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トヨタ、ついにメキシコを制す!オジェが移籍3戦目でシーズン初勝利<WRC>

現地時間の3月12日~15日、2020年WRC(世界ラリー選手権)の第3戦「ラリー・メキシコ」が行われた。

©WRC

今年トヨタに加入し新たなエースとなった元ワールドチャンピオンのセバスチャン・オジェが、移籍3戦目にして今シーズン初勝利。自身6度目となるラリー・メキシコ勝利を手にした。

そしてトヨタにとっては、2017年WRC復帰以来未勝利だったラリー・メキシコをついに制することになった。

©TOYOTA GAZOO Racing

ただし、現在世界中を混乱に陥れている新型コロナウイルス(COVID-19)は、WRCにも大きな影響を与えている。

まず金曜日に、次戦ラリー・アルゼンチン(4月23日~26日開催予定)を延期することを発表。ラリー・アルゼンチン主催者は、「(延期決断は)非常に残念なことだ。しかし、世界は現在問題に直面しており、我々も関係者全員の健康を守ることを求められていることを理解している」と延期理由を発表した。

さらに、新型コロナウイルスは開催中のラリー・メキシコにも激震を走らせた。

土曜日午前、ラリー・メキシコ主催者は、ラリー日程を短縮し最終日のSS22~SS24は行わず、土曜日SS21までの走行で終了して最終結果にすることを発表した。

これは、WRCプロモーターとチームが、3月11日にアメリカ政府が13日午後11時59分から欧州26カ国からの渡航者に対して入国禁止を発表したことをうけ、ラリー・メキシコ主催者に対し、今後世界中で移動制限等が発生し、関係者の帰国が困難になる可能性を指摘し日程の短縮を求めたものだ。

この求めを受け入れる形で、SS21までのラリーで終了することをラリー・メキシコ主催者が発表。発表が土曜日午前となったことで、ドタバタのラリーとなってしまった格好だ。

◆暑さとの戦いに多くのドライバーが苦しむ

©TOYOTA GAZOO Racing

土曜日SS21で終了する形となったが、ラリー・メキシコの最終結果は以下の通り。

1位:セバスチャン・オジェ(トヨタ)
2位:オット・タナック(ヒュンダイ)/1位から27秒8遅れ
3位:ティーム・スンニネン(Mスポーツ)/同37秒9遅れ
4位:エルフィン・エバンス(トヨタ)/同1分13秒4遅れ
5位:カッレ・ロバンペラ(トヨタ)/同2分20秒5遅れ
(※6~8位はWRC2クラス、WRC3クラスドライバーが占めた)

ラリーでは、金曜日、どのドライバーも滑りやすいラリー・メキシコのグラベル(未舗装路)に苦労した。

©WRC

なかでも走行順のトップを走ることになったランキング1位のエバンス(トヨタ)は路面を掃除する役となってしまい、金曜日のSS6までトップから19秒1遅れの5番手に甘んじた。エバンスは、「路面はとても滑りやすかったけど、想定はしていたからね。結果はまずまずだと思うよ」と5位にもまずは「満足」と答えた。

一方、オジェ(トヨタ)は3番手スタートと順位に恵まれ、SS4でトップに立つと、その後は一度もトップを譲ることなくラリー・メキシコを走りきった。

©TOYOTA GAZOO Racing

順調に対応したトヨタと対照的に、暑さとの戦いとなるラリー・メキシコでは多くのドライバーが苦しめられた。

SS7ではダニ・ソルド(ヒュンダイ)がオーバーヒートでマシンを止め、エサペッカ・ラッピ(Mスポーツ)はSS7のゴール時点でマシンが炎上。被害を広げないためにラッピが決死の覚悟でマシンを移動させると、その後マシンは全焼してしまった。漏れたオイルが排気管に触れて炎上したものと思われるが詳細は不明だ。

さらにSS8ではティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)も電気系統トラブルでマシンを止めた。また、最大のライバルであったタナック(ヒュンダイ)は、SS3で総合トップに立ったがSS4で岩にマシンをぶつけてしまいサスペンションを破損。その後復活したが、タイムをロスしてオジェから大きく出遅れてしまった。

このように、オジェはライバルたちのトラブルもあり、木曜日から土曜日の終了まで余裕を持ってラリーを戦い、今シーズン初勝利を手にした。

◆豊田章男チーム総代表も喜びのコメント

土曜日終了後の公式会見でのオジェのやり取りは以下の通り。(※一部抜粋)

――見事な勝利でした。ただし、(新型コロナウイルスによって)普段とは非常に状況が違っています。どのような気分ですか。

「もちろんトヨタ移籍後初勝利を祝いたいけれど、このような状況だからね。ちょっと違う勝利という感じだ。自分自身は仕事をするだけだが、人々の健康の方が優先される。本来であれば、もっとメキシコのファンにお返しをしたいが、サインや写真撮影などに対応してあげることは出来なかった。ただ、いまは世界が対応しなければならない。ラリー自体はミスもなく良かった。ラリー・メキシコは毎回挑戦であり、今回はチャンピオンシップでも大きくポイントを稼ぐことが出来た」

――6度の勝利を4つの違う自動車メーカーから成し遂げました。そしてこの週末は何度か素晴らしい走りも見ることが出来ましたね。

「正直、木曜日は気分が良くなかった。この世界は毎日状況が変化する。水曜日にショックなニュース(アメリカによる欧州26カ国の入国禁止)を聞いて、睡眠が取れなかった。ただ、その後は自分の仕事をするしかないと気持ちを切り替えた。金曜日になると随分と気分がよくなり、その後はマシンも完璧だった。とくに問題もなく勝利を手にすることが出来た。ここメキシコでいい気分を味わえたよ」

©TOYOTA GAZOO Racing

このオジェの勝利を誰よりも喜んだのは、豊田章男チーム総代表だ。チームリリースを通じて、チームをねぎらった。

「WRC復帰以来、毎年苦しい思いをしてきたラリー・メキシコで、ついに優勝することができました。オジエ選手、イングラシア選手おめでとう。ありがとう。最初の2年はオーバーヒートで完走もままならぬ状況でした。ラジエーターを開発するエンジニアたちも努力を続けてくれて、ようやく手にした優勝です。改善を続けてくれたラジエーターエンジニアたちの“冷却魂”にも感謝したいと思います。
(中略)
次戦のアルゼンチン戦の延期も発表されていますが、ヤリスWRCが元気に走る姿をファンの方々に見ていただける日が、一刻も早く訪れることを願っております」

こうして波乱のラリー・メキシコは終了。日曜日が短縮されたため、今回はパワーステージのポイント加算はない。ドライバーズチャンピオンシップは以下の通り。オジェがランキングトップに躍り出た。

1位:セバスチャン・オジェ/62ポイント
2位:エルフィン・エバンス/54ポイント
3位:ティエリー・ヌービル/42ポイント
4位:カッレ・ロバンペラ/40ポイント
5位:オット・タナック/38ポイント
6位:ティーム・スンニネン/26ポイント
7位:エサペッカ・ラッピ/24ポイント
8位:勝田貴元/8ポイント
9位:セバスチャン・ローブ/8ポイント

マニュファクチュアラーズチャンピオンシップは、トヨタが差を広げて110ポイントを獲得。2位がヒュンダイで89ポイント、3位がフォードを使用するMスポーツで65ポイントとなっている。

©TOYOTA GAZOO Racing

新型コロナウイルスの影響で、次戦ラリー・アルゼンチンは延期が決定。その先も現状ではいつ再開となるか不明な状況だ。

WRCだけではなく、F1、INDY、WECなど、すべてのモータースポーツで延期や中止が発表されている。まずは人々の日常が一刻も早く戻ることを願いたい。そして、モータースポーツを含めたあらゆるイベントが早期に再開されることを祈るばかりだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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