「自分にイライラする」坂本花織、“涙”のシーズンから逆襲へ。コロナ禍に挑んでいたジャンプ改革
4月15日(木)に開幕する「ISU世界フィギュアスケート国別対抗戦2021」。
世界6か国からトップスケーターが集い、男子シングル、女子シングル、ペア、アイスダンス4種目の総合成績で争う同大会は、まさに“フィギュアスケート最強国決定戦”。新型コロナウイルス感染拡大後、日本ではじめて開催される世界大会としても注目を集めている。
大会に出場する日本チームのなかで、期待の選手のひとりが女子シングルの坂本花織だ。
2018年の平昌オリンピック代表に17歳で出場をはたしたシンデレラガールは、リンクの外でもはじける笑顔でファンの心をひきつけ、一躍フィギュア界のニュースターとなった。
しかし、さらなる成長を求めるなかで大きな壁に直面し、壁を乗り越えるためにもがき苦しんでいた。
4月4日(日)深夜放送のテレビ朝日のスポーツ情報番組『GET SPORTS』では、フィギュアスケーター・坂本花織の成長を追った。
◆得意のジャンプが不調「自分にイライラする」
2017年、高校2年生でシニアデビューをはたした坂本。
高さと幅のあるダイナミックなジャンプを武器とし、とくにコンビネーションでは大きな加点を引き出すことができる。この武器を使い、デビュー直後から並みいる強豪と渡り合った。
オリンピック代表の座をかけた2017年の全日本選手権では、2位という好成績で荒川静香以来となるシニア1年目でのオリンピック出場を決める。
オリンピック本番でもその勢いは衰えず、自己ベストをマークし、6位入賞という大健闘。
その後の2018年シーズンもグランプリファイナルに初出場、全日本選手権では初優勝と、右肩上がりの成長曲線を描きつづけた。
しかしシニア3年目の2019年、大きな壁にぶち当たる。
グランプリシリーズの2大会で得意のジャンプのミスが相次ぎ、表彰台を逃す“明らかな異変”。連覇を狙った全日本選手権でもジャンプのミスを連発し、シニア転向後ワーストの6位に終わった。
「なにが原因でこんなに去年と違う状況になってしまったのかなって…。去年はダメだった試合の次はどんどんよくなっていくようにしていたんですけど、今年はそれができなかったので、気持ち的にも乗ってなかったと思います」(坂本)
一度狂った歯車はなかなか噛み合わなかった。練習ではコーチに檄を飛ばされ、ふがいない自分に涙を流したことも。
「『全然できてない』ってなって、できてない自分もすごく嫌になって。何が何かも分からなくなって、自分にイライラする」(坂本)
◆不調の原因は身体的なバランスの変化
坂本が直面したジャンプの不調について、トリノオリンピック金メダリスト・荒川静香は、自身の経験も踏まえ、こう推察する。
「ジャンプは本当に繊細なもので、女子選手誰もが経験すると思うんですけど、ちょっとした体形の変化だったり、バランスが変わることによって、力の使い方や跳び方が自分のなかで通用しなくなるときがあるんです」(荒川)
少女から大人の女性への成長の過程で、女子選手に影響するという身体的なバランスの変化。
このシーズンの坂本を振り返ってみると、得意としてきたコンビネーションでバランスを崩し、セカンドジャンプで転倒するケースが多く見られた。荒川はさらに解説する。
「気持ちが焦ったりすると上半身を先に締めてしまって、下半身がついてこないことがほとんど。気持ちと感覚的に近い部分だから。上半身も下半身もうまく連動させることが効率よくジャンプできることにつながっています。自分の今の状態を把握して、それにあった跳び方を見つけていかなければいけない。そこはすごくスケーターって難しいところだと思うんですけども、常に自分の状態と向き合っていかなければいけない」(荒川)
そもそも繊細な技術であるジャンプを、身体の変化と折り合いをつけながらいかに操っていくのか。
大きな課題を抱え、坂本が迎えた2020年。新型コロナウイルスの影響による活動自粛期間が、思いがけない転機となる。
◆コロナ禍の自己改革が転機に
「滑れないのは不安だったんですけど、変えるチャンス、いいきっかけにはなったかなと思います。そこでしっかりイチから鍛えなおしたり、ジャンプの軸を作るためのトレーニングをしました」(坂本)
自粛期間中はリンクでの練習ができなかったため、それまで週2時間ほどしかやってこなかった陸上トレーニングを30時間まで増やし、自分自身と向き合いながら鍛え上げた。
6月、自粛期間が明けてリンクでの練習が再開すると、コーチが撮影した動画を見ながら身体の使い方を細かく確認する。あらたに得た身体のバランスを、ジャンプ動作へと馴染ませていった。
すると、坂本にある変化が訪れる。
「(ジャンプが)ダメなときといいときの違いがわかるようになってきました。ちゃんとした位置に体を持ってくれば跳べるとわかってきたので、去年の不安がだいぶ解消されて、考えるようになりました。行き当たりばったり感がなくなったと思います」(坂本)
◆ “コントロールして跳ぶ形”で復活の優勝
そしてコロナ禍という困難のなか、ようやく迎えた11月のNHK杯。
ショートプログラム首位発進をはたした坂本は、合計7本のジャンプを予定するフリーに挑んだ。
大切な冒頭のジャンプを見事に成功させると、その後もスピードに乗った演技を展開。演技後半の3連続ジャンプもしっかりと決めた。
さらに、表現力でも観客を魅了。自らの身体を最後まで完ぺきに操り、復活を印象づけるグランプリシリーズ初優勝をはたした。
「去年すごく悔しい思いをしたぶん、今年はそれをしっかり晴らそうと自粛のときから(思っていました)。今キツイけど試合のときに笑顔になれるようにがんばろうという気持ちで日々やってきたので、それが今日こういう形で発揮できたのでうれしいかぎりです」(坂本)
この演技を間近で見ていた荒川も、高く評価した。
「ジャンプの大きさ、跳んだ後の流れが非常によく、そこで加点がグッと伸びる。スピード感あふれる大きなジャンプが目立っていたかなと感じました。跳んでいく角度や踏み切るタイミングも、感覚よりコツというんですかね。自分のなかで成功パターンをしっかりと導きだして、“コントロールして跳ぶ形”に変えたのかもしれないですね」(荒川)
2大会連続の代表を目指す北京オリンピックまであと1年。女子フィギュア界を席巻するロシア勢を追い、坂本がふたたび世界のトップ争いに加わろうとしている。
「2019年と比べたら、だいぶ(ロシアとの)差が縮まっているといえば縮まっているので、プラスアルファでできたらいいところまで点数を詰められるのかな」(坂本)
復活した今シーズン。締めくくりとなるのは、4月15日(木)から行われる国別対抗戦だ。
自分自身と向き合って大きな壁を乗り越えた坂本が、チーム日本の一員としてどんな戦いを見せてくれるのか、その活躍に注目したい。
※番組情報:『世界フィギュアスケート国別対抗戦2021 presented by SHISEIDO』
◆地上波
4月15日(木)よる6:30~ 男女ショートほか(一部地域を除く)
4月16日(金)よる8:00~ 男子フリーほか
4月17日(土)よる6:56~ 女子フリーほか
4月18日(日)よる9:55~ エキシビション
◆ABEMA
4月15日(木)ごご3:05~ アイスダンス リズムダンス
4月15日(木)よる6:30~ 男女ショートほか
4月16日(金)ごご3:20~ ペア ショート、アイスダンス・フリーダンス
4月16日(金)よる8:00~ 男子フリーほか
4月17日(土)ごご3:15~ ペア フリー
4月17日(土)よる6:55~ 女子フリーほか
◆CSテレ朝チャンネル2(全選手・全競技・会場音のみで放送)
4月29日(木)あさ7:00~ 開会式、アイスダンス リズムダンス、女子ショート
4月30日(金)あさ7:00~ 男子ショート、ペアショート
5月1日(土)あさ7:00~ アイスダンス フリーダンス、男子フリー
5月2日(日) あさ7:00~ ペア フリー、女子フリー、エキシビション
◆テレ朝動画LIVE配信(有料)
4月15日(木)あさ8:30~ 公式練習、開会式、アイスダンスリズム、男女ショート
4月16日(金)あさ9:00~ 公式練習、ペアショート、アイスダンスフリー、男子フリー
4月17日(土)あさ10:00~ 公式練習、ペアフリー、女子フリー、表彰式
◆ライブビューイング(全国の映画館でLIVE上映)
4月18日(日) ごご2:00~5:00 エキシビション