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ジャルジャル・後藤淳平、井筒和幸監督作品の超過酷現場「寝られたのは移動時間だけ」初映画で主演抜擢!

吉本興業の精鋭たちが挑んだ社内オーディションに合格し、劇場レギュラーメンバーとなった“ジャルジャル”の後藤淳平さんと福徳秀介さん。

劇場出演をきっかけに若手を発掘する『ゲンセキ』(TBS系)に出演して合格。はじめて全国ネットのテレビ番組でネタを披露したのを機に注目を集め、東京、関西のテレビ番組に次々と出演するようになっていく。売れっ子になってからも『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)、『キングオブコント』(TBS系)にトライし続けるなどチャレンジ精神も旺盛。2010年には映画初出演にして『ヒーローショー』(井筒和幸監督)に主演。海外でのライブ活動も精力的に行うなど活躍の場を広げている。

◆ネタ作りはふたりだけで

大学を卒業してから数年後には、テレビの仕事もコンスタントに入るようになり、東京での仕事の際には、その都度大阪から通ってきていたという。

-わりと早くから色々な番組に出演されていたイメージがありますが-

「でも、本当に何かのきっかけでドーンといったことはなくて、一歩一歩という感じですね。

関西で深夜のネタ番組とかでちょっと目立ったりして、そこでまた仕事が増えて…という」

-ずっとコンスタントにお仕事をされていますね-

「そうですね。まったく仕事がなくなったということはないですね。まあ、自分らで何か企画してやったりしている限りは、全然仕事がなくなるということはないのかなと。

僕たちは『爆笑レッドシアター』(フジテレビ系)が終わったら、お客さんがダーッと離れていったという経験もしたので、もうそんなことにはならないようにとは思っています。

外からのオファーがないときでも、自分らでなんか考えて発信とか、イベントができれば、『やばい、何もやることがない』という状況にはならへんのかなと思っているんですけど」

-ものすごい数のネタを持っていることで知られていますが、おふたりだけで作っているとか-

「はいふたりで作っています。最初は漫才をやっていたんですけど、NSC(吉本総合芸術学院)の期間中にコントに切り替えたんです。

それも、ネタ見せの授業でやるネタがなくて、『何しようかな?』ってなったときに、高校の保健室で遊んでいた雰囲気、ネタかネタじゃないのかわからんぐらいの遊びみたいなのをやってみたんですよ。

『これ怒られるんとちゃうかな?』って思いながらやってみたんですけど、それが意外と手応えがよくて、『これでいいんやったら、なんぼでも作れるぞ』ってなって(笑)。そこからコントに切り替えたという感じですね。

漫才のときには何とかひねりだしている、頑張って1本作って…みたいな感じだったんですけど、コントだと結構息をするようにネタができるようになりました(笑)」

-ネタは必ずおふたりで話し合って作るのですか?-

「そうです。漫才のときには主に僕が作ってという感じで結構しんどかったんですよ、お互いになかなか。でも、コントにしてからは、めっちゃ楽になりましたね」

ネタを作るときは、題名のみネタ帳に書きためて即興で試して厳選し、本ネタへ仕上げていくスタイル。台本は作らずに頭とカラダで覚えているという。

「僕らはガチガチに練習してやるほうが難しいんですよ(笑)。だから、細かい順番とかは、いつもの舞台でも決めていません。高校時代からずっと一緒の福徳やからできることだと思います」

2018年2月からはYouTubeで毎日1本ショートコント動画を配信し続けており、8,000本が目標。ゴールは2039年の予定だという。

◆映画『ヒーローショー』で腕力自慢の元自衛官に

2010年には井筒和幸監督の映画『ヒーローショー』に福徳さんとともに主演。福徳さん演じるユウキが、ヒーローショーのアルバイトをはじめたことから先輩の彼女をめぐるトラブルに巻き込まれ、暴力事件に発展していく…という内容で、後藤さんは福徳さんの敵側のケンカがめっぽう強い元自衛官の勇気役。

「最初は福徳と僕のどっちがどっちの役か決まってなくて、多分僕がやっていた元自衛官の役は福徳で、福徳のやった役が僕やろうなって思っていたんです。

それで、井筒監督と会ったときに、監督が僕らのことを見て配役を決めたと思うんですけど、『あー、逆なんや』って(笑)」

-そう言われたときにはどうでした?-

「いやあ、もう腹くくるしかないという感じでした。『こっちかー』って(笑)」

-爽やかなルックスですけど、ちょっと危ない雰囲気が感じられて合っていましたね-

「そうですね。今考えたら、たしかにセリフはそんなになかったんですよ、僕は。結構出ているけど、顔とか雰囲気とかのシーンが多くて、『おい!』とか『ああ』とかは言うけど、具体的なことはあまりしゃべってないんですよね」

-かなり殺伐(さつばつ)とした内容でしたけど、撮影している間はどうでした?-

「撮影現場も殺伐としていましたよ。和気あいあいとしているわけじゃなく、本当に殺伐としていました」

-井筒監督の現場はかなり厳しかったのでは?-

「バンバンいろいろ言われました。でも、怖いということではなくて、ほんまにマジでそのシーンのことを考えてやっていて、なかなかOKが出ないんですよ。ほんまに出ないんです。

何十回も同じシーンをやるわけですよ。僕らは映画の撮影ははじめてやったから、それが当たり前やと思ってやっていたんですけど、いろんな人から『最初に井筒組を経験しておいて本当によかったと思うよ。ほかの監督とやっていたら、多分耐えられへんと思う』って言われました。

でも、撮影しているうちにだんだんわかってくるというか、『はいカット!』ってなったときに、『今のはOKっぼい』って思ったら、監督が『OK』ってなるというか、そこの意思の疎通みたいなのが、途中から通じるようになっていきましたね。

それで、『今のはちょっと違う』となったら、また芝居を変えてやってみるんですけど、小手先が通用しないので、ほんまにカラダの芯からやらんとバレるんですよ、監督に。その見透かされている感じがすごいなあって(笑)」

-最初の映画が井筒組、もう何も怖くなくなりますよね-

「そうです。あの現場はなかなかないですね。2、3分のシーンを2日ぐらいかけて撮るから、『こういうものなのかな、映画は』って思っていたんですけど、どうやら違うみたいです(笑)」

-完成した映画を見たときにはどうでした?-

「感慨深かったです。撮影してからだいぶ日が経ってから見ましたけど、撮影当時の景色をバーッと思い出して、『大変やったなあ』とか、『あんな大変やったシーン、こんなにサラッと終わるんや』って(笑)」

-ラブシーンもありましたね-

「ありました。はじめてやったんですけど、恥ずかしいというより、とにかく『監督の要望に応えなあかん。くらいつかな』という思いでやりました。

本当にジェットコースターに乗っている感じというか、はじまってしまえば、ガーッといくという感じで、ラブシーンは一発オーケーやったんですよ。

あれを何回もというのは、さすがにできないです(笑)。監督もそういうシーンやから、『一発でいくつもりでいくから、そのつもりでやってください』みたいな感じで」

-印象に残っているエピソードはありますか?-

「もう思い出だらけで、何をしゃべったらいいかわからないぐらい。とにかくずっと眠かったですね。監督も『いつ寝てるんやろう?』というぐらい、朝がたの4時とか5時くらいまで撮って、その日の朝7時からまた撮影とか、そんなのが続いていたので」

-『ヒーローショー』の撮影の期間も、ジャルジャルとしての番組の収録などはあったのでしょうね-

「そうなんですよ。関西でもレギュラー番組がありましたし、東京では『爆笑レッドシアター』(フジテレビ系)みたいな番組があって、その行き来やったんですよね。

寝られたのは移動時間だけという感じで、あの頃が本当に一番忙しかったですね。今思ったらいい思い出ですけど、撮っている最中は『これはいつ終わるんやろう?』という感じでした」

『ヒーローショー』で俳優としても高く評価された後藤さんは、『銃』(武正晴監督)、『記憶にございません!』(三谷幸喜監督)など多くの映画に出演。現在公開中の映画『ロックンロール・ストリップ』では単独初主演をはたしている。

◆2019年、大晦日に8時間半のライブに挑戦!

約8,000本というネタの多さで知られるジャルジャル。単独ライブや海外公演も精力的に行ってきたふたりは、2019年の大晦日、除夜の鐘が鳴る回数の108にちなんで108本のコントを披露するライブに8時間45分かけて挑戦した。

-8時間45分のライブとはすごいですね-

「やりましたね。いい経験でした」

-いけるという自信はあったんですか-

「いやいや、自信も何もやったことがないから、どの辺でドンダケしんどくなるかとかわからないじゃないですか。だから、とりあえずやってみるという感じで(笑)。

まず、8時間半のイベントをお客さんが見に来るかなという不安もあったんですよね。

そうしたら、結構来てくれて。それでそのうれしさもあるし、感謝の思いもあるので、来てくれたお客さんを満足させないといけないというので、ガーッてできました」

-あのライブをやることになったのは?-

「これは僕らがやりたいと言ったわけではなくて、社員さんに『こういう企画を考えたんですけど、どうですか?』って言われて、『しんどそうやから、いやや』とは言えないじゃないですか(笑)。『見たことないライブやし、やります』って言うしかないですよね」

-あれだけ長時間のライブをされるには準備も大変だったと思いますが、前日はどのように過ごされていたのですか-

「いやあ、前日はもうどうしようもないですね。道具の確認とかして、たっぷり寝るというぐらいですね。それで万全の体勢で。

僕らもそうですけど、見ているお客さんも大変やし、もともとすごい本数、108本ネタをやるということなので、着替えも道具も最小限で、バンバンバンってやっていくということにして。

だから、舞台袖で道具を出してくれるスタッフさん、ひとりだけ用意してたんですけど、リハーサルをやったら、『もうちょっとここに大きなソファーが欲しいな』とか、『大きなテーブルが欲しいな』って、どんどん道具が増えていっちゃって(笑)。

そのでっかい道具を108本のネタ分、ひとりで出したりハケたりとかしていたスタッフさんもすごいなと思いました。すごい肉体労働やし、全部のネタも把握しとかなあかん。プロやなあって」

-やり終わった後はどうでした?-

「『意外と大丈夫やったなあ』という思いと、『ワーッ、やり切った』というハイな感じでした」

-打ち上げとかもされたのですか?-

「その日は軽く楽屋でちょっと宅配ピザとか食べて、ふたりともお酒は飲めないのでジュース飲んで、その日のうちに東京に帰りました。

次の日が朝から『新春!爆笑ヒットパレード2020』(フジテレビ系)やったんですけど、さすがにしんどかったですね(笑)。のどもなかなか声が出にくかったりしましたけど、ライブの達成感は大きかったですね」

後藤さんは“周りの提案には乗っかるタイプ”で、今後も色々なことに挑戦していく予定だという。次回後編では、三谷幸喜監督作『記憶にございません!』の撮影エピソード、公開中の初主演映画『ロックンロール・ストリップ』の撮影裏話などを紹介。(津島令子)

スタイリスト:中村陽子
ヘアメイク:伊荻ユミ
衣装提供:CAVE (TEL 06-6543-0320)

映画『ロックンロール・ストリップ』
2020年8月14日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
配給:有限会社ベストブレーン
監督・脚本:木下半太
出演:後藤淳平(ジャルジャル) 徳永えり 智順 三戸なつめ 坂口涼太郎 品川祐 ほか
大阪のストリップ劇場を舞台に、映画監督を夢見る劇団座長(後藤淳平)が売れない劇団員とともに、奇跡のパフォーマンスを繰り広げる痛快エンターテインメント。