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リチウムイオン電池は何が革命だったのか?<ノーベル化学賞・吉野彰氏インタビュー>

日々の移動手段として欠かせない電車。首都圏を走る電車の床下には、意外なモノが積まれていることをご存じだろうか。

その正体は、リチウムイオン電池。リチウムイオン電池は、大規模停電等が発生した際、車両を最寄りの駅まで走行させることを目的に搭載されている。

今やリチウムイオン電池は我々の生活において、切っても切り離せない存在となっている。

たとえば、スマートフォン。

長時間使用されるほとんどのモバイル機器にはリチウムイオン電池が使われていると言っても過言ではない。

そんなリチウムイオン電池の“開発の父”と呼ばれるのが、旭化成名誉フェローの吉野彰(よしの・あきら)氏だ。

©テレビ朝日

2019年、ノーベル化学賞の栄誉に輝いた吉野氏は、いかにしてリチウムイオン電池を開発したのか。

2月22日(土)に放送される『CHANGE YOUR LIFE~ノーベル化学賞・吉野彰が変えたもの~』では、吉野氏にインタビューを行い、リチウムイオン電池ができるまでの経緯、そして“意外な”活用法について語ってもらっている。

いったい、リチウムイオン電池の発明は何が革命だったのか?

不思議な不思議な、リチウムイオン電池の世界を覗いてみよう。

◆最大の問題は「負極材料を何にするか?」

ーーリチウム電池が開発された1980年代は、どのような時代だったのでしょうか。

吉野氏:当時は、携帯型の二次電池のマーケットはそんなに大きくなかったんです。せいぜい電気カミソリくらい。ところが、1985年あたりにいろんな機器のポータブル化が広まってきた。その先陣を切って動いたのが、8ミリビデオカメラでした。

電池が小型軽量型にならんとどうにもならんということで、当時はそのビデオカメラにリチウムイオン電池が入れば大きなマーケットになる、ということで研究開発が始まりました。結果的には携帯電話とかスマートフォンの採用につながっていきました。

ーー1980年代、世界の研究者はこぞってリチウムイオン電池の開発に躍起になっていました。しかし、簡単に開発は進まなかった。なぜでしょうか。

吉野氏:金属のリチウムは、水に触れると燃えやすい性質がありました。そのため、安全を確保すべく、独自の実験方法を採用して検証を続けていました。たとえば、電池に重さ5キロの鉄の塊を落とす実験をしたり、ライフル弾を貫通させたりするなど、あえて電池を過酷な状況に置き、検証を繰り返しました。

ーーほかにも、負の電極としてどの素材を採用するのかが焦点だったようですね。

吉野氏:当時、注目されていた新しい素材として、ポリアセチレンというものがありました。これを電池の負極に待っていくのが面白そうだ、と研究が盛んに行われたのですが、ことごとく商品化に失敗してきました。負極をいかに完成させるかが問題だったのです。

ーー負極の材料選びはどのように進んでいったのでしょうか。

吉野氏:材料候補はポリアセチレンから始まって、最終的にはカーボン材料に切り替わっていきました。ここが開発過程で一番の重要なポイントでした。とはいえ、どんなカーボン材料でいいというわけではない。新しいカーボン材料は、たまたま旭化成の別の研究所でVDSFという新しい炭素繊維の研究をやっていた過程で使っていたので、それを採用したという経緯です。

◆意外な場所で使われているリチウムイオン電池

ーーこうして1980年代に普及したリチウムイオン電池は、現在に至るまでモバイル機器に備わっている必須のアイテムとなりました。吉野さんが、リチウムイオン電池が使われているシーンで驚いたことはありますか?

吉野氏:一つはモバイルITの電源です。携帯、スマホ、コンピューターとかですよね。今ではごくごく普通に使っています。さらに、意外な使い方でいうと、「陸・海・空」という合言葉があるんですよ。

ーー「陸・海・空」とは?

吉野氏:「空」で言いますと、探査機のハヤブサってあったじゃないですか。あれは太陽電池で発生させてリチウムイオン電池に電気を貯めているんです。今後は電動飛行機が出てくるという話もあります。

ーーなるほど。

吉野氏:「海」は、深海の探査。具体的には、JAMSTECK(海洋研究開発機構)の探査で重用されています。深海に潜って滞在し、浮き上がるまでの時間はリチウムイオン電池が探査機に使われています。

ーー「バッテリーが持つ」というのがポイントですね

吉野氏:最後に「陸」。これはなんといっても、クルマでしょうね。電気自動車です。まさにこれからの話だと思うんですが、クルマへのリチウムイオン電池の普及は、リチウムイオン電池の次の大きなミッションでしょうね。

ーー吉野さんは、交通の未来のビジョンとしてどういうものを思い描いていますか?

吉野氏:現在、車から排出されるCO2はグローバルで言えば14%なんですよ。だから車の観点からいうと、リチウムイオン電池が普及すれば、排出量が14%から0%になるだけで、それだけだとあまり意味がない。一番排出量削減につながるのは大きい発電所のCO2削減なんですよ。いまの排出量が35%かな。

ーー発電所ですか。

吉野氏:はい。車がゼロエミッション化されることによって、発電所からくるCO2が減りますよ、というシナリオにつながらないといけない。車と発電所のCO2排出量を足せば50%になります。これが0になれば、排出量は半減ですよね。

ーー環境問題を解決することにリチウムイオン電池が貢献する点は大きいですね。吉野さんが考える未来のクルマ社会とは、どのようなものでしょうか。

吉野氏:無人の車が走っていて、勝手に呼び出せる社会ですね。クルマは個人所要せず、シェアリングの概念が広がる。個人のエネルギー負担とコストが下がるんですよ。

シェアリングの概念が広がるためには、クルマが無人化している、IOTにより情報を共有している状態は必須。加えて、電動化でなければならない。無人のクルマが自分でエネルギー補給できる状態にならなければならない。

さらに、各家庭に蓄電池を設置する。その全部ができあがって、初めて再生可能なエネルギーが普及するでしょう。ですから、クルマに積んであるリチウムイオン電池が相当な働きをすると思いますよ。

3・11のときはリーフ(日産の電気自動車)がすごく活躍したというのは印象に残ってますよね。最近でいうと、2019年の千葉の台風のときに多くが停電になりましたよね。あれも一部は電気自動車が出向いて給電する、そういうのは現実的には起こっていますからね。

22日に放送される番組内ではさらに、吉野氏が思い描く、リチウムイオン電池が実現する未来について迫る。

リチウムイオン電池が秘める可能性とはどのようなものなのか。

スマートフォン以外にも使われているリチウムイオン電池の意外なメリットとは?

そして、次のノーベル化学賞で日本人が受賞する可能性は?

その答えは番組で明らかになる。ぜひご覧頂きたい。

※番組情報:『CHANGE YOUR LIFE~ノーベル化学賞・吉野彰が変えたもの~』
2020年2月22日(土)午前10:30〜午前11:00、テレビ朝日(関東ローカル)

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