元日本代表・中山雅史、15年に復帰後いまだ公式戦出場なし…52歳となった今も現役を続ける理由
52歳となった今でも挑戦を続ける、サッカー元日本代表の中山雅史。
現在、中山はJ3のアスルクラロ沼津で選手としてサッカーを続けながら、同クラブのU18でコーチとして次世代の選手育成にも携わっている。さらに、その合間を縫ってテレビでサッカーの解説者として活躍するなど、“3足のわらじ”を履きこなしながらサッカーと関わり続けている。
2012年に一度引退、2015年9月にアスルクラロ沼津で現役復帰をはたすが公式戦の出場はまだない中山。「ボールを思いっきり蹴りたい」「ダイビングヘッドがしたい」ボロボロの膝と向き合いながら、練習場で日々大粒の汗を流している。
12月29日(日)に放送される『Dream Challenger 〜夢に挑む者たち〜』では、もう一度ピッチに立つ日を夢見ながら、度重なるケガと向き合い奮闘する中山雅史にインタビュー。現役を続けながらアスルクラロ沼津U18のコーチになった理由を聞いた。
中山:いまJFA公認S級コーチライセンスを取得中で、実はカリキュラムの部分は終了しています。でも、指導実績が足りないということで、今年1年間沼津のユースにコーチ登録させてもらっています。コーチと言っても、アシスタント的な立場なんですけどね(笑)。
コーチとして子どもたちを教えるなかで、自分も色々と気がつくことがあります。「この場面では、こういう動きが必要だ」「この局面で切り替えが遅かったら、なかなかチームの戦力にならないな」とか、子どもたちのプレーと自分のプレーを重ねて思い返すこともあります。
自分は、どちらかというとサッカー選手としての中山雅史に全力を投じたいという気持ちが強かった。だから現役としての生活を続けるために、コーチをしていることが非常に役立っているなと感じます。選手を教えるなかで、自分のプレーを顧みることができるので。
◆重要なのは、自分に対してどれだけ厳しくできるか
「苦境というか、怪我は多かった」と自身のキャリアを振り返る中山雅史。
中山といえば、98年のフランスW杯・ジャマイカ戦でみせた骨折しながらのゴールなど、逆境のなかでも諦めない粘り強いプレーが印象的。そんな中山はコーチとして、若い選手たちにどんな言葉をかけて、苦境を乗り越えるためのヒントを与えているのだろうか。
中山:最後まであきらめずに戦い抜く気持ちを持って、ピッチに入るということです。先制されたり、逆転されたり、そういった苦境に直面したときに跳ね返すだけの力やメンタルを選手たちには持ってもらいたいなと思います。
そのために重要なのは、自分に対してどれだけ厳しくできるかです。自分を律して、それをプレーに反映できるかが選手の成長に繋がると考えています。
「これだけでいいんだ」って妥協するんじゃなく、諦めないことと満足しないこと。そんな気持ちをいつも、持っていてほしい。
またそうしたことに、はやく気づいたもの勝ちじゃないかなと思います。
そして、気づいたことを自発的に行動へと移すことが重要。試合中に、どれだけ走れるかで偶然を必然にすることも出来るんです。
例えば、試合中ずっとパスが来なくてもゴール前に走り込んでいたとします。そこで、1回だけ転がって来たこぼれ球を押し込んでゴールを決めたら、その場面しか見ていない人には“偶然のゴール”に見えるかもしれません。でも、僕はいつもその場所に詰めていたから、そこにきたボールを押し込めたと思うんです。その1点は、偶然なんかではなくて必然なんですよ。
そうしたことが大事だと、どこで気づけるのか。「今日はこれで辞めておこう」じゃなくて「これだけでいいのかな」と考えてほしいですね。
マイナスになる部分もあるのかもしれないですけど、日々自問自答して、また新たな気持ちを持って練習に臨んでもらいたい。それの繰り返しだと思います。そういう“挑戦”を続けてもらいたいですね。ただ、やりすぎはいけないですけど。
◆中山雅史がサッカーを続ける理由
2012年には、両膝の故障を理由に現役から1度退くことを決めた中山だったが、2015年に当時JFLに所属していたアスルクラロ沼津で現役復帰を果たした。中山は、そのときの気持ちをこう振り返る。
中山:とにかくサッカーを楽しくやりたい…そこが大きかったですね。
現役から退いた後、自転車を漕いだり、筋トレをしたり、ランニングをしたりしてリハビリは続けていました。
そうしていくうちに、だんだん現役を退いたときよりもレベルアップしたことが出来るようになったんです。全盛期の頃に比べると、全然レベルは高くないことですけど(笑)。
そんなときに、アスルクラロ沼津に声をかけてもらいました。まだまだ課題は多いなっていうのは実感します。なかなか厳しいですよね。
こうして現役復帰することとなり、現在は選手、コーチとして練習場を駆け回る日々を送っている。その合間を縫って、テレビで解説者としての仕事も続けている。いまではすっかりおなじみになっている中山のテレビでのやり取りだが、実は本人曰くテレビの仕事は「緊張感いっぱい」だという。
そんな中山に「解説とW杯のピッチだったら、どちらが緊張するか?」を聞いてみた。
中山:それぞれ別の意味の緊張ですね。サッカーなら、自分で何かやらかしても「取り返してやる!」ってプレーに変えられる。でも、テレビに出たときは「取り返してやる!」って考えると、だいたい墓穴を掘るので(笑)。
フランスW杯のときは、緊張していたと思う。色んなプレーの選択を間違えたなって場面もあった。
単純に自分に技術・戦術がなかったり、状況判断が甘かったりっていうのもあるんだけど。緊張していたから、判断をより鈍らせたのかもしれない。もったいないですよね、せっかくW杯のピッチに立てたのに…。
だからW杯が終わってから、もっともっと練習しなきゃって思うようになりました。沼津の選手たちにも、いろんな“大舞台”を経験して大きくなってもらいたいなと思います。
選手・コーチ・解説者とサッカーに関する異なる3つの“ポジション”で奮闘する中山。最後に「自分にとってサッカーとは何ですか?」という質問を投げかけてみた。
中山:なんだろうなぁ…。一番自分の素を出せるものかもしれないですね。すべての素直な感情が、そこから生まれてくる。
まぁよく「サッカーとは何ですか?」って聞かれますけど、自分でも何だろうって思いますね(笑)。
その答えがまだ見つけられてないから、現役を続けているのかもしれない。一生、見つけられないのかもしれないですが。
◇
中山雅史への密着取材の他にも、12月29日(日)に放送される『Dream Challenger 〜夢に挑む者たち〜』では、夏の甲子園で星稜高校を準優勝に導いたバッテリー・奥川恭伸投手と山瀬慎之介捕手に、大先輩・松井秀喜さんが金言を送る他、2019年の箱根駅伝で悲願の初優勝を遂げた東海大学のキャプテン・館澤亨次の復活の時に迫る。
※番組情報:『Dream Challenger 〜夢に挑む者たち〜』
2019年12月29日(日) よる11:15〜0:15、テレビ朝日系列全国24局ネットで放送