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<WRC>深刻な雪不足は北欧にも。コース短縮の第2戦、トヨタはラトバラがスポット参戦

2020年のWRC(世界ラリー選手権)第2戦は北欧の地・スウェーデンにて開催される「ラリー・スウェーデン」(2月13日~16日開催)だ。

©WRC ※昨年の様子

今年のWRCカレンダーを今一度確認すると、冬らしい景色で行われるのは開幕戦のラリー・モンテカルロと今回のラリー・スウェーデンのみ。

そんな、本来はスノーラリーが名物であるラリー・スウェーデンだが、今年は深刻な問題に直面している。それは雪不足。日本でも暖冬によってスキー場が苦境に立たされていることなどが報じられているが、それは北欧の地でも発生している問題だった。

今年のスウェーデンは暖冬で深刻な雪不足となっており、「スノーラリーを開催できないのでは?」という憶測も流れたほどだ。しかし、2月4日に主催者がコース短縮をする形で開催が決定した。

雪不足によるコース変更としては、当初は木曜日からの4日間開催で19ステージを予定していたが、多くのステージがキャンセルとなり、2月10日時点で主催者が公表したコースマップは金曜日4ステージ、土曜日4ステージ、日曜日2ステージの3日間合計10ステージとなっている。

©WRC ※昨年の様子

木曜日に予定されていた特設コースを走るSS1はキャンセルされたものの、シェイクダウンとして残り、木曜日も観客が楽しめる形は守られた。しかし、迫力あるジャンプで有名な「コリンズクエスト」などの名所は雪不足でキャンセルとなっており、主催者は「新たなお気に入り場所をぜひ見つけてほしい」と来場予定のファンに向けて発表している。

◆ヤリ‐マティ・ラトバラがスポット参戦

雪不足は関係ないが、参加するドライバーにも変更があった。

ヒュンダイから出場予定だった元ワールドチャンピオンのセバスチャン・ローブに代わり、今回はクレイグ・ブリーンが出場することになった。

ブリーンは2018年のラリー・スウェーデンにシトロエンから出場して2位表彰台を獲得しており、2019年にはラリー・フィンランド、ラリー・グレートブリテンで2度ヒュンダイのマシンに乗っているので、その実績が買われた模様だ。

たとえ元ワールドチャンピオンであっても、結果次第でシートは奪われてしまう。今回のドライバー交代は、そんなモータースポーツの厳しい一面が垣間見えた。

©TOYOTA GAZOO Racing

トヨタは今回も、セバスチャン・オジェ、エルフィン・エバンス、カッレ・ロバンペラのレギュラードライバーに加えて、ヤングドライバー育成プログラムの勝田貴元が出場する。

さらに、昨年までトヨタに所属していたヤリ‐マティ・ラトバラが、スポット参戦ながら再びヤリスWRCに搭乗する。ラトバラはガズーレーシングから今夏発売が決定しているヤリスGR-FOUR(※)のマーケティングにも参加するなど、トヨタとの縁が続いていることがラトバラ本人から語られた。

「今もまだトヨタの一部であることが本当に嬉しい。久しぶりのドライビングなので、“帰ってきた!”という感覚だよ。今年のラリー・スウェーデンで気をつけなくちゃいけないのは雪不足で、これまではあった雪壁などのエスケープ利用できた部分がないこと。轍などは、より直接的(車体ダメージ)に影響する。高速ラリーであることなどは変わらないと思う。

新たな仕事としては、トヨタと話をして、新型ヤリスGR-FOURにもマーケティング面で関わることになった。今回のラリーは楽しみたい。そして結果も持ち帰られたら最高に興奮するね」

また、前回のラリー・モンテカルロで時速160km以上でコースアウトしマシンがクラッシュしてしまったヒュンダイのオット・タナックが無事参加することになっている。ラリー・モンテカルロで優勝したティエリー・ヌービルとのチーム内争いにも注目していきたい。

◆トヨタドライバー、“出走順”に意識

初戦に勝利したヌービルは今回のラリー・スウェーデンについて、「例年と違って凄く難しい状況だね。(雪不足で)いつもよりグラベル(未舗装路)部分が多い。陽が当たって雪が溶けてしまっている部分もあるし、まだ最終的なセッティングなどは決まっていないけれど、とにかくラリーは始まるからね」と難しいラリーになることを予想している。

また、今シーズン初勝利を目指すトヨタのレギュラードライバーたちによるコメントはチームリリースを通じて発表された。

※セバスチャン・オジェ

©TOYOTA GAZOO Racing

「スウェーデンはとても好きなラリーです。年間カレンダーの中で唯一完全に雪上で行われる魅力的なイベントですし、雪の上での運転は自分にとって特別なものです。過去に何度か良い結果を残してきたので、もちろん今年も良い走りをしたいと思っていますが、ここ数年はやや苦戦しています。

その原因のひとつとして、出走順の影響があると思います。選手権リーダーとして、トップで出走するのはとても大変でした。しかし、今年は少し状況が変わるので、どうなるのか様子を見たいと思います。

ラリー・モンテカルロは、チーム全員にとって非常にポジティブなスタートになりましたが、きっとスウェーデンでも我々の戦闘力は高いはずなので、良い結果が得られることを期待しています」

※エルフィン・エバンス

©TOYOTA GAZOO Racing

「ラリー・スウェーデンをとても楽しみにしています。雪上テストでのクルマのフィーリングは素晴らしかったので、今回も良いイベントになることを期待しています。初めてヤリスWRCで臨んだラリー・モンテカルロは、さらに良い結果を得られたかもしれませんが、全体的にはポジティブなスタートになりました。

コンディションにもよりますが、スウェーデンでは出走順が大きな影響を及ぼす可能性があります。もし、路面に滑りやすい雪が大量に積もっていたとしたら、出走順が後方の選手にとって大きなアドバンテージになるでしょう。それでも、自分としては他のラリーと同じように、最初のステージから全力で挑むのみです」

※カッレ・ロバンペラ

©TOYOTA GAZOO Racing

「スノーラリーはとても楽しいので、僕らにとってラリー・スウェーデンはきっといいイベントになるでしょう。ラリー・モンテカルロよりは難しくないと思いますが、その分だけ限界までプッシュする必要があります。ここまでのところヤリスWRCの運転をとても楽しんでいますし、特に雪の上では本当に素晴らしいクルマだと感じています。

1月にヤリスWRCで出場したスノーイベントのアークティック・ラリーは、スウェーデンに向けて良い準備になりました。ただし、今年のスウェーデンは今のところあまり雪が多くなく難しいコンディションになるかもしれないので、その経験が助けになることを期待しています」

ラリー・スウェーデンの現在のプログラムを確認すると、木曜日のSS1はキャンセルされシェイクダウンステージとなったので、金曜日のSS2が最初のスタートとなる。

SS2の現地スタート時間は午前8時42分から、日本時間では金曜日の午後4時42分からのスタートとなる。はたして、トヨタは2017年、2019年優勝と相性の良いラリー・スウェーデンで今季初勝利を上げることができるのか。注目していきたい。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

※ヤリスGR-FOURは、専用Webサイトにて6月30日まで最初の予約を受付中。