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来年の“10年ぶり”ラリー・ジャパンに向け。<セントラルラリー愛知・岐阜2019レポート>

2019年のWRC(世界ラリー選手権)は、最終戦「ラリー・オーストラリア」(11月14日~17日予定)が現地の大規模火災によりキャンセルとなりシーズン終了したが、じつはその直前、来季のWRCカレンダー復帰が決定した「ラリー・ジャパン」(2020年11月19~22日)のテストイベントとして、「セントラルラリー愛知・岐阜2019」が11月7日~10日の日程で開催されていた。

©TOYOTA GAZOO Racing

シーズン佳境のラリー・スペインとラリー・オーストラリアの間の開催ということもあり、WRCドライバーとしては、今年WRCデビューを果たした勝田貴元選手がトヨタ・ヤリスWRCで出場。

他のWRCドライバーの出場はなかったが、Mスポーツのエルフィン・エバンスが来年のコースを下見すべく、レッキ(コースを確認する事前走行)や開会式には参加していた。

今回、ラリードライバーとして参加していた元F1ドライバーのヘイキ・コバライネンにコースの印象を聞いた。

「全体的に高速な区間と低速な区間が組み込まれていて、バランスは良いと思う。僕はWRカーをドライブしたことないので、なんとも言えないが、速いマシンほど攻めがいがあるコースじゃないかな」と好印象。

また、今シーズンからWRCにスポット参戦している勝田選手に、海外のラリーとの違いについて聞いてみた。

「レッキのとき、僕のコ・ドライバーはイギリス人なのですが、道端の自動販売機で温かいコーヒーが買えることに驚いていました。海外では外に自動販売機が置いてあることもないですし」と答え、日本の治安の良さからくる文化の違いが外国人クルーには驚きであることを話してくれた。

©TOYOTA GAZOO Racing

ラリーは、地元・愛知出身の勝田貴元選手が見事優勝を飾り、大会を大いに盛り上げた。

また、販売したチケットはほぼ完売というもので、大きな事故もなく、来年の本番に向けて関係者はほっと胸をなでおろしたことだろう。

とくに勝田選手とヤリスWRCの人気は別格で、サービスパークでは常に周囲に人だかりができていた。これで来年、トヨタのヤリスWRCだけではなくシトロエン・ヒュンダイ・Mスポーツと各チームのマシンがサービスパークに並んだらとてつもない人気スポットになるだろうと容易に想像できる。

今回のテストイベントでは、マシンを整備するサービスパークを2005年愛知万博(愛・地球博)のメイン会場だった“愛・地球博記念公園(モリコロパーク)”に設置。

さらに、この敷地内のサイクリングコースを利用してSS10とSS11を設定した。愛・地球博記念公園は公共交通機関であるリニモ駅が目の前にあり、そのアクセスの良さは抜群。今回の人気もサービスパークへのアクセスの良さが大いに貢献したものと感じられた。

また、クルマでなければ行けない各SSも大いに盛り上がった。

©TOYOTA GAZOO Racing

大会主催者とWRCが設定したコースには「日本の原風景」とも言うべき田舎の雰囲気があり、関係者にも好評。そして、コースを誘致した自治体関係者や地元住民も、目の前を走行するラリーカーを楽しんでいた。

SSによっては、自治体が観戦するファンに向けて豚汁を振る舞うなど各地でおもてなしがあり、観光面における地元側のWRCへの期待は非常に高いものだった。

こうして書くと100点満点のテストイベントに思えるが、もちろん来年の本番に向けてやるべきことも多い。

まず運営では、日本では仕方ないことだが、交通渋滞を想定した走行ルートと時間帯の設定に再考が必要だろう。今回もSS5が交通状況悪化による遅延が原因でキャンセルとなった。また、スケジュール遅延により国内格式参加者のSS14がキャンセルとなった。

また、コースの安全を守るマーシャルスタッフなどのボランティア人数が「現状のままではとても足りない」という声も今回参加したマーシャルスタッフから上がった。

10年ぶりのWRCカレンダー復帰ということもあり、その間は国内ラリーが細々と各地で行われていただけ。必要とする人材育成がまだまだ足りないというのも現状だろう。ただ、今回のテストイベントの成功により知名度が上がることで、ボランティアの数は増えるだろう。主催者の努力だけでは足りない部分をぜひカバーしてもらいたい。

そして今回、何よりも良かったのは、地元住民が非常に協力的なことだ。それについて、誘致に協力した地元関係者に聞いてみた。

「いま地方はどこもそうだと思いますが、みな子供たちに存続できるビジネスを譲りたいと思っています。例えば、ちょっとした観光地であっても、人が多いのは土日休日だけ。その週末需要だけでビジネスを成り立たせることは難しい。

でも、WRCが来ることによって世界に地域の名前が広がり、平日も観光客が少しでも増えてくれれば、存続できるビジネスとして成り立ちます。子供たちが県外や地域外へ行かないでも仕事になる。特産品だって、訪れる人が増えれば売れる数も増える。地域には魅力ある特産品や名所はたくさんあります。

ただ、その知名度が高くないのが、どの地方も抱えている問題のひとつだと思います。今回のWRCの誘致も、騒音が増えるとか交通事故が増えるとか、そういう反対意見も確かにあります。でも、もっと地域の名前を広めて、ひとりでも観光客が増えてくれることも大事だとみな感じているんです」

実際、地元自治体関係者の協力は非常に大きく、自治体や地域の第3セクターなどで働く人たちがファンに向けてのおもてなしや交通案内などのサポートに追われていた。こうした地元住民の協力がなければ、今回のテストイベントも無事開催とはいかなかっただろう。

ラリーイベントとしてのWRCラリー・ジャパンの成功は、結果として地域の観光業を押し上げる存在となり、地元とウィン・ウィンの関係を築くことが重要だ。それが実感できた「セントラルラリー愛知・岐阜2019」であった。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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