『相棒』の大ファン・麻木久仁子が大好きな登場人物。ニュースを見ると「小野田公顕さんが頭に浮かぶ」
2000年に土曜ワイド劇場の作品としてスタート、2020年に誕生から20周年を迎えるドラマ『相棒』。
11月11日(水)には、最新シリーズの『相棒season19』第5話を放送する。
また、同作20周年を記念し、「『相棒』20周年記念インタビュー企画」と題したインタビューを実施。“『相棒』ファン”を自称する著名人が同作との出会いや、熱い思いについて語っている。
今回は、タレント・麻木久仁子のインタビューの模様を紹介する。
「再放送を家にいるときは見て、仕事などで留守のときは録画してチェックしています。週5回は見ているっていうね(笑)」と笑顔で語る麻木。そんな彼女に『相棒』の魅力について訪ねてみた。
麻木久仁子(以下、麻木):「『相棒』は、何度見ても飽きないんですよね。刑事ドラマですけど、基本的には人間ドラマ。だから、犯人探しや謎解きだけが魅力ではないんです。
登場する人物たちを毎回魅力的に描いているので、おもしろいんですよね、すごく。
セリフのやり取りの機微だとか、『ここでこんな仕草をしていたのか!』という発見が何回見直してもあります。好きなエピソードは、10回くらい見ていますね。本当に飽きないんですよ」
そんな『相棒』ファンの麻木に、同作との出会いについて聞いてみた。
麻木:「そもそも2時間ドラマが大好きで。いわゆる“土ワイファン”(『土曜ワイド劇場』のファン)なんですよ。
だから2時間ドラマはとくに見ていて、『相棒』のプレシーズンをみたときに『うわ!これは今までの“土ワイ”の枠を打ち破る新機軸だ!』って感じたんです。そこですっかり魅了されて、それからずっと視聴し続けています。
あと『相棒』は、警察官の描き方にリアリティーを感じるんです。それまでの刑事ドラマでは机を『バン!』と叩きながら行う取り調べのシーンや、ドアを蹴破って乗り込んで逮捕するとか、どちらかといえばコミカルだったり、劇画タッチだったりする作品が多い気がしていました。
けれども『相棒』では『令状がないから入れない』だとか、『これは不正な証拠だ』って亀山薫が悔しがるとか、きちんと法律を踏まえながら、証拠をしっかり積み上げて犯人に迫っていく。どのエピソードにも、この筋が1本しっかり通っている。
そうしたなかに、いろいろな人間ドラマがあるのが、すごくいいなと思いました」
そして『相棒』に欠かすことのできない、杉下右京について聞いてみた。
麻木:「右京さんは“法の正義”を体現している人物。少し硬い言い方ですけど『民主主義国家の民主警察って本当はこうじゃなきゃいけないのね!』みたいな(笑)。ときに冷徹なまでに正義を貫き通す、これは作品がはじまって20年変わりません。絶対に迷わないですもんね。それが、右京さんの稀有なところだなと。
先日、久しぶりにプレシーズンのDVDを見直したら、そのときから杉下右京の人物像がほぼ完成していたんです。キャラクター像を変えず、20年間視聴者を飽きさせることなく演じ続けるのってすごいなと思いました。
水谷豊さんの自分で作り上げたキャラクターに対する揺るぎない信念みたいなものがあって。それが杉下右京のキャラクターのもつ信念とマッチしているのが、揺るがないことの理由かなと思います」
そして杉下右京の他に好きな『相棒』の登場人物を聞くと、探偵・マーロウ矢木と特命係“初代・第3の男” 陣川公平の名前を挙げた麻木。さらにもう一人、あるキャラクターの名前が。
麻木:「二度と会えないだろうなと思うんですけど、小野田公顕さんですね。
現実のニュースで、政治に関わる官僚が出てくるじゃないですか。そういうニュースを目にすると、すぐ小野田公顕さんが頭に浮かぶんです。
小野田官房長は、官僚のなかの官僚。隠蔽する気になればガッツリ隠蔽する。そうかと思えば、証人保証プログラムがない日本で、何億円もかけて証人を守りきったということも。正義一本でも、悪一本でもない。是々非々のなかで組織を守りながらも、心の奥にはキラリと光る正義をもっている。
私は、きっと小野田官房長みたいな人が本当にいて日本を動かしてくれているんだ……きっとそうだ!って信じたいぐらい、いち官僚の描き方として、すごいキャラクターでした。
ドラマを見ながら、こういう方が日本にいれば安心なのにな……って思っていたら、(劇中で)殺されちゃったからビックリしちゃいました。
小野田官房長が生き返ることは無いと思うので、過去のエピソードを振り返るような、時間軸をずらしたストーリーで再登場して欲しいですね。
今のような時代に『真の官僚は、こうあるべきだ』っていうのを小野田公顕さんを通じてみせて欲しい。コロナ禍で大変なときに小野田官房長だったらどうするだろうとか。オリンピックが延期に……小野田官房長だったらどうするんだろうとか、そんなことを考えるぐらい。もう一度、登場してほしいキャラクターですね」
そんな麻木に印象に残るエピソードを聞くと「晩夏」(season10 第3話)と、もう一つのエピソード名が返ってきた。
麻木:「『密愛』(season7 第15話)です。
右京さんの大学時代の恩師・悦子を岸恵子さんが演じていらっしゃって。ほぼほぼ岸さんと右京さんのやりとりで、ストーリーが展開していく。
悦子さんは、右京さんが敬愛するフランス文学の先生。2人で文学に登場する恋について、優雅で知的な会話を交わしていると、そのなかから悲しい出来事が浮かび上がってくるんです。
このエピソードで右京さんは、尊敬する美しい女性の横で、正義の人であると同時に、英国仕込みのジェントルマンとして寄り添いながら、悲しい恋の結末を見届ける。真実を突き止めて白日のもとにさらすというよりも、その人が真実と向き合えるように寄り添って、最後まで腕をとって一緒に歩んでいくような……お洒落で、静かな情熱を感じるエピソードなんです。
家で何回も見ているんですけど、何度見ても飽きない。こういう物語が、シーズンのなかに入っているのが『相棒』らしいなと思います」
最後に、今後の『相棒』に期待することを聞いてみた。
麻木:「私がお願いしたいのは、シーズン19、20、21、22、23……と生きている間ずっと続いていて欲しいですね。老後の楽しみになっていただきたいですね(笑)」
※番組情報:『相棒 season19』第5話「天上の棲家」
2020年11月11日(水)午後9:00〜9:54、テレビ朝日系24局