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「一回くらい暴れてみようと」日本ハム・栗山監督、就任1年目を振り返って取り戻した“初心”

3月14日(日)深夜放送の『GET SPORTS』では、監督10年目を迎える北海道日本ハムファイターズの栗山英樹がゲスト出演し、番組ナビゲーター・南原清隆と対談した。

かつては南原とともに『GET SPORTS』のナビゲーターを務め、日本ハムの監督に就任してからは、取材を「受ける側」として幾度となく番組に登場してきた栗山。

今回は、就任1年目に出演したVTRを見ながら南原と当時を振り返り、今季に懸ける想いなどを語った。

テレ朝POSTでは放送内容を編集したうえで、対談の模様を前後編に分けてお届け。後編となる本記事では、「栗山野球の変化」「打倒ソフトバンクの秘策」などに迫る(前編はこちら)。

◆「勝たせてあげたい」思いがもたらした栗山野球の変化

これまでの監督生活を振り返り、選手の言葉の受け取り方などさまざまな変化があったと実感している栗山。

栗山自身の意識もまた、この9年で大きく変わったという。

栗山:「1年目はコーチによく言われたんです。『監督、ムチャクチャやっていいですよ』って。その通り、1年目はムチャクチャな野球ができました。でもここ何年か僕が苦しんでいる姿を見て、『野球を大事にしすぎじゃないですか』と言われます。というのも、野球のセオリーとして、こんなことしたら負けるっていうことあるじゃないですか。たとえば、満塁で外野フライを打たないとか、こんな場面では盗塁させないとか。でも前半までの野球は結構ムチャクチャしても勝敗には直結しないケースが多いってコーチも感じたらしくて、『あんなに1年目ムチャクチャしたんだから、自分のやりたいことをもっとやったらどうですか』って 」

南原:「なぜムチャクチャできなくなってきたんですか?」

栗山:「やっぱり勝たせてあげたいという気持ちがある。最初は『ただ勝てばいいのか?』『この選手の将来の方が大事だろ』と思っていたんです。今ももちろんその気持ちはあるけど、人間ってひとつの方向に行くとそこに集中しすぎるときがあるじゃないですか。勝たなきゃいけないと意識しすぎて、プロ野球の監督が陥りがちなツボに完全にハマった。コーチからその言葉をかけられたとき、『俺って弱いなぁ。結果に引っ張られている俺ダサいなぁ』と感じました

監督として過ごした9年。選手に勝たせてあげたいという思いと、チームに義務付けられる勝利。その狭間で、自らの考え方の変化に葛藤を感じていた。

◆忘れてはいけない“初心”

つづいて、2012年の日本シリーズの映像を見ながら、栗山は南原と当時を振り返った。

第1戦は、シーズン14勝をマークしたエース吉川が巨人打線に捕まり、力を発揮することができず、4回4失点でノックアウト。大事な初戦を8対1で落とすことになった。

つづく第2戦も完封負けを喫し、ホーム球場に移動して行われる第3戦の前。監督室には、みんなで戦おうと思いを込め、選手たちにもらったバットがずらりと並べられていた。

「今年戦ったメンバーというのは、本当に生涯忘れられない大切な仲間だから。それだけに絶対に、みんなにいい思いをしてもらうんだって」(栗山)

そこからチーム一丸で臨んだ日本ハムは、逆襲に出る。第3戦は7-3で快勝、つづく第4戦は延長12回の攻防の末、守備でチームを支えてきたベテラン・飯山裕志の一打でサヨナラ勝ち。

しかし、第5戦で敗れ、巨人に王手をかけられて第6戦を迎えることに。4番・中田翔のホームランなどで得点を重ねるも、勝ち越し点を許し、セ・リーグ王者巨人の前に、惜しくも力尽きた。

その翌日、栗山はカメラの前で本音を漏らしていた。

本当に悔しいけれど、とりあえず終わったという感じかもしれないですね。はじめてやる監督っていうのは不安の方がものすごく大きかったし、『まともに1年間終えられるんだろうか?』みたいな不安までありました。

コーチ、選手、スタッフががんばってくれてやることができたので、本当に感謝しています」(栗山)

栗山は、監督1年目の当時の状況を振り返り、忘れてはいけない“初心”をいま思い出したという。

栗山:「たぶん死ぬときに一番疲れた1年間は?と聞かれたら、この1年間です。あれだけ必死になっている。このくらい、もっと必死にならなきゃと思いました。

何もわからなかったから難しかった。先もわからないんだったら、今日だけはがんばったねっていう1日にしようと。本当にいろんな経験をさせてもらいました。

ただ、やはり勝たなきゃいけないですね。去年いろんな思いがあったし、今年のシーズンをやると決めるときもいろんな思いがあった。もう1回、1年間必死になろうと思いました。いいVTRですね (笑)」

◆ライバルへの想い「ホークスしか見てない」

栗山が監督となり、はじめて日本一になったのは、就任5年目の2016年。だが翌年からは、同じパ・リーグのソフトバンクが4年連続で日本一に輝き、圧倒的な強さを見せている。

南原:「パ・リーグでソフトバンクに勝つのは難しいですか?」

栗山:「僕の一番嫌な試合が9年間の中で2回あって、2012年と2016年のクライマックスシリーズ(CS)でのソフトバンクとの試合。『ウソでしょ』って思いましたから。こんなに苦労してきてここまできたのに、もう1回ホークスに勝たなきゃいけないのはズルいでしょと。

絶対的な力がある。僕らはずっとホークスしか見ていません。強いのはわかっているけど、だからこそやりがいもあるし、なんとかやっつけようと知恵も生まれる。なかなかうまくいかないですけどね」

南原:「日本ハムと明らかに違うのは、育成の選手の数。ソフトバンクは3軍制度も敷いていて、試合数も多いですよね?」

育成出身の選手が主力として活躍を見せているソフトバンク。現在もパ・リーグ最多22人の育成選手を抱え、チーム内での競争を促している。

一方、日本ハムは育成での指名をはじめたのが2018年からともっとも遅く、現在も育成選手は8人とパ・リーグでもっとも少ない。

栗山:「試合に出ているのは10人なので。それでもやり方があって、2016年のように抜けたシーズンもありました。僕は絶対それを言い訳にしたくないし、『絶対に勝てるんだ!』と思っています。やり方があるって」

南原:「どんなやり方があるんですか?」

栗山:「たとえば二刀流を選手全員に導入する。2プランにして1日おきにレギュラー変える。ムチャクチャ言ってますけど、そのぐらいのことを考えないとこのまま終われない

◆9年たってあらためて感じる「野球のおもしろさ」

2011年シーズン後の「ファンフェスティバル」、栗山はファンへのはじめての挨拶でこんな約束をしていた。

「北海道のこの時期、空には雪が舞います。優勝パレード、色とりどりの紙吹雪で北海道の大地を埋めたいと思います」(栗山)

2012年、リーグ優勝でこの約束を見事にはたした栗山は、シーズン終了後のオフにそのときのよろこびをこう語っていた。

「優勝して、ビールかけや胴上げなど色々やりましたが、一番はパレードでしたね。

その日は朝まで雪で、ちょうどパレードの時間は晴れるという予報だったんですが、(北海道エリアの)全局が天気予報で『晴れ時々紙吹雪』と言ってくれました。それは本当に感動しました。

パレードで『1年間ありがとう』と声をかけられたときは、ウルっときましたね。一生懸命やってきてよかったなって。そういう思いが伝わっていたし、少しでもよろこんでくれる人がいたということがあらためて分かって、本当に幸せな瞬間でした」(栗山)

そしてこの後、南原に「野球のおもしろさ」について聞かれた栗山は、選手への並々ならぬ思いを吐露していた。

栗山:「野球もそうなんですけど、人ですね、やっぱり。実際には泣いてないですけど、144試合、何回涙出てきたか。あんなに苦労していた選手が、ここでこんなことをするんだって。

監督の仕事ってもちろん大変な部分はありますけど、こんなに感動させてもらえる仕事に就かせてもらうのは、ありえないくらい幸せなことだと思わないといけないと思います

就任1年目に出演したVTRをすべて見終えた栗山は、当時も今も変わらない、選手への特別な思いを語った。

栗山:「先ほど映っていた選手は、今は一人もいないですね。一番重要なのは、彼らにとってファイターズで野球やってよかったなと思って、人生歩んでいってほしいと。

そのお手伝いが一番大切な僕らの仕事なので。勝たなきゃいかないですけど、そう思ってくれていたらいいな、と思います。

でも今考えたら、この1年目があったから今野球やらせてもらってるんですね。それを思い出しました」

南原:「野球は何がおもしろいのか?あれから10年経ちましたが、もう1回聞いてもいいですか?」

栗山:「うまくいかないから、思った通りできないからおもしろいんですかね。とくに今は監督という立場で、自分がプレーするわけではないので余計難しいです」

南原:「うまくいかないとわかったうえで進んでいく感じですか?」

栗山:「よく人に言われますけど、『人はうまくいかないから努力してがんばれる」。そういうことだと思います。

すべては人間ドラマで、その場所に行くまでに、その人がどんな人生を歩んでいるのか、どんな生活をしているのか…。そのすべてが、行動に出ると思っていて。

『あなたの職業は何ですか?」と聞かれたら、僕は『人間分析官」だと思っていて。

たとえば、どうして、あの選手は今怒ったんだろう?こういう経緯があって、苛立っていたのかなと。そういった心を読み解くと、アプローチの仕方が考えられるかなと思っているので。

何でこの人は、こんな心の動きをするんだろうということばかり考えていますね」

選手一人ひとりの心を読み解く人間分析官として、監督として、選手のために、チームのために。

間近に迫った開幕を前に今、思うことは…。

栗山:「原点に返ろうかなと。感情を含めてそのまま出してみようかと思っています。

悔しさもなにもすべて押し殺してって思っていたんですけど、うれしかったら感動して、悔しかったら悔しがって、悲しかったら泣いて。本当に素のまま野球をもう1回やろうかな。

ベンチの中で選手に絶対暴れるなと言っていますけど、一回くらい暴れてみようと思っています(笑)

番組情報:『GET SPORTS
毎週日曜日夜25時25分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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