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西田尚美、じつは全く興味がなかった女優業。デビュー作で演技に恐怖「なんで受けちゃったんだろう」

モデルとして女性ファッション誌「an・an」や「non-no」などで活躍後、初主演映画『ひみつの花園』(矢口史靖監督)でハワイ国際映画祭主演女優賞をはじめ、多くの映画賞を受賞して注目を集めた西田尚美さん。

チャーミングなルックスに透明感あふれる唯一無二の存在感で女性ファンも多く好感度が高いことでも知られ、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)、『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK)、映画『凪待ち』(白石和彌監督)、映画『新聞記者』(藤井道人監督)などドラマ・映画に多数出演。6月18日(金)には、主演映画『青葉家のテーブル』(松本壮史監督)の公開が控えている西田尚美さんにインタビュー。

◆祖母の助けを借りて父を説得、東京へ

広島県で生まれ育った西田さんは、小さい頃は人懐っこい子で野山を駆け回る自然児だったという。

-将来何かになりたいというような夢はあったのですか?-

「とくになかったです。両親や親せきもほとんど公務員ばかりだったので、いずれそういうふうになるんだろうなと私自身も思っていましたし、親ももちろんそう考えていたみたいです」

-それが変わったのはいつですか?-

「高校1年生のときに進路を決めなければいけなくなって、大学に進学するなら理系か文系なのか決めないといけなかったんです。親に相談したら、『公務員になるんだから別に大学なんて行かなくてもいいんだよ』って言われて、『そうか。じゃあ就職コースでいいのか』と思ってそれを取っちゃったんですけど、1年生の途中ぐらいで急に危機感を感じてしまったんです(笑)。

それ以降、自分の進路について考えるようになり、ここじゃないどこかに行きたいという思いがすごく強くなったんです。どうなるかわからないけど自分の生まれた家から出たいと。

まずは出ることが目標だったので、近場だったら許してもらえるかもと思って『関西方面の大学はどうかな』って提案したんですけど、『ダメ』って一蹴されてしまって(笑)。短大とかの資料をいろいろ集めてお願いしてみたけど反対されるというやり取りが続きましたが、やはりあきらめきれなくて…。

どんどん日にちは過ぎていき、勉強についていけなくなるし、試験が楽なものでという感じで選択していくと、この際東京に行ってしまったほうがいいんじゃないかと思って、東京の資料を集めだして、それで『文化服装学院』に行きたいと言ったんですけど、すごく反対されてしまって。

本当にもう懇願して、そうしたら祖母が見るに見かねて、『行かせてあげて』って言ってくれたので、行けることになったんです」

-お父さまは寂しかったのでしょうね-

「そうだと思います。手元に置いておきたかったんでしょうね。祖母の応援がなければ絶対にムリでした」

高校卒業後、西田さんは18歳で上京。住む場所はお父さまと、千葉で暮らす叔父さまと一緒に探したという。

「私はもう少し学校に近いところがよかったんですけど、父が安全なところがいいと言うものですから。ひとりでアパートとかいうのは心配だったみたいで、大家さんが下に住んでいるような二世帯のそういう家を探して、『お父さんもちゃんと大家さんに話しておくからね』って言って(笑)。最初はそういうところに住みました」

-一人暮らしはどうでした?-

「下に大家さんのご家族がいらっしゃる家で下宿みたいな感じで、『ただいま』って言って階段を上って部屋に入るという感じでした。そういう点では全然不安とかはなかったです。ひとりはそんなに寂しくなかったし、何か楽しいなあって思いました。ずっと家族でいるのが当たり前だったから何かやっと自分の好きに生きられるというか、それがすごくうれしかった気がします。

東京はやっぱり怖かったですけどね。街自体が大きいし、山が見えないことにびっくりしました。田舎にいるときには必ずどこかに緑が見えていましたが、東京は緑が見えなかったので。それに人も多いし、電車で新宿まで通っていたんですけど人の多さには本当にびっくりしました。

新宿駅もなかなか覚えられなかったですし、新宿駅の南口からつらつら歩いていくんですけど、そこを通り抜けることが大変でした。出口もいっぱいあって、都会ってこういうことなのかって思いました(笑)」

※西田尚美プロフィル
1970年2月16日生まれ。広島県福山市出身。モデルとして活躍後、女優に転身。1997年、初主演映画『ひみつの花園』で第21回日本アカデミー賞新人俳優賞ほかを受賞。近作には2019年、映画『凪待ち』、『新聞記者』、『五億円のじんせい』(文晟豪監督)。2020年、映画『空はどこにある』(山浦未陽監督)、ドラマ『半沢直樹』(TBS系)。2021年、ドラマ『にじいろカルテ』(テレビ朝日系)。今後は連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)、映画『かそけきサンカヨウ』(今泉力哉監督)が控え、6月18日(金)に公開される主演映画『青葉家のテーブル』では、子育てをしながら仕事に励む等身大の主人公を演じている。

◆アルバイト感覚でモデルに

文化服装学院に通いはじめた西田さんは、宿題も多く忙しい毎日を送りながらアルバイトもいろいろしていたという。

「駅ビルの中の靴屋さんとか青山のイタリアンレストラン、下北沢の雑貨屋さんとか、結構いろんなところでアルバイトをしました」

-そしてモデルに?-

「はい。モデル事務所に所属したのは2年生の最初のほうでしたけど、仕事がもらえたのは二学期くらいだったと思います。友だちに勧められてモデルのことなんて何もわかりませんでしたが、事務所に所属しておけば何かアルバイトとか派遣社員みたいに仕事があるかもしれないと言われました。

仕事があればだけど、なきゃないで今のバイトを続ければいいんだからって言われて『そっかー』って(笑)。重くは考えていなかったです」

-就職が決まっていたそうですね-

「はい、『プランタン銀座』(現・マロニエゲート銀座)というデパートに決まっていました。パリに行けるかもと思って(笑)。そういう安易な理由でした」

-それがモデルの仕事をするようになって-

「そうですね。最初のうちは事務所に所属しているだけで幽霊みたいな感じだったんです。アルバイト先からオーディションに向かったりしていたんですけど、全然受からないし何も仕事がありませんでした。

だけど、途中から雑誌に出るようになって、たまたま『MEN’S NON-NO』の方が使ってくださって、『non-no』とかに出られるようになったので、それから仕事がいただけるようになりました。それまでは全然ダメで、普通の学生でバイトをやっていたんですけど」

-モデルとして野心とか執着心は?-

「ないです。アルバイトの一環でやっていたようなものだからとくになかったと思います。自分がモデルを仕事として食べていけるとか、そんな大それたことは考えていませんでした。周りの人たちはすごいなあみたいな感じで(笑)。

私が入ったときにはすでに売れている人たちばかりでしたので、『あんな人もこんな人もいた。雑誌で見ていた人たちだ』みたいな感じで、自分がそこにいていいのかなという感じでした」

-「non-no」の好感度ランキングではかなり上位に選ばれていました-

「どうなんでしょう(笑)。そういうランキングがあったことも知らなかったですし、呼ばれて行っていいページができたら楽しいなと思っていたので。『non-no』のモデルをやりながらもアルバイトを続けていたと思いますよ。やっぱりモデルだけだと不安だったので、いつ切られるかヒヤヒヤしていましたから(笑)」

-お父さまはモデルをされていることはご存じだったのですか?-

「絶対に言ったら怒られると思っていたので隠していたんですけど、スーパーで私の友人のお母さんと偶然会ったみたいで、『尚美ちゃん、すごいね。雑誌に出ているじゃない』って言われて、そこではじめて知ったみたいです(笑)。

本屋さんで『non-no』を買って、『なんかお前出ているらしいね。見たよ』って電話が来たんです。就職が決まっているのだからどっちかを選ばなければならないと父に言われました。その意味することはどっちを選んでも怒らない、後悔しないほうを選べばいいんだろうなと思ってモデルを選びました」

◆女優業にはまったく興味がなかったが…

モデルの仕事を本格的にはじめて軌道に乗り、アルバイトをしなくて済むようになった頃、西田さんは事務所からドラマのオーディションに行ってくれないかと言われたという。

「女優業にはまったく興味がなかったのですが、担当マネジャーから強く言われて行きました」

-それで、すぐに『オレたちのオーレ!』(TBS系)のヒロインに?-

「外から見ればそうなんですけどあまりやる気がなかったし、すごく場違いな気がしました。演技のレッスンをしたこともなかったので本当に何もできなくて(笑)。周りにものすごく迷惑をかけてしまったと思うし、何であのとき断れなかったんだろうなって思いました」

-お芝居もはじめてで、いきなりヒロインですから大変でしたでしょうね-

「台本の読み方もわからないし、何であのとき受けちゃったんだろうなあって。『早く終わって』という願いしかなかったです。そのデビューの作品で古田新太さんがご一緒だったんですけど、すごく助けていただきました。何もできなくてへこんでいるときとかも『尚美、大丈夫だよ』って励ましてくれたりしてすごく救われましたけど、『演技をするのは怖いなあ』って思っていました」

-撮影が終わったときはどうでした?-

「違和感はありましたが、別のお話が舞い込んで来て『どうする?』ってなって。女優をやめるにしても、そのまま消化不良で終わってしまうのがすごく自分の中でもどかしくてというか悔しくて、それもチャレンジだと思って。負けず嫌いの性分が出ちゃったんでしょうね(笑)」

そして西田さんは1995年、映画『ゲレンデがとけるほど恋したい。』(廣木隆一監督)に出演することに。

-映画の現場はいかがでした?-

「映画の仕事はやってみたかったので挑戦しましたが、怖かったです。ドラマのときと同じ感じですごく怖かった。はじめての本格的な映画『ゲレンデがとけるほど恋したい。』がニュージーランドのロケで、すごく恵まれた環境だったんですけど、でも演技が(笑)。その場所にいるのはすごく楽しいのですが、セリフをどうやって言ったらいいのか、本当にわからないというか…。なんであんなに悩んでいたんですかね(笑)」

当時は悩みに悩んでいたという西田さんだが、1996年に映画『学校の怪談2』(平山秀幸監督)、そして1997年には出世作となった映画『ひみつの花園』に主演することに。

次回は『ひみつの花園』、『ナビィの恋』(中江裕司監督)の撮影裏話&エピソードなども紹介。(津島令子)

ヘア&メイク:茅根裕己〈Cirque〉
スタイリスト:岡本純子
ワンピース :ヌキテパ(パサンド バイ ヌキテパ)
パンツ:エンフォルド
ピアス:ヴラスブラム(Vlas Blomme 目黒店)

©︎2021 Kurashicom inc.

※映画『青葉家のテーブル』
2021月6月18日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
企画・製作:北欧、暮らしの道具店
配給:エレファントハウス
監督:松本壮史
出演:西田尚美 市川実和子 栗林藍希 寄川歌太 忍成修吾 久保陽香
月間200万人が訪れるECサイト「北欧、暮らしの道具店」が作り上げる必見の世界観! シングルマザーの春子(西田尚美)と息子のリク、春子の飲み友だちめいこ、その彼氏で小説家のソラオの4人で共同生活をする青葉家。ある夏の日、春子の20年来の友人で気まずい過去がある知世(市川実和子)の娘が美術予備校の夏期講習に通うため、青葉家に居候することになるが…。