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俳優・升毅、料理の腕前はプロ級。自宅マンションで友人が集う“居酒屋風”憩いの場ひらく

猟奇殺人犯から人情味あふれる“イケおじ”まで幅広い役柄を演じ分け、リポーター/ナレーターとしても活躍している升毅さん。

料理の腕前もプロ級とマルチな才能を発揮。2015年に映画『群青色の、とおり道』で佐々部清監督とはじめてタッグを組んでから監督の全作品に出演。映画初主演をはたした『八重子のハミング』(2017年)も佐々部監督の作品だった。仕事だけでなく、一緒にお酒を飲み、フォーク酒場でともに歌い…監督と俳優の一線を越えた関係だったという。

◆急逝した佐々部監督と過ごした日々

『陽はまた昇る』、『半落ち』など多くの映画を世に送り出してきた佐々部清監督が新作の製作準備で滞在していた故郷・ 山口県下関市で急逝したのは2020年3月31日。まだ62歳、あまりに突然の早すぎる別れに映画界は大きな悲しみに包まれた。

-突然の訃報に驚きました。心疾患だったそうですね-

「ちょうどコロナが言われ出したときだったのでそう思った方もいるかもしれないですけど、まったく体調も悪くなかったみたいですからね。2020年の2月22日、23日に下関で『海峡映画祭』でトークショーもあったので、そのときにずっと一緒だったんです。

毎日監督と一緒に飲んで歌って、監督の次回作の話も知っていたし、一緒にアイデアを出したりしながら作っていった作品で、僕はそのなかで歌を歌うことになっていました。

それで、監督が『ロケハンと、地元の方たちともいろんなお話があるので、ちょっと下関に行ってきます』って行って、それで亡くなっちゃったので本当に何が起きたかわからなかったです。マネジャーから電話がかかって来たんですけど、あまりに突然だったので何を言われているのかまったくわかりませんでした」

-升さんは、2015年に公開された映画『群青色の、とおり道』ではじめて佐々部監督とタッグを組んでからすべての作品に出演されています-

「そうですね。年もふたつ違いで近かったですし、監督と俳優の一線を越えた感じですね。『八重子のハミング』のときは、毎日撮影が終わったら監督は家に帰って翌日のお勉強。僕もそうだったんですよね、いっぱいいっぱいで。

劇中の家族みんなが集まるシーンの撮影があるときに前日入りだったので、『家族会をやります』と言って、家族役のみんなを集めて一回食事をしたんですね。そのときに監督にも来ていただいて。それ1回しかできなかったんですけど、そのかわり撮影以外の東京にいるときにはしょっちゅう一緒に飲んでいました」

升さんは10年ほど前から都内にある自宅マンションの隣の部屋も借りて友人や知り合いが集まる場「大衆居酒屋 ますや」を開いていて、佐々部監督も訪れたことがあったという。

「僕が住んでいるマンションはワンフロアに2部屋しかなくて、お隣が引っ越して行ったとき変な人が来るのはイヤだなと思って、借りることにしました。そのときから居酒屋構想はあったんですけど、来るのは後輩の役者とか友人、仲間だけですからね。内輪のパーティーなんですけど、監督も『ようやく来られたよ』って来てくれました。

それで、『大好きな焼鳥屋があるんですよ。今度行きませんか』って誘ってくれて『行きます、行きます』みたいなことが結構あって。『その店で焼き鳥を食べたら、そのままの流れで必ず行くフォーク酒場があるんですけど行きます?』って言われて行ったり。

吉田拓郎さんが大好きで、『フォーク酒場 落陽』 というお店に連れて行ってもらったら、そこはみんな自分でギターを弾いて歌うんですよ。それで『升さんも』とか言われて、何十年も弾いてなかったギターを弾くことになって。簡単なコードの曲を探していたら、お店の名前でもある拓郎さんの『落陽』という曲は覚えていたのでやることになって。

僕がギターをもったらほかのお客さんもギターをもって弾いてくれたり、お店の方がドラムとかベースを弾いてくれてね。やってみたらまあ気持ちよくて(笑)。そこからまたギターをやるようになっちゃったんです。監督が歌うときに僕が横でギターを弾いたりしていましたし。

ふたつしか違わないので、時代も一緒だから好きな曲とかがよく似ていて。新御三家が大好きなんですよ、2人とも。それで、監督は郷ひろみさんを歌って、僕は野口五郎さんが好きだった。でも、西城秀樹さんの歌をよく歌っていましたね。

監督は『「傷だらけのローラ」だけは僕に歌わせてくれ』って言って歌って(笑)。よくカラオケにも行って、2人で『きょうは野口五郎さんの歌しか歌っちゃダメ』とか決めてよくやっていました」

©︎2020映画『大綱引の恋』フィルムパートナーズ

※映画『大綱引の恋』全国公開中
(緊急事態宣言の発出に伴う休館のため一部劇場で公開延期。各劇場での上映日程は、公式サイトでご確認ください)
配給:ショウゲート
監督:佐々部清
出演:三浦貴大 知英/比嘉愛未/中村優一 松本若菜 西田聖志郎 朝加真由美 升毅 石野真子
有馬武志(三浦貴大)は35歳で独身。鳶(とび)の親方で大綱引の師匠でもある父の寛志(西田聖志郎)から、早く嫁をもらって、しっかりとした跡継ぎになれとうるさく言われていた。ある日、ひょんなことから韓国人研修医のジヒョン(知英)と出会い、しだいに惹かれるようになるが…。

◆監督不在は1個ピースが足りてない感じで…

佐々部監督の遺作となってしまった映画『大綱引の恋』が5月7日(金)に公開されたばかり。升さんは三浦貴大さん演じる主人公・武志の父・寛志の親友で、居酒屋「綱ごころ」の店主・中園喜明を演じている。

-『大綱引の恋』に出演されることになったのはどのように?-

「実際に動き出す1年ちょっと前くらいにある映画祭に行ったときに、地元の『大綱引の恋』を作っている方たちに『よろしくお願いします』ってあいさつされたんですけど、実はそのときはまだ聞いてなくて(笑)。『はい、よろしくお願いします』と言ったものの、『あっ、出るんだ』って(笑)。出るだろうなとは思っていたんですけどね。それでそこから正式にお話をいただいて出ることになりました」

-最初に台本を読んだときにはいかがでした?-

「お祭り自体のイメージができなかったんですけど、実際の映像を見せていただいて『何てすごいお祭りなんだろう。それなのに何でこんなに有名じゃないんだろう?』って思いました。

僕は大阪時代に結構岸和田の『だんじり祭り』とかに行っていて、そこに携わっている人たちですらも、『こいつらおかしいよ』という感じで(笑)。全部そっちが優先じゃないですか。すべてがお祭り中心。それで、そうなるだろうなというのもわかるお祭りだったし、そこに地元の人間として関われることがまずうれしかったですね。

しかも設定が居酒屋のおやじとか言われたら、もううれしくてしょうがない(笑)。役者じゃなかったら、居酒屋のおやじになりたいという人間ですから」

-大綱引の司会もされて-

「はい。実際には綱引きに関わるシーンはなかったんですけど、25年前に僕と(西田)聖志郎ちゃんが一番太鼓と大将をやっていたという設定でしたからね。その扮装をさせてもらえただけでもうれしかったです」

©︎2020映画『大綱引の恋』フィルムパートナーズ

-升さんの大将姿の写真、カッコよかったですね-

「めちゃめちゃ修正していますよ。25年前という設定ですから(笑)。修正して出来上がった写真を見て『おー、すげえ若い』って思いました(笑)」

-お祭りのシーンの迫力にはびっくりしました。実際の映像も使っているそうですね-

「前の年のお祭りを撮っていたんですけど、劇中のお祭りのシーンの撮影のときは、実際のお祭りの6日後だったので、まだ余韻が残っていたんですよね。

撮影に地元の方たちが来て参加してくれていたので、映画なのにものすごい迫力でした。『もう1回お祭りができる』みたいな感じなんですよね、地元の人にとっては(笑)。だからそこに乗っかっていた(三浦)貴大君も(中村)優一君も、そりゃあもうよかったですもん。むちゃくちゃよかったですよ」

―あのお祭りのシーンは、結果次第では台本が変わるかもしれないということだったとか-

「そうです。上方、下方どっちが勝つかというのは決められないということでしたからね。あのときは台風も来ていましたし、結構いろんなことがあって大変でした。

『綱練り』と言って、毎年綱を何千人かで練るんですけど、雨で縄が濡れているから例年よりも重くなっちゃうんですよね。それが大変だったという話を聞いて、よく撮れたなあって思います。やっぱり監督のエネルギッシュなことがすべてですね。助監督がやることも監督が全部やっていましたから。『こっち、こっち、はい、よーい、スタート!』って(笑)。

子どもたちも自分のお父さんたちが通っているのを応援するんだけど、監督は自分を指して『お父さんだから、お父さんだから』って自分を見せながら進ませて撮って、それで次にいくみたいな感じで。そうじゃないと全然間に合わなかったですからね。『本当にすごいなあ、この監督は』って思いました」

-監督が亡くなる前に編集はすべて終わっていたのですか-

「終わっていました。2020年の1月に役者もみんな集まって、みんなで試写を見て、2月の海峡映画祭ではこの作品の宣伝もバンバンやりました。それで、監督がチョロっと先走って『実は次も下関と門司とで撮るんですよ』って次回作のことも言っていたんですけどね。

なんか複雑なんですよ。やっと全国展開で皆さんに見てもらえるという喜びはあるんですけど、監督がいないんだよなあって思うと、何か1個ピースが足りてない感じがあって…。今までは関わった作品すべて一緒に宣伝もなんでもやってきていたので、その本人がいないということに今ちょっと違和感があるというか、複雑です」

-次回作の準備もされていたということですし、もっともっと映画を撮ってくださる監督だと思っていたので残念です-

「そうなんですよね。だからその準備をしていたものもそうですし、それ以外にもひとつ監督とちょっと話を進めていたものもあったりしたので…。

でも、『大綱引の恋』の撮影は鹿児島で、何らかの形でみんな監督とは飲めたりもしたし、僕のいる『綱ごころ』というお店が溜まり場になっていて、そこに撮影が終わるとみんな来ていたしということもあったので、そういう意味ではあれがお別れだったのかなと思えば、思えるかもしれないです」

-いろいろな役柄を演じていらっしゃいますが、今後はどのように?-

「僕は来るもの拒まずなので、昔からそう言っているんですけど、『次は何が来るかな? どんな話が来るんだろう? どんな役が来るんだろう?』とかいうことをいつも楽しみにしているタイプなんです。なので、これをやりたいとか、あれをやりたいというのはそんなに思わないんですけど、舞台も基本的にずっと続けていますしね。

ここ何年かは丸2年空いたりとか4年空いたりとかしながらですけど、舞台をやらないとなまっていく感じがするんです。舞台をやると稽古期間も長いですし、そこでいろんなことが試せるので、そこでまた新しいものが入ってくるという感じがします。何かそういうのが染み付いているので、しばらく舞台がないと不安になりますね。ただ、今はひさしぶりに映画をやりたい、映画の現場に行きたいなと思っています」

180センチの長身でスリムなプロポーションにロマンスグレーの升さんは、イケおじの代表格。ピアスと指輪も絵になる。コロナ禍でエンタメ業界もまだまだ大変だが、ドラマ、映画、舞台でさらなる活躍を楽しみにしている。(津島令子)

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