テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
未来をここからプロジェクト
menu

トヨタ、6連勝ならず。初開催ベルギーの難コース、ヒュンダイドライバーが“経験”いかす<WRC>

年間12戦を予定しているWRC(世界ラリー選手権)2021年シーズンも残り5戦。そろそろチャンピオン争いに注目が集まってくる。

そんななか今回、第8戦としてWRC開催地35カ国目となる「ラリー・ベルギー」が行われた。

©TOYOTA GAZOO Racing

じつは今回のラリー・ベルギーは、多くの関係者からシーズンのターニングポイントになるだろうと言われていた。というのも、初開催地であり、今シーズン3戦あるターマック(舗装路)ラリー最初のコース。シーズン残り5戦で、ターマックは3戦ある。

つまり、ターマックに適したマシンを準備できたチームがシーズン終盤を有利に戦える。初開催地であるから、コースの経験値よりマシンの良し悪しが結果に出やすい。残りのシーズンを占うラリーになるということだ。

現在、トヨタがマニュファクチュアラーズタイトルを59ポイントリードしているが、果たしてライバルであるヒュンダイのマシンの出来はいかほどなのか。このラリー・ベルギーは注目の一戦となっていた。

ところで初開催地のラリー・ベルギーは、もともと1965年から続いている国内ラリー、イープルラリーをベースに設定された。

イープルはベルギーの北西にある街。フランス国境に近く、車で1時間強ほど西に走れば、ドーバー海峡の海底を掘った英仏トンネルがあるフランス・カレーの街にたどり着く。

そんなイープル周辺でラリーコースが設定されたのかと思いきや、金曜日と土曜日はイープル周辺だが、日曜日はイープルから車で東へ約3時間、ドイツ国境に近いF1開催で有名なスパ・フランコルシャン・サーキットと周辺がラリーコースとなった。

西から東へ高速道路が整備され、3時間ほどで横断可能なベルギーならではのコース設定といえるかもしれない。

©TOYOTA GAZOO Racing

さて、そんなラリー・ベルギーの上位陣の結果は以下の通り。

1位:ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)
2位:クレイグ・ブリーン(ヒュンダイ)/1位から30秒7遅れ
3位:カッレ・ロバンペラ(トヨタ)/同43秒1遅れ
4位:エルフィン・エバンス(トヨタ)/同49秒6遅れ
5位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)/同55秒8遅れ
6位:オット・タナック(ヒュンダイ)/同3分46秒5遅れ
(7位以下はWRC3、WRC2クラスのドライバーが入賞)

優勝はヒュンダイのヌービル。ベルギー人ドライバーのヌービルにとって、嬉しい母国WRC初開催で最初の優勝ドライバーとなった。

2位にもヒュンダイのブリーンが入り、ヒュンダイは今シーズン初のワンツーフィニッシュを獲得した。ここまでトヨタが6勝を挙げており、ヒュンダイにとっては第2戦ラリー・スウェーデン以来のシーズン2勝目。

3位には前戦でWRC最年少優勝を果たしたトヨタのロバンペラが入った。

◆“経験”がものをいったラリー・ベルギー

©WRC

じつは今回のラリー、優勝がヌービルで2位がブリーンというのは、決して偶然とは言えない。彼らは事前にしっかりと準備していたのだ。

というのも、ヌービルとブリーンは国内ラリーのイープルラリーに以前出場しており、2018年はヌービルが優勝、2019年はブリーンが優勝している。彼らは、コースについて他のドライバーより明らかに熟知していた。

今回のラリー・ベルギーのコースはとても特徴的なターマック(舗装路)だ。というのも、アスファルト部分は車がすれ違えないほど狭く滑りやすい。そしてアスファルトの横は普通の土。イメージとしては田舎の細いあぜ道にアスファルトを敷いたようなもの。そのため、右へ左へと曲がるコーナーを攻めるとき、どうしても土の部分へとショートカットする走りになる。

そして何台ものマシンが走ることで、その土部分は掘られて、深い轍のようになる。土埃はアスファルトに巻かれ、さらに路面は滑りやすい状態に。それでいて直線部分も多く、かなりの高速ラリーだ。小さな判断ミスやちょっとした路面の影響でマシンがアスファルトを外れると、タイヤのパンク、ときには大クラッシュに繋がってしまう危険なコースとなっていた。

©WRC

そんな特徴的な路面だけに、慣れないドライバーはマシンをクラッシュさせたり、サスペンションをぶつけてしまったりして順位を落とす。結果として、総合20位までに優勝のヌービル含め地元ベルギーのドライバーが8人も入った。いかにコース攻略に経験が必要かのあらわれだろう。

では、ラリー・ベルギーを振り返ってみよう。

初日の金曜日はSS1からSS8までが行われた。この日強さを見せたのはヒュンダイの3台。SS8を終えた時点で1位から3位を独占した。

とくに国内ラリー出場経験があるヒュンダイのヌービルとブリーンは、躊躇なくアスファルト脇の芝生や土へとマシンをカットさせタイムを刻む。結果としてこの2人が競うようにトップを争い、2台のマシンが頭一つ抜け出す形で初日を終了。トヨタは4位から7位だが、その差はマシンというよりコースへの慣れの差といえた。

◆トヨタ・勝田貴元、慣れない初開催地の餌食に

©TOYOTA GAZOO Racing

2日目の金曜日は、SS9からSS16までが行われた。初開催地に慣れていないドライバーは次々と苦しめられる。

SS9では3位だったヒュンダイのタナックが轍でパンク。タイヤ交換に3分ほど取られ、次に走ってきた同じヒュンダイのブリーンにコースを譲る場面などもあり、7位まで順位を落とした。

続くSS10、餌食となったのはトヨタの勝田貴元だ。このSS10は非常に難しい左コーナーがあり、この左コーナー内側部分のアスファルトの一部が少し盛り上がっていて、ここにタイヤを取られてマシンの挙動を崩すことが予想されていた。

実際、勝田より先に走行したMスポーツのガス・グリーンスミスがこの左コーナーにあったアスファルトの盛り上がりにタイヤを取られ、マシン挙動を大きく崩した。左右にマシンを大きく振りながらもなんとか走行していったが、続いてこのコーナーにやってきた勝田は同じ盛り上がりにタイヤを取られ、グリップを失ったマシンが右側に膨らんでしまい、アスファルト部分を外れて深い轍にマシンを突っ込ませてしまった。

そのままマシンは大きく横回転。コース脇にあった細い電柱のようなコンクリートポールをなぎ倒して止まった。マシンはひしゃげるほどの大破。ドライバーの勝田とコドライバーのキートン・ウイリアムズ(※前戦で首と背中を痛めたダニエル・バリットの代役)は2人とも大きな怪我はなく、無事マシンから降りられたのは不幸中の幸いだった。

©TOYOTA GAZOO Racing

このアクシデントについてチーム代表のヤリ‐マティ・ラトバラ代表はこう語る。

「あそこは危険なコーナーだと事前にわかっていた。マシンがコンクリートポールにぶつかったとき、幸運にも壊れて倒れてくれた。そうでなければ、もっと強い衝撃がマシンに加わったはずだ」

勝田は2戦連続のリタイアとなってしまったが、まずは身体が無事であったことを喜びたい。勝田の他にもこのコースに苦しめられたドライバーは多く、2日目を終えて、10台参加していた最高峰クラスのRC1は6位までしか残っておらず、4台が2日間でリタイアやデイリタイアとなった。

◆トヨタ、6連勝逃すが首位はキープ

そして最終日。場所を東へ300kmほど移動したスパ・フランコルシャン・サーキットと周辺へと移り、SS17からSS20までが争われた。

この日の注目はトヨタ3台による3位争いだった。SS16を終えて3位エバンス、4位ロバンペラ、5位オジェの差は4秒3。誰が3位になっても不思議ではない。

SS17、上位を狙っていたオジェのマシンがパンク。そのまま走りきったが、エバンスとの差は10秒9に広がってしまった。この日はロバンペラの調子が良く、SS18でエバンスを逆転して3位に浮上。そのまま表彰台を獲得した。

©WRC

こうして終えたラリー・ベルギー。トヨタとしては勝利こそヒュンダイに譲ったが、マシンの差は殆どないことを確認できた。残りのターマック(舗装路)ラリーは大いにチャンスがあるはずだ。

ラリー・ベルギーを終えたトヨタチームのリリースコメントは以下の通り。

※セバスチャン・オジェ
「表彰台をかけてチームメイトといい戦いをし、エキサイティングな最終日になることを期待していましたが、今朝最初のステージを3、4km走ったところでパンクをしてしまいました。ライン上にあった小さな岩に気がつかずに当たってしまい、我々の戦いはそこで終わってしまったので、その後はパワーステージに集中することにしました。

ステージ優勝は叶いませんでしたが、2番手タイムで4ポイントを追加獲得することができました。そのおかげで選手権のリードをさらに1ポイント拡げることができたので、悪くない週末になったと思います」

※エルフィン・エバンス
「残念ながら、今日は今回のラリーで最も悪い1日になってしまいました。今朝は、最初からあまりうまくいきませんでした。ハードに攻めたところもありましたが、いくつかミスをしてしまいタイムを失いました。今日は自分たちのための日ではなかったと思います。

カッレは非常に強く、素晴らしい結果を残しました。全体的に悔しい週末になりましたが、もう少し良い戦いをすることはできたはずです。いくつかの場所や特定のコンディションでは非常に良いパフォーマンスを発揮できたと思いますが、それを全てのステージで維持することができませんでした。次のラリーが楽しみですし、もっと良い戦いができるように頑張りたいと思います」

※カッレ・ロパンペラ
「今回のベルギーでの最終日はとても良かったです。今まで経験してきた日曜日の中で最も激しい戦いのひとつでしたし、チームメイトとの競い合いを楽しむことができました。スパ・フランコルシャン周辺のステージは、自分にとっては比較的簡単でした。これまで他のラリーで走ったことのあるステージに近かったので、ペースを上げやすかったのですが、それでもかなりトリッキーでした。

この結果にはとても満足しています。自分よりも順位が上の2人は、このラリーでの経験が豊富でしたし、金曜日のタイムを見ても誰も彼らにかなわないことは明らかでした。自分たちの経験が少なかったことを考えれば、他のドライバーに負けずに表彰台に立つことができて本当に良かったと思います」

©TOYOTA GAZOO Racing

ラリー・ベルギーを終えて、ドライバーズチャンピオンシップは以下の通りとなった。

1位:セバスチャン・オジェ/162ポイント
2位:エルフィン・エバンス/124ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/124ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/99ポイント
5位:オット・タナック/87ポイント
6位:勝田貴元/66ポイント
7位:クレイグ・ブリーン/60ポイント
8位:ガス・グリーンスミス/34ポイント

そして、マニュファクチュアラーズ争いはトヨタが348ポイント、ヒュンダイ307ポイント、Mスポーツ135ポイントとなっている。

シーズンのターニングポイントになることが予想された今回のラリー・ベルギー。

残念ながらトヨタ6連勝とはならなかったが、ターマック(舗装路)でもヤリスWRCが十分な速さを見せたことは大きな収穫だった。そしてなにより、クラッシュをした勝田貴元とコドライバーのキートン・ウイリアムズが無事だったことはいちばんの朗報だ。

次戦は再びグラベル(未舗装路)コースとなる第9戦ラリー・ギリシャ(9月9日~12日開催)。

アクロポリス・ラリーと呼ばれ、コースの悪路ぶりは世界一とも言われる難コース。じつに8年ぶりのWRC復帰だ。トヨタは1990年にカルロス・サインツがトヨタ・セリカGT-FOURで優勝している。ぜひヤリスWRCでも優勝を飾ってもらいたい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

LINE はてブ Pocket
関連記事
おすすめ記事