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近藤芳正、舞台開始20分でギックリ腰に…その後、生活を改善「58歳の今の方が体は動けますよ」

自ら発起人となり、5月6日(水)に「東京サンシャインボーイズ」のメンバー、相島一之さん、西村まさ彦さん、梶原善さん、甲本雅裕さん、小林隆さん、宮地雅子さん、阿南健治さん、小原雅人さんが集結し、三谷作品に縁のある吉田羊さん、野仲イサオさんもリモートで出演した『12人の優しい日本人を読む会』をオンラインで発信した近藤さん。

5月12日(火)と13日(水)には「劇団Zooooom!」の芝居『親父の面接』にリモート出演。そして6月5日(金)には下北沢・本多劇場で一人芝居『透明爆弾』を無観客で上演し配信するというはじめての経験も。

◆無観客による生配信の一人芝居は…

新型コロナウイルスの感染拡大がなければ、重松清さんの短編小説『ナイフ』を基にした一人芝居の公演で、東京をはじめ各地を回っていたはずの近藤さん。感染拡大防止のため、この舞台は中止となったが、本多劇場グループPRESENTS「DISTANCE」一人芝居『透明爆弾』に出演することに。

-活動自粛要請でドラマや映画の撮影は中断、舞台公演や稽古も軒並み延期、中止となりましたが、リモートで色々なことに挑戦されてお忙しそうでしたね-

「そうですね。5月6日の『12人の優しい日本人を読む会』の2週間ぐらい前からその連絡をしたりして。それで終わったら、若い人たちがやりはじめた『劇団Zooooom!』が5月中旬から。

そのあと本多劇場からやらないかと言われて、作家の人にお願いして、そこから稽古が始まって6月5日に本番だったので、結構いっぱいいっぱいでした。

もうちょっといろんなことができると思っていたんですよ。普段読めない本を読むとか、絵を描いたりとか…そういうことをやろうかなと一瞬思ったんですけど、結局何も手をつけないままでしたね(笑)。でも、お金には代えられない充実した2か月でした」

-無観客の劇場での公演というのはいかがでした?-

「貴重ないい経験でした。不思議な経験でしたね。実際、照明がつくとそんなに客席って見えないんですよ。

だから、目のほうはそんなに違和感はなかったんですけど、実際にお客さんがいたらどうなんだろうって。もしかしたら、笑いが起きていたかもしれないし、そうすると芝居のトーンも変わっただろうし。

それがないままなので、わりと演出の意図通りにやりました。はじめてのことだったし、それまでにしたことのない集中の仕方をしていたと思います。

不思議だったのは、終わった後、まだそんなに経ってないんですけど、もうかなり前のような感じがするんですよ。

なぜそんな遠い昔のような感じがするのかなって考えてみたら、お芝居はお客さんが笑ったり、終わった後に話をしたり、スタッフと打ち上げで飲んだりとか、いろんなことがアナログ状態であるわけですよ。

それがオンラインでの発信ですから、SNS上で感想とかを見たりはしているんですが、お客さんもいないなかで、しかも上演が1回だけ。

だから、脳に刻み込まれる要素が、普通の舞台よりも少ないんでしょうね。ちょっと不思議な感じで、『あれっ?本当にやったんだよなあ』っていう感じ。

それで、一応、生放送以外は一切配信しないということで、その時間に見逃した人は見られない。だから、『12人の優しい日本人を読む会』ほど感想が来るわけでもないし、なんか不思議な感じだなって」

-緊急事態宣言が解除されたとはいえ、お客さんを満席に入れられる状態までにはまだまだだと思いますが、その辺のことはどのように考えていらっしゃいますか-

「やってみて、いやっていうことはないです。また機会があっておもしろいものがあったら、それはやっぱり作品ですよね。

作品がおもしろいものであれば、それが成立するものであれば、無観客でもありだと思うし、時代とともに、エンターテインメントの価値観だとか、求められるものも変わっていくと思うんですよね。それに応じていくのがエンターテインメントだと思うので」

-実際にやってみて、できたという実績ができましたものね-

「それはたしかに、おっしゃる通りいい経験になりました。やっぱり、一人芝居をやるということは、すごく単純に、お客さんが目の前にいてもいなくても、ものすごく緊張したり、尋常じゃない集中の仕方をしましたからね。

それがひとつできたということは、自分のなかで、人生でひとつの挑戦をしたことで、何が成長したのかわからないけど、何か宝物を得た感じがします」

(C)ENBUゼミナール

◆新作映画では“色欲(しきよく)のおじさん”?

テレビや映画での活躍もさることながら、「劇団ダンダンブエノ」、ソロプロジェクト「ラコンチャン」を立ち上げ、さまざまな舞台公演を行っている近藤さん。海外のワークショップにも積極的に参加し、ワークショップを主宰して後進の育成にも尽力している。

7月11日(金)には『カメラを止めるな!』などを生み出したENBUゼミナールのシネマプロジェクト最新作映画『河童の女』(辻野正樹監督)が公開される。この映画で近藤さんは、ワークショップオーディションで選ばれた16人の新進俳優陣と共演している。

-近藤さん以外の方はシネマプロジェクトのワークショップオーディションの参加者ということですが、いかがでした?-

「撮影の前にリハーサルがあって、そのときに同じシーンじゃない方もいらっしゃったので、そこで顔合わせみたいな感じでした。

それで、目の前でみんながリハーサルをしているところを見させてもらったので、監督の意図とか、みんながどのように演じているかもわかりましたしね。

みんなにとっても、僕ってそんなに怖い存在じゃないんだっていうことがわかってもらえたと思うから、わりとスムーズに入れました。

出演者の何人かは僕のワークショップに来てくれたりしていて、その人たちが受かっていることがうれしくてね。それで楽しそうに演技をしているのを映像で見て、『あぁ、よかったなぁ』って」

-辻野監督は5年位前に書かれた脚本ではじめての長編作品ということで、思い入れもあったと思いますが、撮影はどうでした?近藤さんはとてもユニークな役でしたね-

「女と駆け落ちしちゃう色欲のおじさんでね(笑)。面白かったですよ。監督がはじめてだったので、補佐する助監督の方が経験のある方が付いていただいたりとかして、撮影自体はスムーズにいっていました。

撮影は飯能市(埼玉県)の『川波』という民宿で行ったんですけど、とてもいいところでした。僕は2日間、日帰りで行って撮影だったんですけど、みんなは寝泊まりしながら、一生懸命撮っていましたね」

-撮影で印象に残っていることはありますか?-

「『川波』の人たちの優しさ、そしてあそこの空気がすごくよかったんですよね。

空気感のよさ、それに、みんながワークショップに受かったという合格のうれしさがあるから、みんなそれぞれがそれぞれ、自分の想いの丈をものすごく一生懸命熱く演じようとしている。それがすごく、一緒に関わっているものとしては楽しかったですね」

-出演者の皆さんからご相談を受けたりすることは?-

「僕の息子役の青野(竜平)君は、映像経験がまったくはじめてだったので、2人で向かい合って話をしているシーンでカメラが僕の顔を正面から撮るときに、カメラの手前で演じている青野君の肩がカメラに入り込んじゃうことがあったんですよね。

だから、『一緒に芝居をするシーンでも、カメラが僕に向いているときは、動いて顔にかぶさるとNGになるから、動かないほうがいいんだよ』って言ったということは青野君とはありました。

40年以上役者としてやってきた経験はあるので、そのことを若い人たちに繋いでいくことは、一つの仕事だと思っています。

僕の考えを植え付けるのではなく、僕の考えを聞いた上で違う考えに変えるのもいいし、色々な繋ぎ方があると思うんですよね。

緊張したときにどうするかとか、共演者と仲よくなるにはどうするかとか、色々経験してきたことはワークショップでも話していますよ」

-コロナの影響で映画も公開が延期になったり中止になったりいろいろありますけれども予定通り公開されることになってよかったですね-

「本当によかったと思います。ありがたいことですよね。この時期になって通常通りに物事が進まないのが当たり前になってきているので、通常通りに進んでいる幸せ感というのはありますよね」

◆舞台開始20分でギックリ腰に

引き締まった体型で張りのある声、肌も艶々でとても若々しい近藤さん。健康の秘けつはよく眠ることだというが、健康について真剣に考えはじめたのは、40歳のときだったという。

「40歳のときに舞台上でぎっくり腰をやっちゃったんですよ。それもお芝居の前半の20分ぐらいでやっちゃって、そのあと1時間半ぐらいぎっくり腰のままでやっちゃったら、動けなくなってしまって。

しかも大阪だったので、どのお医者さんに頼んだらいいのかわからない状況で、とりあえず整体系で頼んで2時間くらいかけて何とか歩けるようになったんですけどね。

地方公演が長かったので、やっとの思いで東京に戻って来て、それからなかなか痛みが取れなくて。それで食生活も真剣に考えるようになりました。

お医者さんにも『あなたは人前に出る人でしょう?それがお医者さん任せではダメでしょう?このお医者さんに行ったら治るとかじゃなくて、自分でやっぱり日々ケアをして、自分のからだは自分で管理しないと』って言われたので。

『たしかにおっしゃる通りです』って言って、そこからすごく意識するようになりました。水を飲んだりとか、健康には気をつかっています。

日々やっているのは呼吸体操とか、自分の気に入った体操をやったりとか、ファイトケミカルスープというのを自分で作ってみたりとか」

-「継続は力なり」といいますけども、ちゃんとやり続けてらして-

「そう。だから40歳のときよりも、58歳の今の方が体は動けますよ」

-自粛期間で何か新たな発見はありましたか-

「Zoomを覚えたということ(笑)。あと、いろんなチャレンジをさせてもらったので、一番大きかったのは一人芝居ですかね。

ちょっと失礼に聞こえるかもしれませんが、僕は津川雅彦さんがおっしゃった『起きたことが正解』という言葉が心に響いていて、『これが今正解なんだ。この状況下が。これは決して悪いことではなく、これを正解としてとらえていく』という考え方がすごく自分のなかでポジティブにさせてくれるんです。

色々と困難なことが起きて明日どうなるかわからない。もしかしたら、2、3か月後には別の商売をしているかもしれない近藤という、今の自分の状態が楽しいです」

-どんな状況でもポジティブにいられるのはいいですね-

「そうですね。この状態がもしかしたら一生続くかもしれないし、その覚悟はあります。コロナがなくなっても、また違うウイルスが来たりする可能性もありますからね。ここ数年は何かしらあるんじゃないかなって。

これを大変だと捉えるか、起きたことが正解だと捉えるか。それでどうやって生きていくかっていう。

人間は変貌する生き物だと思っているので、本来。変貌していけばいいんじゃないかなって勝手に思っています。でも、それは僕には家庭がないし、子どももいないし、だからこんなに気軽なことが言えるというのもあります」

かつて経験したことのない新型コロナウイルス感染拡大の恐怖。エンタメ業界だけでなく、多くの業種に多大なダメージを与え、先行きが読めない状況だが、冷静に受け止め、新たなチャレンジを次々と実行している近藤さん。その行動力に元気が湧いてくる。新たなチャレンジが楽しみ。(津島令子)

(C)ENBUゼミナール

※映画『河童の女』
7月11日(土)新宿K’s cinema、7月18日(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開。
※各劇場先着50名様にオリジナルマスクをプレゼント!ロケ地・民宿「川波」にて公開記念キャンペーンも実施!
製作・配給:ENBUゼミナール
監督・脚本:辻野正樹
出演:青野竜平 郷田明希 斎藤陸 近藤芳正ほか
社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』を輩出したENBUゼミナール「シネマプロジェクト」最新作。
川辺の民宿で生まれ、そこで働きながら暮らしている浩二(青野竜平)の父親で社長の康夫(近藤芳正)が見知らぬ女と出て行ってしまう。途方に暮れる浩二の前に、東京から家出して来た女(郷田明希)が現れ…。

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