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しゅはまはるみ、『カメ止め』でのブレーク前は波乱の日々。女優引退に結婚&離婚、引きこもり状態に

2018年、ミニシアター2館での公開から300館以上の劇場で拡大公開になるという異例の大ヒットを記録した映画『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)で主人公の妻・日暮晴美役を演じて注目を集め、ブレークしたしゅはまはるみさん。

ほとんど仕事がなかったという女優人生が激変し、『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)、連続テレビ小説『スカーレット』(NHK)、藤田健彦さんとW主演をつとめた短編映画三部作で構成されたオムニバス映画『かぞくあわせ』など多くのドラマ・映画に出演。

2020年には有名パーソナルジムのプログラムにより約15キロのダイエットに成功し、グラビア撮影に挑んだことも話題に。8月21日(土)には、映画『あらののはて』(長谷川朋史監督)が公開になるしゅはまはるみさんにインタビュー。

◆中学時代、友人の一言がトラウマに…

小劇場が多くある東京・下北沢で生まれ育ったしゅはまさんは、授業中にうるさくしている生徒がいると注意するようなまじめな子どもだったという。

「自分ではそれが正しいと思っていたんですけど、うざいと思われていたのでしょうね。私立の女子中学校に進んだのですが、1年生のときにはじめて同級生に『あんたに呼び捨てなんかされたくない』と言われたことがあって、それからおしゃべりができなくなりました。トラウマみたいになっちゃって。

それまでは自分は間違ったことなんて言っていないと思っていたのに、『私が言っていたことって誰かによくない影響を与えていたというか、嫌われていたのかな?』って、はじめて中1で気づいて、それからおしゃべりがあまりうまくできなくなってしまったので、それ以降はわりと無口で(笑)」

-中学1年生の頃というと、多感な時期なのでショックだったでしょうね-

「そうなんですよ。しかも誰かに注意をされたとかいうことではなくて、『あんたに呼び捨てにされたくない』ということは『あんたのことが嫌いだ』ということじゃないですか。だからすごくショックでした。

それまではわりとあけすけに言いたいことや思ったことは言う子だったんですけど、『私が何かを言うと何て思われるかわからない』って急に怖くなってしまって…。結構引きずりましたね。すごく仲良くなればいつも通り言いたいことを言って、『きつい性格だね』って思われがちなんですけど(笑)」

高校生になったとき、しゅはまさんは母親に勧められて千葉真一さんの「ジャパンアクションクラブ(JAC)」の養成所に入所することに。

「自分をどう主張すればいいかがよくわからなくなっていたので、親が言う通りにしていればいいのかなみたいになって。俳優という仕事に多少興味があることはなんとなく母が感じていてくれたんだと思うんですけれども、勧められたのがなぜかJAC(笑)。その頃ちょうど真田広之さんの映画がやっていたというのもあったと思います。母と一緒に見に行った記憶があるので、『あなたもこういうことをやる?』という感じで勧められた気がします。それで、養成所に2年行きました」

-千葉さんに気に入られて、女優デビューされたそうですね-

「はい。千葉真一さんの『真』の字をいただいて、『夕真緒』という名前で時代劇『徳川無頼帳』(テレビ東京)に1話出させていただきました。ぶっちゃけ本当に恥ずかしかったです。 JACにいましたけどバク転ひとつできなかったので(笑)。JACの一員として俳優活動をするなんておこがましいというか、先輩たちになんて言われるだろうと思いました。

結構体育会系で上下関係がはっきりしている仲間内だったので、先輩にいじめられるんじゃないかって思いました。結局そういうことは全然なかったんですけど(笑)。みんなが認めるようなからだがすごく動く子だったら自信をもってやれたと思うんですけれども、バク転ひとつできないのにもかかわらず…っていつもビクビクしていました」

-でも、早々に女優デビューされて「もっと仕事を」という欲はなかったのですか?-

「なかったです。養成所の授業はアクション授業が3種類と演技の授業があったんです。私はアクション授業のほうはできないし、つらいからちょっとサボったりしていたんですけど、演技の授業だけはとにかく楽しかったので1回もサボらずに行っていて、お芝居はずっとやりたいなと思いました」

※しゅはまはるみプロフィル
1974年9月29日生まれ。東京都出身。高校時代、JACで「夕真緒」という芸名で女優デビュー。高校卒業後はJACを退所し、堤泰之さん、白井晃さん演出の舞台を経験。1995年、「劇団東京乾電池」の研究生になり、翌年、劇団員に。スーパーモデルのナオミ・キャンベルに変身するエステのCMに出演して話題を集めるが、1998年に退団。女優業を一時引退し、2003年に結婚。芸能界に復帰するが2007年に離婚。その後、舞台出演を機に女優活動を本格的に再開。CMやテレビドラマ、『痛快TVスカッとジャパン』(フジテレビ系)など映像作品にも出演。2018年、映画『カメラを止めるな!』でブレークし、テレビ・映画に多数出演。「東京スポーツ映画大賞」新人賞を受賞。映画『犬部!』(篠原哲雄監督)が公開中。8月21日(土)には映画『あらののはて』(長谷川朋史監督)が公開される。

◆CMでナオミ・キャンベルに変身

高校卒業後、JACを辞めたしゅはまさんはアルバイトをしながらオーディションを受けたり、堤泰之さんや白井晃さんが演出する舞台に出演したという。

-「東京乾電池」を受けたのは?-

「20歳から21歳のときだったと思います。東京乾電池を選んだのは月謝がお安かったということ。あと、綾田俊樹さんの出てらしたお芝居を直近で見ていて、とにかくおもしろかったんですよ。それで、この方と一緒に舞台に立ってみたいなと思ったのが動機としてはありますね」

-劇団の場所も下北沢ですね-

「そうなんです。それもあって通いやすいだろうなと思ったら、当時の稽古場は下北沢じゃなくて桜新町にアトリエがあって、逆にちょっと通いづらかったです」

-東京乾電池は個性的な方たちが多いですが、いかがでした?-

「大人の方たちですよね。でも、柄本(明)さん以外は普通に皆さん優しい方たちでしたよ(笑)。柄本さんは、やっぱりお芝居に対しての情熱がものすごいのと経験値や知識が高すぎて、おっしゃっていることがよくわからないんですよね。『わかるだろう?』って言われても、たいがい『わからないなあ』って思いながらやっていました(笑)」

-結構怒られました?-

「私はそういうときに気配を消すのが多分上手だったんだと思います。だから、私が怒りの的になることはなかったです」

-しゅはまさん演じる「なおみ」が、エステに行ったら、ナオミ・キャンベルに変身するエステのCMは斬新でした。あのCMは「東京乾電池」にいらしたときですか?-

「そうです。オーディションを受けて。本当にありがたいことに25年前のCMなんですけど、いまだに覚えていてくださる方が多くて驚いています。皆さん結構映像までしっかり覚えてらっしゃるというのがすごいなあって。本当にありがたいCMに出させていただいたんだなあって今でも思います」

-あのCMでも注目を集めたわけですが、仕事に対する意欲は?-

「それがなかったんですよ。とにかく舞台をやりたかったのと、あまりテレビドラマが好きじゃなかったので、テレビでお芝居をほとんど見たことがなかったんですよね。それで、あのCMでちょっとだけ顔と名前が知られたおかげでいくつかお仕事をいただいたんですけど、本当に申し訳ないくらい何の準備もせずに現場に行ってこなしていたという感じでした」

-もったいないというか、あのときもブレイクするチャンスはありましたよね-

「あったのかもしれないですね、もしかしたら。でも、本当に私がテレビに興味がなかったのでやりたいと思わなかったし、劇団を辞めることになったときも『映像の仕事はしたくないけど、芝居はしたいから劇団員としてだけ残してくれませんか』という相談はしたけど、映像の仕事もやってくれないと困ると言われたので辞めちゃいました」

◆女優引退に結婚&離婚、引きこもり状態に

1998年、24歳のときに「劇団東京乾電池」を退団したしゅはまさんは女優業を一時引退する。当時、結婚を前提としていた交際相手が女優業に反対で、「結婚したいから女優業は制限してくれ」と言われたことが引退の大きな理由だったという。その彼とは2003年に結婚、2007年に離婚することに。

-ご結婚されたお相手の方も映像の学校に通っていたことがあるのに、女優としてお仕事をすることに対してはあまりよく思われていなかったとか-

「そうなんですよ。何かだまされた(笑)。元は『卒業制作の作品に出てくれ』ということでスタッフと役者として会っているんですが、何なんですかね」

-正式にお付き合いがはじまったときに女優業は一度引退されて-

「そうです。あまり自分で思ったことを人に言えないたちだったので、自分が人前に出るよりかは相方を応援するほうが私に合っているかもしれないと思っていたのは本当です」

-夢を追う人を応援していたかったとおっしゃっていましたね-

「そうなんです、本当に。彼が最初は映画をやりたいんだろうなと思っていたんですけど、深く話を聞いたら『映画はそんなにはやりたくない、音楽をやりたい』と言うので、じゃあ音楽活動を応援しようと思っていました。でも、結婚するまで6年あったので、その間ずっと夢を追い続けてくれていたらよかったんですけど、だんだんそうじゃなくなっていきまして…」

-それでやっぱり女優にということで?

「そうです。彼が夢に一直線ではなくなったのでやはり自分で夢を追いかけようと、結婚を機に女優に復帰しました。そうやって応援しても応援しがいがないなと思ったら、人を応援するより自分でやったほうが手っ取り早いのかなと思って。口は達者じゃないけど行動力はあるかもしれないです」

-離婚されてからはどのように?-

「別れる前に前の事務所に入れていただいていたので、お仕事はそのままで。でも、もちろん芝居で食べていけるわけではないので、アルバイトをしながらうつ病になったり引きこもったりしていたんじゃないですかね。別れた後、半年間ガッツリ引きこもりました」

-引きこもり状態になった原因は?-

「約10年間その人としかおしゃべりしてこなかったみたいな感じだったので、何かロスみたいな感じだったんじゃないかと思います。

そのころ、レンタルDVDが自宅ポストに届き、郵便ポストに返却する画期的なレンタルシステムがはじまったんですが、本当に半年間は家から100メートルぐらい離れたところにあるポストまでの往復というか、ポストに返しに行くくらいしか外に出ませんでした。しかも、夜中にこっそり」

-食事などはどのようにされていたのですか?-

「もうその頃にはインターネットが発達していたので、ネットスーパーとかで買っていました。私は黎明期からずっとインターネットの地域プロバイダーのアルバイトなんかもしていたのでわりと得意なんです。だから不自由はしませんでした」

引きこもり生活をはじめて半年ほど経った頃、エステのCMを担当したディレクター・山内ケンジさんから舞台出演の依頼が。一度は事務所経由で断ったが、直接山内さんからオファーされたことで出演。引きこもり状態から脱することができたという。

「事務所を通して引きこもりを理由にして『ムリです』とお断りさせていただいていたのに、山内さんが『ダメだよ、出なきゃ』と言ってわざわざ電話をくれたのは本当にありがたかったですね。外に出るきっかけになりました。

それで出てみたら意外と大丈夫でしたね。そのときに1回目のデブ期が来て(笑)。半年間引きこもっていて何も運動していないし、ネットスーパーで買い放題食べ放題だったので多分6、7キロ太っていたんですよ。

それで、久しぶりに知っている人たちに会いに行くわけじゃないですか。だからそれもすごく恥ずかしかったんですけど、本当にみんな優しくて『全然そんなのわかんないよ。変わらないじゃん』みたいに言ってくれて。『人って優しいんだなあ』って思いました(笑)」

引きこもり状態から脱し、復活したしゅはまさんは女優業を再開。舞台だけでなく『痛快TVスカッとジャパン』など映像の仕事も。そして、映画『カメラを止めるな!』に出演したのを機に女優人生が大きく変わることに。

次回は『カメラを止めるな!』に出演することになったきっかけ、撮影エピソードなども紹介。(津島令子)

©︎ルネシネマ

※映画『あらののはて』
2021年8月21日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
配給:Cinemago
監督:長谷川朋史
出演:舞木ひと美 髙橋雄祐 眞嶋優 成瀬美希 藤田健彦 しゅはまはるみほか
高校2年の冬にクラスメートで美術部の大谷荒野(髙橋雄祐)に頼まれ、絵画モデルをしたときに感じた理由のわからない絶頂感が今も忘れられない野々宮風子(舞木ひと美)は8年後、荒野にもう一度自分をモデルに絵を描けと迫るが…。