桐山漣、シリアスからコメディーまで幅広く演じわけ…“貞子”&“伽椰子”を制覇!
シリアスな役柄からコメディーセンスを発揮したユニークな役柄まで幅広く演じわける桐山漣(桐山漣の漣はさんずいに連が正式表記)さん。
『おじさんはカワイイものがお好き。』(読売テレビ・日本テレビ系)のワンレンメガネで猫じゃらしを手に「ネコちゃーん」と猫撫で声で迫りまくる姿も記憶に新しいが、ジャパニーズ・ホラーで恐怖の双璧“貞子”と“伽椰子(かやこ)”とも共演をはたし、12月4日(金)には主演ホラー映画『海の底からモナムール』が公開される。
◆ジャパニーズ・ホラーの双璧、“貞子”と“伽椰子”を制覇
桐山さんがはじめてホラー映画に出演したのは、2015年に公開された映画『呪怨-ザ・ファイナル-』。桐山さんは平愛梨さん演じるヒロインの恋人・北村奏太役を演じた。
「『呪怨』シリーズは初回から見ていたので、ファイナルでお声をかけていただいてうれしかったです。
実際にご一緒してみてわかったんですけど、伽椰子の目の芝居がすごくて、怨念のこもった目ヂカラというか、呪いにくるような生々しさが怖かったですね。
僕にとってはじめてのホラー映画だったんですけど、台本を読んだだけでは感じ取れない撮影現場の独特な雰囲気のなかで、役者として新たな挑戦になりました」
-劇中と同じようなシチュエーションになったらどうします?-
「怖がりではあるんですけど、愛する人を守るためだったら立ち向かっていくと思います。そうでありたいですよね(笑)」
2019年には映画『貞子』にも出演。池田エライザさん演じる主人公の先輩の精神科医・藤井稔役を演じ、中田秀夫監督から「細かい注文に感度よくプロフェッショナルに応えてくれた」と絶賛された。
「僕がはじめて貞子を見たときは中学生くらいだったんですけど、『リング』がはじめて見たホラー映画で、当時は本当に怖くて、そのトラウマがいまだにこびりついています。
『貞子』のお話をいただいたときは『ついに来たか』って(笑)。でも、日本の二大ホラーの『呪怨』シリーズと『貞子』、その両方制覇できることってなかなかないんじゃないかと思うので、すごくありがたいことだなって思いました」
-中田監督が桐山さんを絶賛してらっしゃいましたね-
「すごくうれしかったです。監督の演出はすごく丁寧(ていねい)で細かくて、監督の納得のいくラインまで自分を近づけていくことが心地よくなっていました」
※映画『海の底からモナムール』
2020年12月4日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにてロードショー
脚本・監督:ロナン・ジル 配給:アルミード
出演:桐山漣 清水くるみ 三津谷葉子 前野朋哉 杉野希妃
10年前、イジメに遭い、崖から飛び降りたミユキ(清水くるみ)は、タクマ(桐山漣)に「ただ愛されたい」という一心で、17歳のままの姿で海底を漂っている。10年後、高校卒業後はじめて島を訪れることになったタクマたちに待っていたのは…
◆フランス人監督とタッグを組んだホラー映画に主演
-3年前に映画祭で上映された映画『海の底からモナムール』が公開になりますね-
「はい。撮影自体は5年ぐらい前なんですよね。はじめのうちは『まだかな?まだかな?』という感じだったんですけど、だんだん『これはもう公開されないのかもしれないなあ』って思った時期もありました。
だから感慨深いですね。僕としては予想だにしていなかったので、驚きました。僕もうれしいですけど、何よりも多分監督が一番喜んでいるんじゃないかなと思います」
-撮影で印象に残っていることは?-
「ほとんど全部広島で撮影したんですけど、海での撮影があって。自分も海に入るシーンがあったんですけど、ちょうど台風が来た後だったんですね。
流木とか台風で散らかった物なんかがごちゃごちゃあって、海のなかに入るとそれが体に当たって痛いんです。それがすごく印象的でした。ケガはしませんでしたけど、『海のなかってこんなにいろいろなものに当たるんだ』っていう感じで(笑)」
-題材的に言うとホラーですが、現場は?-
「いい現場でした。本当にチャーミングで可愛い監督なので、日本に来るタイミングがあると、撮影が終わってからもご飯を食べたりという交流もありましたし、チームワークはとてもよかったです。
地方にずっと行きっぱなしで缶詰状態だったぶん、結束力が生まれてすごくよかったと思います」
-日本のホラー映画との違いは?-
「日本のホラーというのは幽霊とか、そのものが怖いじゃないですか。『貞子』だったら貞子、『呪怨』だったら伽椰子や俊雄君が怖い。白塗りで髪の毛がかぶさるように下がっていて、ザ・幽霊。みんながホラーものというと想像する幽霊。
だけど、この作品に関してはいわゆるそういう白塗りとかでもないし、どちらかと言ったら、人間に近いのに、やることは幽霊というか…。だから、ちゃんと足も付いているし、半透明でも白塗りでもない」
-でも、写真のシーンなどは怖いですね。ファインダーを覗(のぞ)くとそこにいる-
「そうですね。普通に見てもいないのにファインダーを覗くといますからね(笑)」
-映画のなかでは、いじめられて孤立していた女の子に優しく接したことで愛されすぎるわけですが、こういう女性が実際に現れたらどうですか?-
「どうなんでしょうね(笑)。かなり重たい。重たさで言ったら超ヘビー級ですよね」
-前野朋哉さんの恋人役の杉野希妃さんとは、映画『群青の、通り道』でも共演されてましたね-
「はい。(三津谷)葉子ちゃん以外は過去にも共演したことがある方々で、だいたい感覚もわかるし、呼吸も合うのでやりやすかったです。
共演するのははじめてでしたけど、葉子ちゃんとも息が合いました。みんなほぼ同年代でしたしね」
-浜辺でのローリング・キスシーンが印象的でした-
「あのシーンは結構大変でした。抱き合ってキスしながら海の方に転がって行った後、『はい、じゃあここで浜の方にあがってきます』って言われて(笑)。
『何で?』って思いながら上がって来たんですけど、膝や肘が痛かったです。本編ではカットされていました(笑)」
-何か思い出に残っていることは?-
「広島での撮影だったので、終わった後、みんな一緒に新幹線で広島から東京まで帰ってきたんです。ビールを買って4時間くらいみんなで飲みながら帰って来たので楽しかったです」
◆腐らず続けて乗り越えてこその今がある
主演映画やドラマも多い桐山さんだが、俳優を続けていけるのかどうか思い悩んだ時期もあったという。
「30手前くらいかな? やっぱり仕事がガーッと空く時期がありましたし、役者を続けていけるのかなと思いました。
僕の仕事は選んでもらえないと仕事が成立しない職業なので、そこに関しては、やっぱり食べていけないとダメだし、『この先どうしようかなぁ』と思うこともやっぱりありました。
年表で見ると作品がコンスタントに続いているように見えるんですけど、掘り起こすとやっぱりそういう時期があるんですよ」
-どうやって乗り越えたのですか?-
「僕が最後に懸けた作品というのが『ロストデイズ』(フジテレビ系)というドラマで、『多分、これできちんと結果を残さなかったら声をかけてもらえることがどんどん減っていくだろうなあ』と思ったんです。
それまでは自分の考えが甘かったというのもあったと思うし、作品によって求められている役割に応えきれず、煮え切らないまま期待以上の結果を残せなかった。
多分役者をやっていると、どんな人でも浮き沈みがあると思うんですけど、自分にとってもそう感じたのはこの時期でしたね。
役者の仕事って、何が正解とかもないし、マニュアルや教科書なんてない。孤独でした、自分にとって、そういうことを教えてくれたり、正してくれる先輩っていうのもいなかったので。
だから、すべて自分の肌で感じてきたし、腐らず続けていくということもそこで学びました。
自分の役者人生で、いいときも悪いときも経験させてもらってこその今があると思うので、そういった深みみたいなものは自然と蓄積されてきたのではないかなとプラスに捉えています」
-それぞれ生き様も歩んできた道のりも違いますからね-
「そう。そうですよね。だからこそ、これも武器の一つとして、厚みや深みとして滲ませられる役者でありたいなと思います」
-2020年はコロナ禍で撮影の中断やスケジュールが大幅に変わったと思いますが、その間はどのように?-
「まずは自分が感染しないこと。それと先々決まっている作品に迷惑をかけないこと。でも、仕事がなくて沈んだ時期も経験していますからね。
急に仕事がなくなって家で暇なことというのも過去に経験したことがあるので、別に苦ではなかったし、ないならないなりに、じゃあ今できることは何だろうなって探す」
-新たにはじめられたことはありますか-
「料理は普段自分で作ったりもするんですけど、何か作ったことがないものを作ってみようかなとか。ベースを家で弾いたり、夜中に散歩しに行ったりしていました。
あとは撮影が再開したときに感覚が鈍(にぶ)っていないように作品を見たりとか、見ようと思いながらなかなか見られなかった映画を見たりしていました」
-桐山さんは趣味も多く、船舶の免許もおもちなんですね-
「乗り物が好きなんですよ。車も好きなので、その延長みたいなものです。ドライブも好きですし、海が好きなので。僕はインドアのイメージがあるかもしれないですけど、アウトドアなんですよ、結構。キャンプも大好きです。
自粛期間中はYouTubeもよく見ていましたね。海外の映像のYouTubeとか。仕事でギリシャに行ったことがあって、『ギリシャが恋しいなあ』って思ったときにアテネとかを検索して見たりして。
海外の映像だったり山、海、そういう映像を見て、気休めかもしれないですけど行った気になるというか。
沖縄の映像とともに沖縄のミュージックを流したりして、沖縄にいるような気持ちになりながらリビングで過ごすのが、自分のリラックスに繋がっているなあって思います」
-今後はどのように?-
「振り幅広く演じていきたいですね。近年はコメディーをやらせてもらうことが多かったので、これからどんどん挑戦していきたいです。
あとは何と言っても朝ドラ(NHK)に出たいですし、料理人の役やダークヒーローなんかも今後演じてみたいなあと思っています」
思い悩んだツライ時期を経験しただけに、強い自覚と自信が感じられる。しっかりと目標を定め、着実にステップアップしている桐山さん。年齢と経験を重ね、今後の活躍がますます楽しみになる。(津島令子)
ヘアメイク:江夏智也(raftel)
スタイリスト:吉田ナオキ
衣装協力:WYM LIDNM、REV、GARNI、NUG