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『君の名は。』『世界から猫が消えたなら』などを生み出した川村元気の物語の作り方<『映画ドラえもん のび太の新恐竜』特別インタビュー>

『ドラえもん』連載開始50周年となる今年、同作映画シリーズ最新作となる『映画ドラえもん のび太の新恐竜』が8月7日(金)に公開される。

©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

映画第1作目が公開された1980年から40年目となる今年、同作の脚本を手掛けるのは、映画『天気の子』(2019年)、『君の名は。』(2016年)、『モテキ』(2011年)、『電車男』(2005年)などのヒット作を製作し、小説『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』『百花』などのベストセラーを発表している川村元気氏だ。

『映画ドラえもん のび太の宝島』(2018年)で今井一暁監督とタッグを組み、シリーズ史上最高興行収入53.7億という大ヒットを打ち立てた同氏に、「本作に取り掛かるまでの葛藤」「物語の作り方」「実はこの映画を観てもらいたい人」を中心に話を聞いた。

 

◆ドラえもんを手掛けるのは「正直、困った」

ーー過去のインタビューで、川村さんは「自分が観たい映画」をつくるということを意識していると答えています。今回の『映画ドラえもん のび太の新恐竜』も、「自分が観たい映画」になりましたか?

川村:そうですね。ただ、最初にこの仕事のオファーをいただいたときは、正直困ったなと思ったんです。

ーー困ったというのは?

川村:藤子プロさんからドラえもん50周年記念作品となる映画の脚本を、というお話をいただきました。それだけでもプレッシャーなのに、題材が「恐竜」というかつての名作と同じテーマで。正直自分がやれることはないんじゃないかな…と思ったんです。でも、福井県にある恐竜博物館や化石採掘場に足を運び、いろいろな恐竜研究者の方々に取材をするうちに、自分なりに大きな発見があって、それで『のび太の新恐竜』が書けるなという感触を得ました。

ーー福井県まで。何を発見したんですか?

川村:最初の『のび太の恐竜』から40年が経つなかで、恐竜の学説はどんどん更新されているんです。現代では「実は恐竜は絶滅していない」という学説が有力で。つまり、恐竜研究の世界は絶えず進化している、我々人間も進化している。ならば、今回の映画はこの「40年分の進化」を物語として描けば良いのだと思ったんです。

ーー何が今回新しい切り口になっているのか教えてください。あるインタビュー記事では「進化の先にある恐竜の物語を描きたい」と答えていましたが。

川村:ネタバレになるので、多くは語れませんが、少しだけ語るとすれば、キーワードは「多様性」です。最近よく耳にする言葉ですが、多様性って「弱者と共存しましょう」みたいな話になりがちな気がして違和感があったんです。恐竜や生物の歴史などを調べていくと、多様性というのは綺麗事ではなく、生物がサバイブするための必須条件だということがわかるんです。今回はそれをエンタテインメントとして描きました。

 

◆「親が子どもの付き合いで観にいく映画にはしたくなかったんです」

ーー2019年のヒット作となった『天気の子』も含め、川村さんは多様なヒット作を作られてきましたが、今回の作品づくりは順調でしたか?

川村:今回はやりきったという手応えがあります。それは今回ご一緒させていただいた今井一暁監督の功績が大きいです。僕は物語を作りますが、絵が描けない。それが僕の弱点です。アニメーションの場合、テキストだけの想像力にはどうしても限界があります。今井監督は本当に素晴らしい絵を描く人で、今回も『のび太の宝島』に続き “絵の力”で作品の世界を広げてくれました。『のび太の新恐竜』は、たくさんの恐竜が登場する映画ということもあって、映像の生命感にはかなり力を入れています。その点で今井監督がすごくいいコンテをかいてくれました。

ーー今回の映画は、やはり小学生の子どもたちに合わせた物語でしょうか。

川村:最初に藤子プロさんからお声かけいただいた時に、ディズニーやピクサー作品のように、親子で楽しめる作品にしたいと言われたんです。ディズニーやピクサー作品は、子供は笑い、親は感動し、どちらも映画館で楽しむことができる。親が子どもの付き合いで観にいく映画にはしたくなかったんです

ーーなるほど。

川村:子どもが楽しめる恐竜描写やコミカルなネタがたくさんある一方で、この作品の根幹にある生物のテーマや人間ドラマは子どもだとちょっと難しいところもあるかもしれません。映画を見終わった時に、お互いの感想を交換しながら補完しあえる体験を提供できたらなと思っています。

ーー親と子で「楽しい!」と思えるネタが二者に向けて別個に設計されているわけですね。

川村:『のび太の新恐竜』は、「子育てモノ」。今回は友情ではなく、擬似親子のストーリーなんです。親は、自分の子どもを育てることで自分の欠点に気づけると思うんです。つまり、子どもも成長するけど、子どもの成長に伴って、親も成長する。その親子関係の相似形を、のび太と双子の恐竜、キューとミューで表現しました。

今回、主題歌にMr.Children、ゲスト声優として木村拓哉と渡辺直美を迎えることでも話題の『映画ドラえもん のび太の新恐竜』。

川村氏曰く、「映像も音響も、映画館で観てもらうために緻密に作られている」という。ぜひ劇場に足を運んでその姿を確認してみてほしい。

※作品情報:『映画ドラえもん のび太の新恐竜
8月7日(金)より全国東宝系にてロードショー!

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