東京五輪で走る“馬”を世話。日本の馬術を支えるフランス人女性の愛と情熱
テニスの現役を退いてから、“応援”することを生きがいにしている松岡修造。
現在は2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて頑張る人たちを、「松岡修造の2020みんなできる宣言」と題して全国各地を駆け巡って応援している。
今回修造が訪れたのは、ドイツ北部の町、トラッペンカンプにある馬術のトレーニングセンター。
ヨーロッパ中から一流の馬と選手が集まるこの場所は、東京オリンピックで88年ぶりのメダルが期待されている日本総合馬術のキャプテン・大岩義明の練習拠点でもある。
その大岩を支えているのが、フランス人のシャーロット・ワンオメスラグさん(32歳)。「グルーム」といわれる、エサをあげたり、馬小屋を掃除したりする、いわゆる馬の世話係だ。
◆グルームの仕事は「子守のようなもの」
人と馬のコンビネーションが求められる総合馬術。クロスカントリーでは様々な障害を越えるが、少しでも息が合わないと転倒することも多い。馬にとって危険がつきまとう過酷な競技だけに、シャーロットさんは日々の世話だけでなく、アイシングなどのケアも怠らない。
「子守のようなものです。まるで自分の子どものようで、みんな性格も違いますね」
グルームの仕事をそう表現したシャーロットさんは、大岩が保有する3頭の馬を世話している。その中でオリンピックに出られるのは1頭だけ。それぞれの馬の特徴を誰よりも熟知しているのはシャーロットさんだ。
オリンピックに連れていく馬について聞いてみると、「東京2020のクロスカントリーコースは、彼に合うと思います。体型が少し曲がっている感じと、小柄なところが合っていると思いますよ」と、母のような表情で語ってくれた。
◆24時間体制で馬のケア
言葉がわからない動物相手だからこそ、グルームの仕事は24時間体制。例えば、遠征の際は選手やグルーム、そして馬も一緒にトレーラーで移動するのだが、そのトレーラーにはある工夫があった。
シャーロットさんのベッドの脇には、なんと小窓が。小窓の向こうは馬小屋で、いつでも馬の様子を確認できるようになっているのだ。
このトレーラーでヨーロッパ各地を転戦し、時には3000キロも移動することもあるという。
「とても心地良いトレーラーです。1年の半分を過ごすので、良い環境でないとね。ただ、家族には年に1度しか会えません」
遠征先でもグルームに休む暇はない。試合前、大岩たちが向かったのはコースの下見。馬術では、予め馬とコースを走って練習することができないので、下見はとても重要だ。その輪の中にもシャーロットさんの姿があった。どう馬をケアするか、参考にしているのだ。
そして試合を終え、小屋に帰ってきたのは夜中。こうした馬とつきっきりの生活を実に14年間、いくつものチームを渡り歩きながら続けてきた。
シャーロットさんには、グルームとしての信念がある。それは“常に馬が優先”ということ。
「休む時も馬が先です。情熱がないとこの仕事はできません。長時間労働ですし。馬と騎手に人生を捧げるようなものですね」と言う彼女は、来たる東京2020についてこう言葉を継いだ。
「大きな目標達成です。馬と一緒にやってきて、その長年の努力が報われる。そういう達成感を味わえるところです」
シャーロットさんのできる宣言は「東京2020では、すべての情熱を捧げて、ベストを尽くします!」。修造は「シャーロットの情熱を東京で!」と熱いエールを送った。
※番組情報:『TOKYO応援宣言』
毎週日曜あさ『サンデーLIVE!!』(午前5:50~)内で放送、「松岡修造の2020みんなできる宣言」も好評放送中、テレビ朝日系