テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
menu

加納竜「危険なシーンをいっぱいやりました」伝説のドラマで新人刑事役、スタントマンさながらのアクションも

1976年、映画『愛と誠・完結編』の太賀誠役でブレークし、若手二枚目俳優としてドラマ、映画、CMに引っ張りだことなった加納竜さん。

『華麗なる刑事』(フジテレビ系)、『刑事犬カール』(TBS系)、『鉄道公安官』(テレビ朝日系)など人気ドラマに次々に出演。そして1980年、ドラマ『西部警察』に新人刑事・桐生一馬(リュウ)役でレギュラー出演することに。

(C)『西部警察』

◆スタントマンさながらのアクションも

『西部警察』(テレビ朝日系)は、1979年から1984年まで放送された刑事ドラマシリーズ。西部署の小暮捜査課長(石原裕次郎)の下、部長刑事・大門(渡哲也)率いる大門軍団の刑事たちが凶悪犯罪に立ち向かっていく様を描いた作品。銃撃戦やカーチェイス、爆破シーンが毎回のように盛り込まれ、撮影で破壊した車両総数4,680台、総火薬使用量4,800kgという破格のスケールも話題を集めた。

-『西部警察』に出演されたときはどんな感じでした?-

「スタッフも石原軍団ですからね。あれはあれでプレッシャーがありましたけど、あの頃は僕もまだ24、5歳でイケイケ感があったので(笑)。

まだ何も怖いものがない時代だったので。とりあえずやっておけばいいかって感じで」

-すんなり受け入れられて?-

「受け入れられたかどうかわからないですけどね(笑)。とりあえず、そのしきたりにのっとってはいました」

-アクションシーンも多く、皆さんよく走っていましたね-

「走るかアクションかという感じでした。僕の場合、走っている車に飛び乗るというシーンがあったんですけど、怖かったですよ。でも、もうやるしかないですからね」

-スタントマンの方ではなくご自分で?-

「顔がわかっちゃいますからね。ボンネットに飛び乗るんですけど、両方のスピードのGが膝にかかるので、きつかったですよ。

飛び乗った瞬間、『ウワーッ!これは年をとってから出るなあ』って思いましたよ(笑)。

まあ、いまだに出ていませんから大丈夫ですけどね。

『西部警察』では危険なシーンをいっぱいやりましたけど、当時は、やることがカッコいいみたいな感じでね(笑)」

-今だったら絶対にできないようなシーンがいっぱいありましたね-

「そうですね。爆破シーンの火は本当に怖かったですよ。小屋をよく爆破するんですけど、博多ロケに行ったときは、大きい小屋なので、ガソリンが入ったビニール袋を仕掛けてあるのが見えるんですよ。

ガソリンが入った透明の袋の下に火薬を入れているんだけど、それが両側に5m置きぐらいに何個もあるんですよ。

線が全部つながっていてそのなかに入っていくわけですよ。渡哲也さんも入っていくし、みんなも入って行く。『もし何かミスがあったらどうするんだろうなあ?』って思いながらやっていましたよ。

スタッフは『早くやれー。いつ電流が流れるかわからないから』って(笑)。そんな危ないのはいっぱいやりましたね」

-すごい状況で撮影していたのですね-

「そう。それで『用意、スタート』で小屋の外からカメラで撮っていて、我々がダーッと逃げて行って、カメラの前にバタンと伏せた瞬間で、小屋をドーンと爆破するんですけど、平気で火のついた木が飛んできていましたからね。

それがカラダにあたって『痛い、痛い』って言いながらやっていました。そんなことがしょっちゅうありましたよ」

-当時はよくそういう撮影の許可が下りましたよね-

「なんでしょうね?あれは。だって、普通の道路で車をひっくり返して、道路をガリガリガリってやっていましたからね。『大丈夫なの?これ』って(笑)。しょっちゅうでしたよ」

-昔は歌番組でも、新幹線のホームや飛行機のタラップをおりてきながら歌ったりしていましたものね-

「そうですね。今ではあり得ないことですけど、それなりにタイアップできたんですよね。今は色々と規制が厳しくなっていますから、時代ですよね」

-迫力がありましたね。あの時代を知っている世代からすると、今はちょっと物足りない感じがします-

「アクション系とかはそうなのかもしれないですね。今は今で、どうやればおもしろいかということを考えているのでしょうけど。あの時代、ロケは結構できましたね。いろんなところに行っていましたから」

-とくに印象に残っていることは?-

「走っている車に飛び乗るシーンと、火ですね、やっぱり。出演者みんな火のシーンというのはあるんですよ。

一番すごかったのは、寺尾聰さんが女性を助けて小屋から出てきた後に小屋が爆発するというシーン。

そのときに僕は横から見ていたんですけど、寺尾さんたちが小屋から出てきて、バーンって爆発した瞬間に、火が寺尾さんたちを追い越しましたからね。

要するに火は地面を這うんですよ。だから、火が入口からドーンと出てきたら、逃げたふたりを通り過ぎていったんですけど、『アッツツー』って寺尾さんが言っていました。そりゃあ熱いよね。真横から見ていて、ウワーッて思いましたよ。瞬間的でしたけど、火が通り越すんですから熱いですよね。『こんなことを俺たちはいつもやっているんだ』って思いましたよ」

-『西部警察』は、爆破シーンが多かったですものね-

「そう。だからしょっちゅう『熱い、熱い』ってやっていましたよ(笑)」

◆石原裕次郎さん到着時は赤い毛氈(もうせん)を敷いて

-地方ロケでは石原軍団の皆さんで飲みに行かれたりしたのですか?-

「飲みにはあまり行かなかったんじゃないですかね。顔がバレているから、行くと大変なことになるから。だから、みんなホテルで飲んでいたと思う。

『西部警察』のロケで地方に行くと昼間はすごい数のギャラリーがいるわけですよ。その人たちが夜、わかるようなところに行ったら大変なことになるので。

どのホテルに泊まっているのかも知っているし、一晩中ホテルの周辺にいたりするわけだから、ホテルのバーで飲んだり、部屋飲みみたいなことはしていました」

-結構お酒はお飲みになるんですか?-

「若い頃は飲みましたけど、今はもう一滴も飲まない。だから、そんなには好きじゃないんでしょうね。僕らが若い当時は、地方ロケとかに行くと、夕飯で宴会があるじゃないですか。

そうすると、新人クラスはまず、先には『お疲れ様でした』って部屋に行けないですからね。『先輩、監督が早く行かないかなあ、早く終わってくれ』って思っていました。

それは今の若者のほうが全然楽ですよ。携帯やりながら『お疲れ様でした』ってサッサと上がっちゃいますからね」

-昔は体育会系みたいなノリでしたよね-

「体育会系ですよ、石原軍団はとくに体育会系。地方ロケに行ったとき、撮影がない日に呼ばれたので、『きょうは撮影がないはずなのに何だろう?』って思っていたら、午後から石原裕次郎さんがヘリコプターで来るんですよ。

それで、ヘリポートからホテルの入口まで赤い毛氈(もうせん)を敷いて、両脇にみんな並んで、『おはようございます。お疲れ様でした』ってお迎えするんです。『ああ、このために呼ばれたのか』って(笑)」

-まるで映画のワンシーンのようですね-

「そうですよ。だから、本当にすごい人だったんですよ、石原さんは。本当のスター。石原さんのようなスターはもう出ないんじゃないですかね」

◆生き様を習ったのは石立鉄男さん

連続ドラマへの出演が続き、常に台本を3、4冊持っている状態という超多忙な日々を送っていた加納さんだが、当時はそれが普通だと思っていたという。

「今から思えば殺人的なスケジュールのときもありましたけど、当時はそれを普通だと思っていたので、若かったんでしょうね」

-色々な方と共演されていますが、一番影響を受けた方は?-

「僕が一番生き様を習ったのは石立鉄男さんなんですよ、『鉄道公安官』(テレビ朝日系)のときに。

あの人は競艇が好きなので連れて行ってもらったりしたんですけど、僕はそれまではちっちゃかったんですよ、考え方が。『負けたらどうしようかな』とかね。だけど、石立さんが『加納、お前な、どんなに借金しても命までは取らないから』って言って、『まさになあ』って(笑)。あの人はいろんなことを教えてくれて、それからあまり動じなくなりましたね。

あの人は朝まで飲んでよく遅刻して来るんですよ。東京駅で撮影できる時間が2時間位しかないときとかでも遅刻しちゃう。

それで助監督が『加納ちゃん、明日さ、2時間しか東京駅で撮影ができないから石立さんと朝7時まで飲んで、寝かさないで撮影に来て』って言うから、『寝かさないで俺が撮影に連れてくればいいんですね?わかりました』って」

-実際にそうされたのですか?-

「そう。朝まで飲んで連れて行きましたよ。寝ちゃうと遅刻するから朝まで飲んで、とりあえずは家に帰ってひと風呂浴びて、『じゃあ、行きましょうか、石立さん』って。

真っ赤な目をしてね、それでも撮影をやっていましたからね(笑)。今の俳優はほんとに真面目ですよ。よく寝て。セリフもよく覚えてね」

-時代もあるのでしょうね。今は何でもすぐにSNSに上げられちゃうので-

「そうですね。だからかわいそうでもありますけどね。まあ、当時はフィルム撮影が多かったから、カット割りがあったので、セリフなんかはそのときにパパパパッて覚えちゃう。

今の俳優はみんな本当によく覚えているよね。すごい。僕たちは当時、本当に覚えていなかった(笑)。今の時代では考えられないよね(笑)」

人気ドラマのレギュラーが続き、正義漢を演じることが多かった加納さん。30代に入ると2時間ドラマが全盛に。悪役のオファーも来るようになり、演じる役柄の幅も広がっていく。

「悪役は楽しいですよ。犯人には見えなかったけど、実は犯人だったとかね。演じていておもしろい。役者は最終的にはその人の本質が出ますからね。根っからの極悪人みたいな役は難しいかもしれませんけどね」

映画『日本統一』シリーズのマル暴の刑事役や『極道の門』シリーズのヤクザの組長役など印象的な役柄も多い。次回後編では、32歳年下の奥様との出会い、3歳になるお嬢さんと生後8か月の息子さんとの生活、大阪芸術大学短期大学部の教授としての日々などを紹介。(津島令子)