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梅垣義明、“ステージ”を語る。WAHAHA本舗は接客業「笑ってるお客さんを見るのが楽しいんです」

喰始(たべ・はじめ)さんが創設した劇団「WAHAHA本舗」を柴田理恵さん、久本雅美さん、佐藤正宏さんらとともに長きに渡り支え続けている梅垣義明さん。

派手な女装メイクに華やかなドレス姿で越路吹雪さんの『ろくでなし』を歌いながら鼻から豆を飛ばし、美空ひばりさんの『川の流れのように』を歌いながら股に噴霧器を装着して大量の水を客席に撒(ま)き、会場を縦横無尽に移動。そして男性客の顔にラップを巻いて唇に熱いキスとユニークな芸を多数披露し、観客を笑いの渦に巻き込んで来た梅垣さんだが、コロナ禍で困難な事態に…。

 

◆柴田理恵さんの謎の行水姿を目撃

梅垣さんは1984年に劇団「WAHAHA本舗」に入団し、第2回公演から参加して37年になるという。

「劇団というのは作ることよりも、それを維持することのほうが大変なんですよね。ただでさえ厳しいのに、コロナで運営できなくなってしまった劇団もあるかもしれない。それを考えると、長くできているということはありがたいことだと思います」

-「WAHAHA本舗」のメンバーの皆さんはものすごく結びつきが強い感じがします-

「結びつきが強いというか、37年も一緒にいるといいところも悪いところも知っているし、別に仕事が一緒にならなくても打ち合わせとかで事務所で会ったりもするんですよね。でも、2020年の緊急事態宣言中は柴田ともずっと会ってなかったので、何か月ぶりかで柴田に会ったときうれしかったんですよ。手をヒラヒラさせて振っちゃいましたよ、気持ち悪いと思いながら(笑)。

でも、緊急事態宣言が解除されたときはそういう気持ちになるんですね。会うとうれしいみたいな。自分でも精神的にちょっと閉じちゃったことがあったんだけど、友だちと久しぶりに会って話をして帰ったら元気になったんですよね。だから、さっきの柴田の話じゃないけど、人に会って話をするって大事だなあって思いました」

-以前、柴田さんの行水シーンを見てしまったこともあったそうですね-

「もう大昔ですが、アパートの台所の流しでからだを洗うなんて柴田だけですよ(笑)。夏に用事があって柴田のところに行ったら、風呂無しだから裸になって行水をしていたんだけど、なぜかシャワーキャップを付けていたのが不思議でずっと見ていたんです。こだわりなんでしょうね(笑)。

柴田は俺がのぞいたって言うんですけど、俺はそんなの見たかったわけではなくて見せられたと思っているし(笑)。たまたま用事があって行ったら、そういうところに出くわしてしまったという感じですよ」

-男女を超えた結びつきという感じでいいですね-

「男女を超えたというかそういうことが楽しかったというか、これは将来何らかの形で成功したときのエピソードとして使われるんだろうなってどこか冷静に見ているんですよね。これもいいネタだっていうふうに。

柴田もいいネタだと思っているからね。たとえば僕らは60歳を過ぎたんだけど、同じぐらいの年代の人と仕事で会うことがありますよね。そうすると、その人が昔話を若い子たちにエピソード的に語っているわけですよ。『昔は酒を飲んで芝居をやった』とかね。そういうのを聞いていると、『つまんないこと言ってるなあ』って思うんですよ(笑)。言いたがり屋がいるんですよね。

ワハハにいてよかったなと思うのは、多分同い年の役者で僕らの劇団の人よりもこんなくだらない楽しいことをやった劇団はないだろうなというのはあるんですよ。何かいい経験をさせてもらったというか。それはワハハだから、喰さんだからだというのがあると思います」

-喰さんはとても穏やかそうに見えますが、厳しいですか?-

「厳しいというか、正直僕がいちばん喰さんに怒られたと思うんですけどね。唯一言えるのは、いろんな稽古中、とくにネタ見せとかやりますよね。演出家というと、きちんとテーブル越しに見ている人が多いじゃないですか。でも、喰さんは本当に楽しそうに見ているんですよ、口をポカンとあけて。

ほかの人間が笑っていなくても、僕は喰さんが口をポカンとあけて笑っていると、どこか安心するというのがあります。演じている人間を緊張させないために、敢えてそういうふうにしているのかもしれないですけど、本当におもしろいこと、楽しいこと、本人が楽しんでいることを見るのが好きなんでしょうね。

喰さんと出会ったことというのは、柴田もみんなも言うと思うけど大きいですね。年齢は一回り違うんだけれども、いろんなことを教えてもらいました。新宿ゴールデン街なんて僕らより上の世代が常連だから、喰さんがいなかったら行っていなかったと思うし、そういう世代の匂いを感じられたことは貴重ですね。

(新宿)二丁目の世界とかもそうですよね。自分が舞台を続ける上で、彼らの接客とか気遣いみたいな水商売的なことはいろいろ学ばせてもらいました」

-そういうこともあって梅垣さんのステージは楽しいのでしょうね-

「柴田も言っていたんですけど、自分たちは接客業だと。来てくれたお客さんに楽しんでもらうということがまずあって、喰さんがよく言うのは『3階まであるような大きなホールでやるときは、1階の客は見えるからいいんだ。2階3階の客を大事にしよう』って。

もちろん柴田にしても久本にしても俺にしても役者なんだけども、心の中では接客業、サービス業だという気持ちが強くあるんじゃないですかね。ワハハの舞台でも、たとえば柴田や久本が出ていて僕がメイクを直しながら袖で見ているとき、柴田たちがやっていることを見て笑っているお客さんを見るのが楽しいんですよね。

お客さんが笑っている顔が好きだからやっているわけじゃないですか。僕らのお客さんは結構年配の人が多いけども、若い人からいろんな世代の人が一緒に笑っている顔を見る機会はあまりないじゃないですか。だから、そういうのを見ているとやっぱりいいなあって思います」

※WAHAHA本舗全体公演『王と花魁』
2021年10月28日(木)~31日(日)新宿文化センター 大ホール
構成・演出:喰始
出演:柴田理恵 久本雅美 佐藤正宏 梅垣義明 すずまさ 大久保ノブオ
2020年上演予定で延期になった「WAHAHA本舗」4年ぶりの全体公演。“和”をテーマに、枠にとらわれないコラボレーションや、バカバカしくもエレガントな“WAHAHAワールド”が…。

◆過激だ、下ネタが多いと言われるけれど…

斬新なアイデア満載のパフォーマンスで人気のWAHAHA本舗。2006年の『NHK紅白歌合戦』にDJ OZMAが出演した際に物議を醸したバックダンサーが裸に見える衣装(裸スーツ)もWAHAHA本舗が貸し出したものだということで話題に。

「紅白のあのシーンを見て、喰さんは『あれは使い方が間違っている』と言っていましたけどね(笑)」

-裸じゃないとわかっていてもドキッとしますね-

「あの裸スーツは僕らもドキッとします。舞台袖で柴田が着ていたりすると、『えっ?』と思うときがありますよ。『見なきゃよかった』と思うときがあります(笑)。

あれをDJ OZMAが紅白で使って話題になったけど、僕らからすると、ワハハのおもしろいのはあれだけじゃないよっていうのがあるんです、どこかで。ワハハは下ネタとかそういうことばかりが取り上げられるけど、『見に来てないのに言うんじゃないよ』っていうところも少しあるんですよね。

たしかにワハハができた頃、『下ネタが多い』とか、『過激だ』とか、『テレビでできないことをやっている』とか言われたけど、文章に書きやすいし紹介しやすいじゃないですか。

でも、ずっと思うのは別にテレビではできないことをやろうとしたわけではなく、自分たちがおもしろいと思ったことがたまたまテレビでできないことであって、過激なことをやろうなんて思っていたわけじゃないんですよ。過激という言葉も嫌いだし、何をもって過激というのかわからない。今このネット社会で放送禁止もないだろうと思うんですけど」

-さらに現在のコロナ禍では、今まではできていたこともできなくなったことがあるとか-

「こんな時代が来ると思ってなかったし、みんな同じ条件でやっているんだから仕方ないなと思いますけど、ことごとくダメになりましたね。『ろくでなし』を歌いながら鼻から豆を飛ばすネタは飛沫感染的に絶対ダメ。客席に歌いながら入って行ってお客さんを抱きしめたり、お客さんの顔にラップを巻いて唇にキスをするのもダメですからね」

-2020年はWAHAHA本舗の全体公演『王と花魁』も中止になりました-

「この前柴田と一緒に取材を受けたときに、『去年中止になってどんな気持ちでしたか?』って聞かれたんだけど、僕はそんなに落ち込まなかったんですよね。だって、いつかはできるんだからって。それでも自分の心の中でちょっと不謹慎かなと思ったんですよ。舞台をやっている人間ができなくなったときにもっと落ち込むべきなのかな、落ち込まなくちゃいけないのかなって。

あまり落ち込んでない自分がどうなのかなって思ったんだけど、柴田が同じことを言っていたんですよね。『そんなに落ち込まなかった。どうせまたできるんだから』って。それを聞いて同じなんだなって思いました。実際に、今年の10月からできることになりましたからね。テーマも何もないけど、とにかく楽しいものにしようとみんな思っていますよ」

※舞台『イキヌクキセキ 十年目の願い』
2021年7月2日(金)~11日(日)KAAT神奈川芸術劇場
2021年7月16日(金)~18日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
出演:屋良朝幸 浜中文一 松本明子 松下優也 ヒデ(ペナルティ) 梅垣義明 安寿ミラ 松平健
東日本大震災から10年。はたせなかった幻の卒業式…。故郷を離れた人、地元に残った人、それぞれの見えなかった運命の糸が、一つひとつ繋がりはじめる…。

◆誰もいない公園で踊りの練習

2020年の緊急事態宣言中は、これまで買って読んでいなかった本棚の本を片っ端から読んでいたという梅垣さん。現在、舞台『イキヌクキセキ 十年目の願い』の公演中。今回の緊急事態宣言が解除されると稽古に追われていたという。

「近くの公園に行ってひとりで練習をしていましたよ。なかなかセリフが覚えられないし、ダンスも歌も覚えられない。全然ダメですよ。若い人は僕が年をとっているから何でもできると思っているんだけど、そうじゃないんだよっていうことも教えてやらなきゃって(笑)。

自分はこの世界に入るまでは器用な人間だと思っていたんだけど、何もできないことにはじめて気づかされるわけですよ、入ったときに喰さんから。だから、僕は自分の舞台があるときによく稽古場にいるんだけど、すごい練習していますよ。というのは、できないからなんですよ。できない人間はやっぱりやるんですよ、人の何倍も。

『なぜこんな時間までやっているんですか?』って言われると、できないからですよ。それは努力でもなんでもないと思うし、当たり前のことですから」

-何でもできちゃうように見えますけどね-

「そう。だからつらい。できるように見えるし、俺は怖そうに見えるからつらい。今、それ身をもって体験していますよ(笑)。去年からやたらと『今こそエンターテインメントの力を』って言うけど、俺はあの言葉が苦手でね(笑)。

あくまでも個人的な思いの問題だけど、『エンターテインメントの力』という耳障りのいい言葉を連呼するやつに限ってつまんないやつが多いというか、『エンターテインメントの力』というのはこっち寄りの言葉であって、逆に俺なんかはお客さんの力だというのがあるんです。

よく『年齢のわりには体力ありますね』って言われるんですけど、それはアスリートの体力とは違って、僕らが走って2階席、3階席に行くのはお客さんの拍手なり笑いがあるから行けるのであって、お客さんがそうやって動かしてくれているんですよね。

お客さんが誰もいなかったら、2階3階までなんて走って行きませんし、行けない(笑)。それはやっぱりお客さんも僕らをのせようとするし僕らもお客さんをのせようとする、エネルギーの交換だと思っているから、お客さんの力だと思う。配信も1回やってみたけど、舞台とは別物ですからね。だから、早くまたコロナ以前のような状態になってほしい」

まだコロナは終息の兆しもないが、エンターテインメントの世界は少しずつだが確実に動きはじめている。4年ぶりとなるWAHAHA本舗の全体公演『王と花魁』に期待が高まる。(津島令子)

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