は「現役引退」まで考えた村上。そんなとき、支えになってくれたのも英子さんだった。
「やっと少し復活してきたかなってときに自粛になって、『昔のような演技ができるわけないじゃん』っていう風に母に当たってしまった。(母は)とくに何も言うことなく『そうだよね』って優しく聞くだけ。聞いてもらってすごくスッキリした」(村上)
そばで見守ってくれた母のおかげで、また前を向くことができた。
苦難を乗り越え迎えた、東京五輪出場をかけた2021年のNHK杯。3年ぶりの出場となった村上は、得意のゆかをはじめ軒並み高得点をマーク。優勝という最高の結果で五輪への切符を手にした。
そしてたどり着いた東京五輪で、見事銅メダルを獲得。無観客のため母の声援はなかったが、選手村の外で待っていた英子さんと喜びを分かち合った。
「茉愛ちゃんの何十年分の血と汗と涙がここに詰まっているんだ…」(英子さん)
首にかけられたメダルの重さに、娘のこれまでを想う英子さん。歴史的なメダル獲得の裏には、そんな母の支えと愛情があった。
母と歩んできた体操人生。現役最後の試合・世界体操を迎える村上は、ゆかの演技で「人生で最高の1分30秒」という目標を掲げている。
「ここまでやらせてくれて『ありがとう』と思いながら演技ができたらいいかなと思います。最高の1分半にしたいと思います」(村上)
母への感謝の気持ちを込めて、最後の舞台に挑む。
※放送情報:『ジャパネット presents 世界体操2021』
◆地上波
10月24日(日)よる7:04~「種目別決勝第2日」※一部地域を除く
◆ABEMA
10月24日(日)よる7:04~「種目別決勝第2日」