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脚本家・大石静、恋愛ドラマのヒロインに託す”女性への夢“「自分の力でしっかり生きてほしい」

4月30日(金)にスタートした金曜ナイトドラマ『あのときキスしておけば』。

本作は、松坂桃李演じる主人公が恋をしたヒロイン(麻生久美子)が突然事故で亡くなってしまい、中年のおじさん(井浦新)に魂が入れ替わってしまうという衝撃の”入れ替わり“ラブコメディー。

完全オリジナルとなる脚本を手がけるのが、脚本家の大石静だ。

大石氏が脚本家として本格的にデビューを果たしたのは1986年。以降、『長男の嫁』(TBS系)、『ふたりっ子』(NHK)など数々のヒット作を生み、近年は『セカンドバージン』(NHK)、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)など“恋愛ドラマの名手”として名高い。

テレ朝POSTでは、大石氏にインタビュー。前編となる今回は、今作『あのときキスしておけば』の見どころはもちろん、ラブストーリー作品を作るうえでのこだわりを聞いた。<取材・文 横川良明>

◆“恋愛ドラマの名手”と呼ばれるのはすごく困る(笑)

――今回の「死んだ彼女の魂がおじさんに乗り移る」という大枠は、貴島彩理プロデューサーのアイデアだそうで。

そうです。今回は、完全に貴島さんの企画です。主人公の桃地(のぞむ)という名前も決まっていたし、桃地がスーパーの青果売り場に勤めていて、ヒロインの(唯月)巴が漫画家という設定もすでに決まっていて。聞きながら、よくこんなこと考えるなあと思っていました(笑)。

――大石さんの場合、自分のアイデアからつくるケースと、今回のようにプロデューサーのアイデアをもとに書いていくケースでは、どちらが多いんですか。

テレビドラマってみんなでつくるものじゃないですか。脚本を書くということは、小説家のように、たったひとりの自己表現ではない。私が書いた台詞を誰かが喋り、誰かが演出し、どんな衣装を着るかによっても全然違ってくるので、毎度共同作業であることに変わりはないです。

ただ、他の場合は、おおむねラブストーリーでいくとか、ホームドラマでいくとか、もっと漠然としたイメージがあって、依頼を受けてからプロデューサーと一緒に内容を考えていくスタイルが多いのですが。今回に関しては、お話をいただいたときにはすでに相当イメージができあがっていましたね。

――大石さんと言えばよく“恋愛ドラマの名手”と言われていますよね。

それ、すごく困るんです(笑)。私、今までホームドラマも時代劇も刑事物も何でも書いているのに、なぜか最近そう言われちゃって。今回もそう書かれていたし(笑)。

――私も『ふたりっ子』のイメージがあったから意外でした(笑)。

私もそっちで売っていたんですけどね(笑)。10年前に『セカンドバージン』が話題になってから、ラブストーリーの依頼が多く来るようになって。もちろんありがたい話ですし、オーダーされれば、それに応えたいと思って精一杯やります。

◆現実にはない夢を提供するのが、ラブストーリーの役割

――今回もラブコメですが、大石さんの考える「いいラブストーリー」のポイントは何でしょうか。

私の技としては、男にどう夢を託すかですね。特にラブストーリーの場合、多いのは女性の視聴者。だから女性から見て、夢がある男が出てきた方がいいと思っています。『大恋愛〜僕を忘れる君と』のムロツヨシさんや『知らなくていいコト』の柄本佑さんの役もそう。とにかく徹底的に女を守り抜く、絶対に現実にはいない男です(笑)。

もちろんドラマはリアルじゃなきゃダメなんですけど、この世あらざる夢もなくちゃダメで。その両方をうまくミックスするのが、私のラブストーリーのやり方だと思っています、

――特にそういう男性が希少になってきたから、ますます価値を感じるんでしょうね。

今は男が肉食じゃないですから、あんまり女に言い寄らないし。女も女で仕事の方が面白いということが多くて、生き物としての欲望が薄い時代じゃないですか。だからこそ、ドラマくらいは夢を見たいし、現実にはない夢を提供することが、ラブストーリーを書くときの私の仕事だと思っています。今期、ラブストーリーがすごく多いのは、そこに需要があるんだってみんなが気づきはじめたからなんじゃないですか。

――ほんの少し前までは“恋愛ドラマ冬の時代”なんて言われていましたが。

みんなが恋愛しないんだから、ラブストーリーをやったって誰も興味ないと言うプロデューサーもいっぱいいました(笑)。それこそ『セカンドバージン』をやったときなんて、全然ラブストーリーがなくて。そんな中であれをやったことで、ラブストーリーに飢えていた中高年の方が飛びついたし、若い人も男性も観てくれた。あのときから、私はラブストーリーに需要があると確信していましたし、みんな大事な需要を外しているなと思っていましたけど。

ただ、今話したのは、私のいつものパターンであって、今回のドラマに関してはまた違うんです。

――というのは、どういうことでしょう?

桃地は、貴島さんがつくったキャラクター。貴島さんのおっしゃる「ポンコツ」なんていうのは、私がゼロからつくるドラマだったらあんまりやろうとは思わないキャラかもしれません。でもこの作品は貴島さんの企画なので。彼女の感性では、こういう男が可愛いんだなって。私はそれについていくつもりで、「へえ〜」と言いながら、貴島さんのおっしゃるアイデアをいろいろ取り入れていきました。

――実際に書いてみてどうでしたか。

それがね、書き出すとどの人物も愛おしくなるので。今は愛おしいですね、桃地のことが。

――それこそポンコツキャラに、大石さんならではの夢を見る部分もプラスしたりするんでしょうか。

もちろんです。桃地は、毒がないいいやつじゃないですか。そして、(麻生久美子演じる)蟹釜先生を一途に愛している。松坂桃李さんみたいなシュッとした可愛い男の人が、一途に愛してくれるなんていうことは現実にはないわけじゃないですか(笑)。そこの夢は同じです。男のキャラクターはいつもの私の作品とは違うけれど、愛される夢は同じですね。

◆台本は「土台」。決定稿になったら、あとは何も言わない

――ぜひ松坂桃李さんについてのお話を聞かせてください。

松坂さんの芝居は密度が濃いと感じます。何もやっていないふうに見えて、ひとつひとつのことをすごく考えてやっている。1話の松坂さんの計算された芝居を見て、なるほど、こういうポンコツキャラが魅力的というのは分かるなと思いました。

いい役者さんがうまく役にハマッたときは、本当によく“動く”んです。キャラクターが動いているのが見えてくるので、私が書くというよりは、むしろその人に書かされているような感覚になります。イマイチな方だと写真みたいに動かないんですけど(笑)。今回の松坂さんは、桃地が動いているのがよく見えますね。

――井浦新さんとは、今回が3回目のタッグです。

過去2回ご一緒したときは、どちらも端正な二枚目で、「……」が多い、情熱を内に秘めているような役だったので、今回はお互いにとって大きなチャレンジだと思っています。

まだ私は1話しか観ることができていなくて。おじさんになった巴が活躍するのは2話以降。だから、2話の新さんを観るのが楽しみなんです。

――そして、麻生久美子さん演じる巴は売れっ子漫画家で、ゴーイングマイウェイな性格です。桃地との関係が完全に“女性上位”なのが今っぽいなと思いました。考えると、『大恋愛〜僕を忘れる君と』でも、ムロさんは一途に守ってくれる男性でしたが、戸田恵梨香さん演じるヒロインもサバサバしていて強い女性だったなという印象です。

そこが、私のもうひとつの夢なんです。これはあくまで私の考えなのですが、男の人に食べさせてもらっている良いお母さんというものにあまり夢を感じなくて。

それよりも女の人には自分の力でしっかり生きてほしいし、こうなりたいという目標を実現しながら颯爽と生きている女の人がカッコいいなと思っています。だから、毎回そういうふうになっちゃうんですね。今回もそうだし、戸田さんや『知らなくていいコト』(日本テレビ系)の吉高由里子さん、『家売るオンナ』(日本テレビ系)の北川景子さんの役もそうですけど。

――その中で、女性の愛らしさというのも意識しますか。

そこは特別に意識しないですかね。結局、役というのは演じる方の持ち味が自然と出てくるものなので、あんまりちょこちょこ書き込まない方がいいというか。麻生さんに演じていただくことによって、きっと麻生さんらしい可愛らしさが出てくるだろうし、私の思ってもいないような強さも出てくるだろうし。監督がどう導くかによっても、まったく違うものが見えてくると思うんです。

――あまりご自身から現場にこうしてほしいとオーダーすることはないですか。

ないです。決定稿になったら、言いたいことがあっても口はつぐむのが私のポリシー。いちいち気にしていたら逆にやってられないので。どうしてもというところは、プロデューサーを通して俳優さんや監督さんに伝えてもらいますけど。行ってらっしゃいという感じで送り出したら、私から手が離れたと思って、あとはあんまり何にも言わないですね。

台本の「台」は土台の「台」。土台がしっかりしていないといい家は建たないから、大事なところを担っている自負はあるけど、そこにどんな家を建てるかは監督やスタッフ、俳優さんの力によるところが大きい。決して私だけのものではないという思いは常に持っています。

――みんなでつくるのが、ドラマの楽しさであると。

そうです。私が書いたものがどう料理されるか。たとえ思ったものと違っても、それを喜びとしないとこの仕事はできないし、そこが私たちの仕事の楽しいところ。「こう料理されるの?」という不満と喜びの両方があるところがスリリングで楽しいんです。

※番組情報:金曜ナイトドラマ『あのときキスしておけば』第2話
2021年5月7日(金)よる11:15~、テレビ朝日系24局(一部地域で放送時間が異なります)

※『あのときキスしておけば』最新回は、TVerにて無料配信中!

※過去回は、動画配信プラットフォーム「TELASA(テラサ)」で配信中!

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