山﨑賢人「殺されると思った」映画『キングダム』撮影で出会ったヤバすぎるアクション俳優
“激レア”な体験を実際にした「激レアさん」をスタジオに集め、その体験談を紐解いていく番組『激レアさんを連れてきた。』。
10月26日(月)の放送では、日本を代表するアクション俳優・坂口拓を紹介した。
2001年、24歳のときに映画『VERSUS ヴァーサス』で俳優デビューした坂口は、これまで数々のアクション映画に出演。ひたすらアクションにこだわり、俳優業をまい進してきた。
そのほとんどが、段取りを一切決めないというスタイルで、今までの負傷箇所は歯4本、全身の骨折回数100回以上、切り傷120箇所。骨を折りすぎて、骨折程度では病院に行くことはないという。
2020年8月に公開された主演作『狂武蔵』では、588人との本気の殺陣、77分ワンカットの撮影に挑戦。唯一無二のアクション俳優として世界でも高く評価されている。
◆少年時代は超ひ弱な男の子
そんな坂口だが、学生時代は運動神経も悪く、勉強も苦手で気弱な少年だった。
高校では、駅でたむろする不良にカツアゲされるのが嫌で、往復40kmの距離を自転車通学する日々。その結果、自然と足腰が鍛えられ、体力がついた。さらにある女性に恋したことで、腕立て伏せ2000回が日課となり、意図せず腕周りの筋力もアップ。
坂口の体はいつしかバキバキに鍛えられ、アクション俳優を目指すことを決意する。
とはいえ、すぐに夢が実現したわけではなかった。
当時アクション俳優やスタントマンを目指す者にとっての登竜門「ジャパンアクションクラブ」に入団するが、すべての段取りが決まり切っているアクションに「リアルじゃない!」とギャップを感じ、早々に辞めてしまう。
「不格好でも自分らしさが出るほうがカッコイイ」
そう思った坂口は、極限までにリアルを追求した“リアル・アクション道”を突き詰めることを決意。
ボクシング、キックボクシング、柔術などさまざまな格闘技を学び、いつしか一般人にもかかわらず、“西新宿の白い狼・サカグチ”というキャッチフレーズをつけられるまでになる。
すると、そんな噂を耳にしたある映画監督から、坂口に映画の出演依頼が届いた。「次の作品では強い男を主演にしたい」と考えていたその監督が、坂口に白羽の矢を立てたのだ。
話はトントン拍子に進み、ついに坂口にとって念願の映画デビューが決定。
はじめて出演した映画『VERSUS ヴァーサス』では、顔面や体を本気で殴り合うリアル・アクションを披露し、作品はもちろん、主演の坂口も映画業界で話題となった。
◆前代未聞の悪役で話題に
ところが、当時はアクションなしの二枚目役のオファーばかり届いたそうで、坂口は「リアル・アクションしかやりません」とそれらのオファーをほとんど断っていた。
そんなかたくなな坂口に、アクション人生を変える“あるオファー”が舞い込む。
そのオファーとは、『仮面ライダーカブト』のラスボス役。新人アクション俳優にとっては願ってもない役柄だ。
坂口はこのオファーに対し、ダメ元で「仮面ライダーを素手でボコボコにしていいなら出ます」という条件を突きつけた。関係者の答えはなんと「OKです」。
こうしてラスボス役で同作に出演した坂口は、仮面ライダーとの対決シーンで実際にライダーをボコボコにし、ライダースーツが破損するほどの本気のやり合いを演じた。
その演技によって業界内では「なんかやばいアクション俳優がいる」と噂になり、結果、坂口のもとにはアクション作品の出演依頼が殺到するように。アクション監督のオファーも届くようになった。
◆撮影現場では常に死を覚悟
撮影現場での坂口の信条は、「相手を傷つけない、リスペクトする、思いやる。これを守れば、映画のなかでも殺す気でやりあってOK」。
「同じ殴りでも相手にリスペクトのないパンチは暴力に感じる。ただ、拳の先にリスペクトや思いやりを込めると全然変わる。信頼関係さえあれば、結構突き詰めたところまでいける」と語る坂口。
撮影現場ではこうした信条のもと、常に“死”を覚悟して挑み、リアルなアクションを15年間突き詰めた。
すると、坂口はある境地に達する。
「もう動きとか段取りとか決めなくていいだろ」
事前にアクションの振りを決めず、相手の動きにその都度反応するだけの“全アドリブアクション”を追求しはじめたのだ。前代未聞、世界初の試みだった。
その集大成として作り上げたのが、77分のワンカット・ワンシーンで、588人との本気の殺陣に挑戦した映画『狂武蔵』だ。
坂口はこの作品を究極のリアル・アクション映画にするため、本気で自分を襲える人材を自ら育成。
「俺の方がお前らの何千倍も強いんだ。だから絶対当たらないんだ」という安心感を1年間にわたって植え付け、撮影前には「両目つぶれてもいいし、何もかも失くしてもいいから、殺すまでやってくれ!」と発破をかけた。
そして撮影がはじまると、「目・喉・頭、かち割っていいからおいでよ」と本気で自分を狙わせ、撮影開始5分で指を骨折。それでもがんばっていたら肋骨4本を骨折。痛みに耐えて食いしばっていたら、食いしばりすぎて歯4本も折れてしまった。
「握力は15分くらいでなくなる。最後ボロボロになって、『どうせ死ぬんだから』と(思って)いくと、脱力して強くなっていく。限界超えて、作品中に強くなった」
◆人気俳優も絶賛するリアル・アクション
それから坂口の元には、アクションを習いたいという若手俳優や女優が殺到するようになった。坂口は「このリアル・アクションを若い世代に伝えていかねば!」と思い、さらなるリアル・アクション道を究めていく。
番組では、そんな坂口のアクションを尊敬してやまない俳優にインタビュー。映画『キングダム』で共演した山崎賢人だ。
「とことんアクションを突き詰めた、リアルをアクションに落とし込んでいる。坂口さんみたいな人はいない」と絶賛する山崎。
撮影現場では坂口のリアル・アクションを体験したそうで、その際のエピソードを語った。
「坂口さん演じる左慈が、僕を追って周りの人をなぎ倒していくシーンがあったんですけど、『逃げる人が慌てるほうがいい』と監督が言ったら、本番で坂口さんが(振りを)何手か飛ばしたんです。
リハーサルでは左を攻撃して、最後右を攻撃の順だったんですけど、本番ではすぐに右に攻撃してきて、本当にびっくりして『みんな殺される』と思いました」
共演者をも圧倒する坂口のリアル・アクション。
2020年公開予定のハリウッド映画に出演した際は、共演したニコラス・ケイジに「お前は世界一のアクション俳優だ!」と言わしめた。
こうして日本が世界に誇る伝説のアクション俳優になったのだ。
※番組情報:『激レアさんを連れてきた。』
【毎週月曜】よる11:15~、テレビ朝日系24局(※一部地域を除く)