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WRC(世界ラリー選手権)、残り2戦。例年とは違う10月のイタリア開催、勝田貴元も参戦

新型コロナウイルス感染拡大により、2020年3月の第3戦「ラリー・メキシコ」後から9月の第4戦「ラリー・エストニア」での再開まで約半年間の休止状態だったWRC(世界ラリー選手権)。

再開後も新型コロナウイルスの影響は大きく、第4戦「ラリー・エストニア」と第5戦「ラリー・トルコ」では、通常3日間にわたって競うものが、事実上土日の2日間での争いに。そのため、ひとつのミスが大きく順位に影響する厳しいラリーとなっていた。

しかし、少しずつ新型コロナウイルスへの対処方法が蓄積されてきたこともあり、今週開催する第6戦「ラリー・イタリア」では、無観客ラリーは継続となるものの、ラリーのスペシャルステージ総距離が通常の300km前後から16ステージで238.84kmと少し短いながらも通常と変わらない3日間のラリー(金曜日朝から日曜日まで)が開催されることとなった。

同じ世界選手権のF1では、観客の動線を隔離することが可能なサーキット開催ということもあり、一足先に人数を制限しつつ観客を入れたレースを再開している。こうした経験は、今後のWRCでも観客動員再開に向けて活かされていくはずだ。

エルフィン・エバンス/©TOYOTA GAZOO Racing

そして現在、WRCの注目は混沌状態となったチャンピオンシップ争いに集まっている。

残り2戦を残して、ドライバーチャンピオンシップ1位のエルフィン・エバンス(トヨタ)が97ポイント、2位セバスチャン・オジェ(トヨタ)が79ポイントで続き、3位オット・タナック(ヒュンダイ)/70ポイント、4位カッレ・ロバンペラ(トヨタ)/70ポイント、5位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)/65ポイントとなっている。

1位のエバンスと5位のヌービルの差は32ポイントあるが、優勝と最終ステージのパワーステージでトップを取ると、25ポイントに5ポイント加算で合計30ポイントを稼ぐことが出来る。つまり、ヌービルも可能性は少ないながら数字上は逆転王者が充分可能ということだ。

◆走行順やタイヤ選択、天候への対応が鍵に

昨年の様子/©TOYOTA GAZOO Racing

第6戦「ラリー・イタリア」の舞台は、地中海に浮かぶサルディーニャ島。グラベル(未舗装路)ラリーでの争いとなる。

3日間で16のSSを走るステージは、金曜日がSS1からSS6、土曜日がSS7からSS12、そして日曜日がSS13からSS16となる。日々注目すべきステージはあるが、ラリー・イタリアの名物といえるのが、土曜日のSS7とSS9で走行する通称「ミッキーズ・ジャンプ」と呼ばれるクレスト(丘)だろう。

このジャンプポイントは、ジャンプする前の上り坂と、丘の頂点でジャンプした先の下り坂の角度が急なことで知られ、さらにジャンプした直後に左へと曲がっていくコース地形となっている。

無観客ではなかった昨年までは多くのファンが集まる名物ポイントだった。そのため、ドライバーたちもファンサービスというわけではないが、より高く遠くへ飛ぶことが多く、ジャンプが派手だと人気のマッズ・オストベルグ(現在WRC2クラス)は以前のWRC公式インタビューでこう答えている。

「別にジャンパーになりたいわけではないが、ミッキーズ・ジャンプでは多くのファンの前で少しショーとして楽しめるよう、ほんの少しエクストラに力が入ってしまう事はあるね」

しかし、今回は無観客ラリー。より正確かつ車体を傷めないジャンプが求められる。また、例年は6月開催だったのが、今回は新型コロナウイルスの影響で2012年以来の10月開催。夏は雨が少ない地中海性気候だが、10月は雨もある天候となる。天気をどう読むのかも大きなポイントになりそうだ。

そんなラリー・イタリアに向けて、全員がチャンピオンの可能性があるトヨタドライバーたちはチームリリースで次のようにコメントしている。

セバスチャン・オジェ/©TOYOTA GAZOO Racing

※セバスチャン・オジェ

「サルディニアは好きなラリーですが、例年と異なる時期の開催なので、これまでとは違うチャレンジになるかもしれません。そのため、先週のテストは重要な準備になりました。この時期は通常よりも天候が不安定で、サルディニアのような島では天気が急変することがあります。実際、テストでも激しい雨が降り、ステージのコンディションはほんの数分で大きく変わってしまいました。

タイトル争いは依然続いていますので、サルディニアではベストを尽くし、最大ポイントの獲得を狙います」

※エルフィン・エバンス

「前戦トルコで我々が獲得したような最高の結果は、次のラリーへの勢いを強める効果があります。選手権首位は、もちろん有利な状況ではありますが、そのためにサルディニアでは路面の掃除役を担うことになります。仕方がないことですが、もし路面がドライならば、我々にとって簡単なラリーにはならないでしょう。

今年は10月の開催ということで、天候がいつもと少し異なる可能性があり、タイヤの負担はやや少なくなるかもしれませんが、それでも難しい選択を迫られることになると思います。2本のループステージを、途中サービスに戻ることなく走り切る日もあるので、全体を考えたタイヤ選択が必要ですし、大きなチャレンジになるでしょう」

※カッレ・ロバンペラ

「サルディニアに向けての事前テストでは、走り始めからクルマのフィーリングが良く、少しセッティングを調整した後はさらに良くなったので、自信を持ってラリーに臨むことができます。

サルディニアでは通常1回目のループステージは路面が非常に滑りやすいため、十分なグリップを得ることが重要です。一部の路面は非常に荒れており、2回目のループステージでは深い轍が刻まれるかもしれないので、それに対応できるようなセットアップが必要です。

また、降雨の可能性もあり、局地的な雨でステージの一部だけがウェットコンディションになるかもしれないので、雨が降るのか降らないのか、どのタイヤが適しているのかなど、ウェザークルーからの情報が非常に重要になるでしょう。雨が降ると路面が非常に滑りやすくなるようなので、彼らの情報が鍵を握ります」

これらコメントのように、トヨタチームの面々も、走行順やタイヤ選択に加えて天候への対応が鍵になると認識しているようだ。

◆勝田貴元、コロナ前に語っていた“5カ年計画”

さて今回は、「ラリー・エストニア」でリタイアはしたものの素晴らしい走りを見せた日本人ドライバーの勝田貴元が参加する。

勝田貴元/©TOYOTA GAZOO Racing

勝田は来月行われる最終戦「ラリー・ベルギー」への参加も決まっており、残り2戦でさらなる成長が期待されている。

じつはまだ新型コロナウイルスが猛威を振るう前、勝田には我々のインタビューのなかで、自身の5カ年計画を語ってもらっていた。

「2020年を起点にして1~2年でWRCレギュラードライバーとしてやっていける器量を見せること。そして3年後の2022年はレギュラードライバーになっていることが前提で、WRCで勝利が出来る、つまりトップ争いが出来るドライバーのポジションへと成長する。その先、つまりシリーズチャンピオンを争えるだけのドライバーになるためにはさらなる経験が必要で、その立場を5年後もしくは6年後の2024~2025年辺りで競っている自分を目指しています」

また勝田自身、速さに関しては“ついていける感覚”はあり、やはり経験をどう積んでいくかが重要だと語る。

「例えば、ひとつのコーナーでリスクをあえて取らず走ると0.1秒程度のロスが発生するとして、それがひとつの長いステージになると大きなタイム差となって現れます。WRCは本当に様々な要素が絡み合う競技で、例えばモンテカルロのアイス(路面上の氷)とか、難しいコンディションになったときに対処する引き出しの数、より高い信頼性となるペースノートの作り込み、そして車体をセッティングしていく能力やタイヤの見極めなどなど、本当に多くのことを積み重ねていった結果として上位で戦えるという競技なので、それらをさらに高めることを日々行っています」

こう語る勝田は、「ラリー・エストニア」で同じマシンに乗るトヨタのトップドライバーたちと互角のタイムを何度も出して総合5位につけていた。

最終日のSS13でコースアウトするクラッシュで残念ながらリタイアはしたが、その原因はペースノートの作り込みだった。その後のメディアに対するインタビューでも、「ペースノートに書いたデータより実際のコーナー角度は厳しく、オーバースピードになっていた」と話しており、実際にWRCスピードで走行するわけではない“レッキ”と呼ばれるペースノート作りで行う走行時の自身の判断が甘かったことを認めている。

だが、こうした失敗も経験のひとつであり、それを踏まえて次に成長できる。今シーズンは新型コロナウイルスの影響で予定通りの数は参加出来ないが、それでも毎戦大きく成長していることが外部から見ていてもわかり、今回のラリー・イタリアも大いに期待できそうだ。

金曜日のSS1は現地時間7時50分スタート(日本時間は14時50分)を予定している。土曜日のSS7は現地時間7時37分スタート(日本時間は土曜日14時37分)、日曜日のSS13は現地時間8時15分スタート(日本時間は日曜日15時15分)の予定だ。

昨年の様子/©TOYOTA GAZOO Racing

残り2戦、トヨタとしてはドライバーズチャンピオンシップもだが、昨シーズンは獲得できなかったマニュファクチャラーチャンピオンシップとのダブルタイトル獲得に向けて、今回も複数台で上位を獲得したいところだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>