「無観客じゃなかったら気づけなかった」高校野球を追いつづけたヒロド歩美が、球場で感じた“温もり”
8月の風物詩ともいえる『夏の甲子園』だが、新型コロナウイルスの影響を受け、今年の『第102回全国高等学校野球選手権大会』は中止となった。
そんな特別な夏に、長島三奈、古田敦也、ヒロド歩美(ABCテレビアナウンサー)が、球児たちの軌跡と“今”を徹底取材し、数々のドラマをお届けする『高校野球特番 2020君だけの甲子園』。
放送を前に、長年高校野球を取材し続けているヒロドアナウンサーが、その思いを語った。
◆ヒロドアナウンサーが直面した“中止”という現実
長年高校野球を取材し続けるヒロド歩美は、『夏の甲子園』中止という現実に直面したときのことを、次のように振り返った。
「これまで7年間高校野球を取材してきて、甲子園というものが球児たちにとっていかに大きな目標かを知ってきた分、彼らがどういう気持ちでいるのかを想像するだけで、胸が痛くなりました。球児たちを取材して伝える立場として、踏み込んでいいものなのか…という感情が最初に生まれましたし、かける言葉がないというか、そういう資格もないというか…。私は高校球児でもなかったし、それぞれの高校のOBでもないので、本当に自分にはその資格がないな…など、いろいろな感情がぐるぐると駆け巡りました」
青春を野球に捧げてきた球児たちの証を残そうと、自身のSNSでもハッシュタグ「#2020僕らの証」を付けて、彼らの姿を紹介しているヒロドアナウンサー。
今回放送される『高校野球特番』についても、「『中止になってかわいそう』と思ってしまうのは自然なことだと思うんですが、甲子園という目標がなくなってしまった現実に、球児たちがしっかり立ち向かっている姿をしっかりお伝えしたいな、と思っています」と語った。
番組には、「『球児たちは強い!』ということと、あらためて甲子園って偉大なんだな、ということを見ていただければと思います」と、ヒロドアナウンサーが取材を続けるなかで抱いた思いを裏付ける、たくましい球児たちの姿が登場する。
◆「野球ができるのは当たり前のことじゃない」
取材した新城東高校(愛知)は閉校が決まっており、野球部は3年生が9人のみ。
ヒロドアナウンサーは「ひとちでも欠けたら没収試合になってしまうんです。誰かが試合中にケガをすると、そこで試合終了になる…。ゲームセットまでプレーするのが当たり前じゃないんだということにハッとさせられました。今回、野球部員はたくさんいて当たり前じゃない…ということを学びましたね」と語る。
「『コロナの影響でこういう状況になって、野球ができることって当たり前のことじゃなかったんだって気づかされた』という球児の言葉を聞いていたんですが、新城東高校を取材して、一層野球ができるのは当たり前のことじゃないということを強く感じました」と、この夏あらためて実感した思いもあったよう。
番組では、徹底取材して見えてきた、9人ならではの結束力と彼らの思いをお届けする。
◆「多くの人の思いを背負って挑む高校野球の魅力」
「7年間の高校野球取材のなかで、あらためて高校野球の魅力を感じた高校でした」とヒロドアナウンサーが語るのは、長崎商業高校(長崎)。
5月20日(水)、中止が発表された際に、グラウンドで泣き崩れる球児たちの姿が多くのメディアで報道され、日本中が涙した。
番組では、彼らの奮闘とそれを支える両親のサポートなど、家族の絆にもスポットを当てる。
ヒロドアナウンサーが、「球児が打席に立ったときには、もちろんこれまでの彼らの努力が注目されるんですが、その後ろにはご両親の支えがあり、ブラスバンド部などのエールがあり、今年だとインターハイが中止になったほかの部活の子たちの思いもあるんです。球児たちはたくさんの思いを背負っているんですよね…」と語った球児たちと、彼らを支える人々の“人間ドラマ”に注目だ。
◆「無観客試合だからこそ聞こえてきた声がある」
32校が阪神甲子園球場に招待され、無観客で行われた『2020甲子園高校野球交流試合』。
さぞ例年とは雰囲気が違うのだろうと思いきや、「球児たちの姿は例年と変わらないです。毎年、甲子園に立った球児は、ノックの段階からキラキラ輝いた表情をしているんです。はじめて来たた球児は『ここが甲子園か…』って、かみしめながら準備していますし。その光景は今年も変わらないですね」と言うヒロドアナウンサー。
しかし、「無観客だからこそ聞こえてきた声がたくさんある」とも言い、「ベンチの声や、こんなに叫んでるんだ!と気づいたサードコーチャーの声。あとはブラスバンドの演奏も大声の応援もないので、球場で“鳴る”音って拍手だけなんですよね。内野スタンドには距離を保って保護者の方がいらっしゃるんですけど、その拍手で試合の空気もちょっと変わったりして…。ファインプレーをしたときに、相手のスタンドからも拍手が送られたり、すごく温かいムードが流れていました。これは無観客じゃなかったら気づけなかったことだな、と思いました」と、特別な今年の夏だからこそ感じた印象を語った。
※番組情報:『高校野球特番 2020君だけの甲子園』
2020年8月23日(日)よる9:00~10:54、テレビ朝日系24局