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金山一彦、6年の時を経て公開の映画『空蝉の森』を語る。酒井法子の熱演に「女優として完全復活するんじゃないか」

23歳のときに単身訪れたアメリカで俳優として生きていく決意をしたという金山一彦さん。ドラマ、映画、Vシネマに多数出演し、1995年には映画『無頼平野』(石井輝男監督)、『新・悲しきヒットマン」(望月六郎監督)でヨコハマ映画祭、おおさか映画祭(現・おおさかシネマフェスティバル)で助演男優賞受賞。さらにバンド活動に加え、バラエティ番組などで料理の腕前を披露し、芸能界屈指の料理上手としても知られている。

◆濡れ場のシーンで監督からの要求「もっと、もっと」

2020年は、映画『Fukushima50』(若松節朗監督)、映画『BOLT』(林海象監督)が公開に。

-映画の公開が続いていますね。2019年6月には『BOLT』で上海国際映画祭にも行かれて-

「はい。林海象監督と行って、舞台あいさつでは、うちの奥さんに教えてもらった中国語であいさつしてきました。すごくいいところで楽しかったので、また行きたいと思っているんですけど、コロナで行けなくて残念です」

-『BOLT』では放射能漏れを止めるべく奮闘する役でしたが、防護服が結構大変だったみたいですね-

「僕は、防護服はそんなに重いとは感じなかったんですけど、ただ1人では着ることができなくて、5人がかりで着せてもらっていました。だから、永瀬(正敏)さんと佐野(史郎)さんと後藤(ひろひと)さんとみんな座って、それぞれ5人がかりで装着してもらっていました」

-昔10代の頃、「スクリーンにアップで映ったらかっこいいやろ」ってお母さまに言っていたことが現実になっていますね-

「お恥ずかしいですけど(笑)。でも、今はアップより引きのほうが好きですね。トンネルをシルエットで歩いていて、顔は見えないんだけど、『あれは金山だ』ってわかるような存在感のある俳優になることを今の目標にしたいです。顔がアップなんていうよりも。何かそういうふうにスクリーンに影を落とすというか、そういうほうが今の僕の好みですね」

-金山さんは『無頼平野』も印象的でした-

「あれはやっぱり石井輝男監督ですからね。表現方法としてというか、映画の内容もすごかったです。石井輝男監督も」

-石井監督の執念を感じますよねー

「現場でもすごかったです。すごく優しいんですけど。僕は『無頼平野』で濡れ場があったんですけど、『金山ちゃん、エレキみたいな男だっていうセリフがあるので、ピリピリちゃんと腰を振ってね』って言うんですよ(笑)。だから『わかりました』って言って、一生懸命やっているんですけど、『もっと、もっと』ってソっとささやくように言うんです。

それで、もう必死でやってるんですけど、『もっと、もっと』って(笑)。カットがかかって、『疲れた?』って言われたので、『いいえ、全然大丈夫ですよ。もっといけます』って言ったら、『じゃあ、もっとお願いします、本番』って感じで。言葉はすごく優しいんですけど、必死でした」

-ものすごく穏やかな話し方をされる監督でしたね。金山さんは『無頼平野』でヨコハマ映画祭の助演男優賞を受賞されて-

「石井監督のおかげです。ヨコハマ映画祭というのがうれしかったですね。やっぱり映画ファンの方が映画をみて投票される賞なので、すごい励みになりました」

©︎『空蝉の森』製作委員会 NBI

※映画『空蝉の森』
2021年2月5日(金)よりUPLINK渋谷ほか全国順次公開
配給:NBI
監督・脚本:亀井亨
出演:酒井法子 斎藤歩 金山一彦 長澤奈央 角替和枝 西岡德馬 柄本明
行方不明になって3か月後、警察に保護された加賀美結子(酒井法子)は帰宅するが、夫である昭彦(斎藤歩)は妻とは別人だと言い放つ。外見も体の傷も妻と同じであるにもかかわらず、昭彦は結子をニセモノだと言い張り、やがて衝撃の事実が明らかに…。

◆酒井法子主演映画が6年の時を経て公開に

-ようやく公開と聞いたときにはいかがでした?-

「やっと日の目を見るときがきたのかと。よかったですよ。人の目に触れるのはいいことですから。酒井(法子)さんもすごく頑張っていらっしゃったので」

-金山さんは失踪人を探すのが趣味のジャーナリストというちょっと不思議な設定でした-

「おもしろかったですよ。刑事とか関係者、いろんな人に会って話を聞きに行くじゃないですか。だから柄本明さんとか角替和枝さんとか、いろいろな方と芝居で絡めて」

-部屋の天井には失踪者の写真がいっぱい貼ってあって不気味でした-

「そうそう。映画自体がこれはもう酒井さんも体当たりで頑張っていたので、上映されたら女優として完全復活するんじゃないかと思っていたんですけどね。そうしたら全然音沙汰なくて、もう公開しないのかなあと思っていたら6年経って公開することになって。まあ、よかったなあってホッとしました。

僕は角替和枝さんとの2人のシーンがすごく好きで、やっている最中も楽しかったですね。今でも鮮明に覚えていますけど、すごい間をもって芝居をやったんですね、お互いに。

セリフの間をもって、ジーッと見ながら、あのシーンは腹の探り合いというか、『何か嘘をついているんじゃないか? こいつは本当のことを言っているかな?』とか、いろいろおもしろいシーンじゃないかなと思います。あまりないような芝居なので」

-角替さんは2018年に亡くなられて…残念ですね-

「そうですね。和枝さんが亡くなったとき、時生(柄本時生=角替和枝さんの次男)は海外で仕事をしていたんですけど、すごい落ち込んでいて…。もう8年ぐらい京都で『大岡越前』(主演:東山紀之さん)をやっているんですけれども、時生もレギュラーで、あのときはLINEでやりとりをしていました。

柄本さんと和枝さんご夫婦は(原田)芳雄さんと仲がよかったので、僕も毎年お会いして一緒に飲んだりしていたんですけどね。

和枝さんも撮影のときにはすごくお元気で、僕とのシーンを撮る前後も、時生の話をしたりしてずっとしゃべっていたので、まさかという感じでした」

-お元気な方でしたし、まだ若かったですからね-

「そうですね。柄本さんが寂しいんじゃないかと思って。いろいろな作品に出ているのは1人でいるのが寂しいからですよ。仕事をして忙しくしていたほうが紛れるからだと思います。ツライです」

◆誰もが絶賛する料理の腕前を発揮、3人の子どもたちのイクメン生活

2009年には『金山一彦流チャーハンの極意&おかずの素スペシャル』(実業之日本社)を出版。誰が作っても、味付けが一度でピタリと決まる金山流パラパラチャーハンが話題に。

-お料理を番組でやられるようになったのはいつ頃からですか?-

「僕がどこかでチャーハンの話をしたと思うんですけど、それでタモリさんの番組に出ないかって言われたんです。僕が大好きなセンチュリーハイアット東京の総料理長の山岡(洋)さんと、赤坂離宮の譚(彦彬)さんが審査員で来ると聞いてびっくりして。

僕がすごい好きな料理人なんです。山岡さんや譚さんの料理はとても美味しいしセンスがいいし。だから喜んで出たんですけど、山岡さんと譚さんに褒められたのがすごくうれしかったですね」

-それまでも家でお料理はされていたのですか-

「いえ、そんなにはやってなかったんですけど、その番組に出るにあたって味を見直そうと思って、しばらく特訓しました」

-いろいろな番組で皆さんが絶賛していましたね-

「そうですね。相当おいしいですから、本当に(笑)」

-著書『金山一彦流チャーハンの極意&おかずの素スペシャル』を拝見して驚きました。俳優さんが作っているというより、本当の料理人という感じですね-

「あの本のカメラマンの日置武晴さんは料理の本のプロフェッショナルの方で、『俺の本にこの人呼んだの?』っていうぐらい、僕にとっては3本の指に入るような方なんですよ。すごくきれいに、美味しそうに撮られる方で。その方が撮ってくれたんですけど、3日間かけて料理を作って撮ったんですよ。

その方が、『大体有名なコックさんでも挑戦しちゃうんですよ、何品かは。だから何品かはまずいものがあるんだけど、金山さんのは3日間全部食べたけど全部おいしかった』って言ってくださったのが、お世辞でもうれしかったです。『僕は挑戦してませんから』って言ったんですけど、チャーハン30種類とか、いろいろやっているので」

-こんなに種類があるのかと驚きました。冷蔵庫にあるもので本当にパラパラにおいしくできますねー

「はい。まぁ、考え方としてはおかずをご飯に混ぜちゃうというだけなんですけど、子どもはチャーハンが好きなので。1か月間、毎日違うチャーハンを出されたら子どももうれしいんじゃないかなぁと思って。たくさん野菜も入れたりすると食べてもらえるし」

私生活では、2014年に弁護士の大渕愛子さんと再婚。婚姻届けの証人の欄にはデビュー前から交流があり、芸能界入りのきっかけにもなった吉川晃司さんが署名をしてくれたという。

「僕のほうの証人がもうひとりいないと出せないということで慌てて連絡したらライブのリハーサル中だったようなんですが、メールを送ったらすぐにメールをくれて。『お前、また結婚するのか?』って言われたんですけど、快く署名してくれました(笑)」

-現在は5歳と4歳の男の子、2歳の女の子、3人のお子さんがいらっしゃるんですね-

「はい。年を取ってからの子どもって本当にかわいいなとは思いますけど、やっぱり子どもは若いうちに作ったほうがいいと思います。ものすごくしんどいですよ、毎日。本当に(笑)」

-上2人が男の子ですものね-

「そうなんですよ。今はやっぱり『鬼滅の刃』が流行(はや)っていますからね。刀とかを振り回して危ないし。僕は剣道を10年ぐらいやっていたし、今、時代劇でレギュラーをやらせてもらっていて殺陣もやっているので、教えたりするんですけど、子どもたちはそんなことなんて全然関係ない。

『水の呼吸』とか言ってバンバン刀を振ってくるので、怖くてしょうがない(笑)。危ないんですよ。だから僕はすぐに『パパは休憩』って言って、すぐに休憩しています(笑)。ものすごく体力がいるんですよ。だから、ほんとに若いうちのほうがいいと思いました。50代はもうしんどいです(笑)」

-お子さんたちのためにご飯を作ってあげたりは?-

「やっています。家でごはんは僕しか作らないので。うちの奥さんは仕事が忙しいのもありますけど、レパートリーが少なくて何種類かしか作れないんですよ。僕が撮影で京都に行ったりとか、地方ロケのときには何かよくわからないものを作っていますけど(笑)」

◆子どもたちのパワフルな体力に「パパ休憩」

2020年、コロナウィルス感染拡大防止のため、約2か月間の緊急事態宣言が敷かれ、ドラマ、映画の撮影や劇場公演も中止、延期を余儀なくされたが、その間はずっとお子さんたちと一緒に過ごしていたという。

「ステイホームでほとんどずっと子どもたちと家にいましたが、子どもたちもストレスがたまってくるので、深夜にドライブに連れて行ったりしていました。トイレ以外は車からは降りずに、『景色をたくさん見なさい』って言って」

-お子さんたち喜んだでしょうね-

「どこにも出かけられませんでしたからね、すごく喜んでいました。それに車でドライブに連れて行くと、子どもたちが早くに寝てくれるんですよね。それが非常によかったです(笑)」

-2020年は手術もされたとか-

「はい。腸ヘルニアで、7月30日に入院して31日に手術で、全身麻酔をはじめて経験しました。実家の近所に病院の先生がいて、その先生が手術してくれたんですけど、穴を三つ開けて腹腔鏡手術でした。

『なんや、うちの近所やないか』なんて言っているうちにクーッて寝ちゃって(笑)。気がついたらもう病室でしたから、『全身麻酔って怖い』って思いました。

腸ヘルニアは筋力の衰えなどからなるみたいなので、ステイホームの間の運動不足と年齢もあるかもしれませんね」

-以前、脳のご病気もされたと聞きましたー

「椎骨(ついこつ)動脈解離もありましたね。6年前に。首の左右を通り脳に血液を送る椎骨動脈が損傷して倒れたんですけど、それももう大丈夫です。でも、5年にいっぺんぐらい、頭痛はたまにくるんですけど、それを改善するためにいろいろトレーニングをやったりしています」

-年が明けたばかりですが、2021年はどんなふうに?-

「今年は今までやろうやろうと思ってできなかったこと、できなかったというか、サボっていたんですけど、そういうことをやろうと思って。去年からちょっとはじめているんですけど、ハリウッドの芝居のコーチングを学びたいと思って。僕の後輩がそれを紹介してくれたので、それをズームで今、やっているところで、きょうも朝やってきました」

-ズームでレッスンを受けるということですか?-

「そうです。アジアのマスタークラスといって50人ぐらいいるんですけど、50人集まって、そのなかで週に1回、いろんな方が自分で台本を用意してそこで芝居をしてズームでコーチングを受けるんです。それと、英会話をちゃんと基本からやろうと思って、ズームでオンラインの授業を申し込んでやっている最中です。

まずは毎日英語で日記を書く。間違っていてもいいからとにかく書く。それをやって、今日覚えた単語を書き出したりしています。とにかくコロナ禍では去年から新しいことにチャレンジするということで、やっているところです」

ドラマ、映画の撮影に加え、6月にはコロナの影響で延期になった舞台公演も控えているという金山さん。仕事と子育てに忙しい日々が続く。(津島令子)