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3度の五輪挑戦も叶わず…「そだね~」の裏で誓った“決意”。カーリング女子・北海道銀行の挑戦

©Get Sports

2年前の平昌オリンピック。カーリング女子日本代表、ロコ・ソラーレが日本勢として史上初となるメダルを獲得した。

その戦いぶりは大きな注目を集め、大会中に彼女たちが連呼していた「そだね~」が年間流行語大賞に選出されるなど、空前のブームともなった。

そしてこれが刺激となり、女子カーリング界は“戦国時代”に突入

現在はロコ・ソラーレ(北海道)にくわえ、中部電力(長野県)、北海道銀行フォルティウス(北海道)、チーム富士急(山梨県)という4つのチームが2022年の北京オリンピックを目指して、しのぎを削っている。

1月19日(日)深夜に放送されたテレビ朝日のスポーツドキュメンタリー番組『Get Sports』では、その4強の一角・北海道銀行フォルティウスに密着。彼女たちの戦いの日々を追った。

◆北海道銀行フォルティウスの栄光と挫折

札幌に拠点を置く、北海道銀行フォルティウス。

現メンバーは、過去3度のオリンピック出場を誇るベテラン・船山弓枝(41歳)を筆頭に、バンクーバーオリンピックに出場経験のある近江谷杏菜(30歳)、同チームでソチオリンピックを戦った小野寺佳歩(28歳)、司令塔であるスキップを務める吉村紗也香(27歳)の4人である。

元々のチーム創設者は、女子カーリング界のレジェンドとも言える小笠原歩。

©Get Sports

小笠原は中学時代、盟友・船山(旧姓・林)弓枝らとともに「シムソンズ」というチームを結成。徐々に力をつけ、ついには2002年ソルトレイクシティーオリンピックへの出場を果たす。ここまでの物語は、後に『シムソンズ』として映画化もされている。

小笠原は、その後結成した「チーム青森」でも2006年トリノオリンピックへの切符を掴み、オリンピック連続出場。そして結婚・出産を経て、2010年に結成したのがこの北海道銀行フォルティウスだ。

有望な若手を次々と引き入れて着実に力をつけ、2014年ソチオリンピック出場を勝ち取った北海道銀行フォルティウス。

©Get Sports

その後も世界選手権代表を務めるなど、常勝チームの名を欲しいままにするが、その天下は長く続かなかった。

ソチオリンピックまでチームメイトだった吉田知那美が加入するなど急成長したロコ・ソラーレに、2016年の日本選手権で敗れ、王座陥落。平昌オリンピック出場も逃してしまう。

そして、ロコ・ソラーレのオリンピックメダル獲得に湧く中、ひっそりと創設者・小笠原歩が退団。結果が出ないことに責任を痛感した末の決断だった。

◆誇りを取り戻す戦いへ、それぞれの想い

チームを支え続けた大黒柱が去るという、大きな転機。

悩み抜いた末、残されたメンバーたちは4人での再スタートを決める。そこには、それぞれに戦いを続ける理由があった。

例えば、小野寺佳歩。

©Get Sports

彼女は初のオリンピックとなったソチ本番直前、インフルエンザを発症するという危機に見舞われた。

数試合を経て、何とか戦列に復帰したものの、大事な場面で思うようにショットを決められない。結果、チームは競り負ける展開が続き、メダル争いから脱落してしまった。

試合後、小笠原歩がインタビューに答えている後ろで、号泣し座り込む小野寺がいた。

彼女はこの経験を「人生で一番悔しい想いをした大会です。あの敗戦は今の原動力になっています」と語っている。

悔しい想いをしてきたのは小野寺だけではない。吉村紗也香はメンバーで唯一オリンピックを経験していない選手だ。

©Get Sports

カーリングの聖地と言われる北海道・常呂町で生まれ育った吉村。幼馴染と結成したチーム「WINS」でメキメキと力をつけ、大学生の時には世界ジュニア選手権で銅メダルを獲得した。

しかし、このチームでオリンピックへは2度挑戦したものの夢を果たせず、2014年に意を決して北海道銀行フォルティウスへ入団した。

「4年後の平昌オリンピックに出るために、北海道銀行を選びました」

入団会見で、そう語っていた吉村。その後、チームの司令塔である小笠原の英才教育を受けてきたが、3度目のオリンピック挑戦も叶わなかった。

吉村は平昌の地にまで足を運び、日本代表の戦いを目に焼き付けたという。

悔しさと、4年後はここに立ちたいという、そんな思いがありました

思いを新たにした吉村は、小笠原退団後の新体制で司令塔・スキップを志願。そこには、次なるオリンピックを自らの手で叶えるという強い決意がにじんでいた。

◆復活へのキーワードは“安定性の向上”

2019年夏。彼女たちの姿は氷上ではなく、陸上競技場にあった。

©Get Sports

プロの陸上コーチを招いて、身体の動かし方を学んでいたのだ。その理由は、“安定性の向上”

カーリングというスポーツは、投げ手、氷を掃く2人のスイーパー、指示をする者の4人が、逐一変わる状況に対応しながら、理想の位置へストーンを運ぶ競技。トップクラスともなれば、ストーン運びにミリ単位の精度が要求される。

北海道銀行フォルティウスは長丁場の戦いの中でその精度が次第に落ち、失点に繋がるケースが多くなっていた。

そこで、より高いレベルの安定性を得るため、身体をイチから見直すことを決意。決まった動作にこだわらず、ハードルやボールを使ってのトレーニングなど、様々な動きを通して身体のパーツひとつひとつを再開発していった。

さらに陸上トレーニングに限らず、マウンテンバイクやカヌー、トランポリン、スポーツクライミングなど、様々なジャンルのスポーツを通じて、身体づくりも行った。

中でも、定期的に取り入れるようになったのがバレエストレッチ。

バレエダンサーの持つしなやかさと軸の強さは、カーリングのストーンを投げる際の安定に繋がると考えたのだ。

そして鍛えた身体を、氷の上で活かしていく。

©Get Sports

ミーティングでは、トレーニングの映像を見ながら、効率の良い投げ方や氷の掃き方について互いに意見を交わした。

近江谷はチームの状態を「どこに行くか分からない変化の最中」と表現しながらも、「新しいことにチャレンジすることを恐れていない」と捉えている。

こうして様々な取り組みを行い、進化の過程にある北海道銀行に、その成果を試す舞台が訪れる。

◆最大のライバルとの戦い

昨年12月、軽井沢で行われた「ワールドカーリングツアー 日本大会」。

北海道銀行の準々決勝の相手は、平昌オリンピック銅メダリスト、ロコ・ソラーレ。これまで取り組んできた安定性向上の成果を試すには絶好の機会である。

勝負どころとなったのは、北海道銀行フォルティウスが1点リードして迎えた第5エンド。両チームともに2投ずつを残し、黄色のストーンの先攻・ロコ・ソラーレの1投目。

©Get Sports

ハウスの中心にストーンをビタリとつけ、中を固める。

対する後攻・赤色のストーンの北海道銀行フォルティウス、吉村紗也香の1投目は、押し切ることができず、中心に相手のストーンを残してしまう。

続いてロコ・ソラーレは、手前にストーンを並べ、北海道銀行フォルティウスの進路をふさぐ。

残すは北海道銀行フォルティウス、最後の1投のみ。ここで北海道銀行は入念に戦略を練る。そして導き出したのは、自らの赤いストーンを弾き飛ばし、中心近くの赤に当て、黄色をハウスの外に押し出すこと。

©Get Sports

決まれば、最高4点を獲れるスーパーショットだが、わずかな狂いも許されない緻密さが求められる。

放たれた吉村のストーンは、ほんの僅か、狙いが外れ、黄色が1つハウス中心に残ってしまった。これで相手に1点を献上し、同点に追いつかれる。

その後、延長戦にまでもつれたものの、結果は敗戦。だが、メダルチームを相手に北海道銀行フォルティウスは、互角の戦いを見せた。

試合後、吉村は「最後まで集中力を切らさずエキストラ(延長戦)まで行って、本当にいい試合は出来ました」と手ごたえを口にした。

◆乱世の誓い

最大のライバルとの直接対決から1週間後の2019年末。

北海道銀行フォルティウスは、カーリング界では異例となる、一般公募による新メンバーのトライアウトを行った。狙いは、新戦力加入によってチーム内のレギュラー争いを活性化させること。

©Get Sports

選手たちは集まった受験者らを前に、「たくさんの方に応募していただいて、嬉しい気持ち」(吉村)「ここから選手が育っていってくれるのも楽しみ」(船山)と、大いなる希望を語った。

北京オリンピックまで早くも2年に迫った2020年、復活へのステップを駆け上がらんとする、北海道銀行フォルティウス。

4強ひしめく“女子カーリング戦国時代”という乱世を生き抜き、どう勝ち残るか…本当の戦いはこれからである。

※番組情報:『Get Sports

毎週日曜日夜25時30分より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)

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