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落合モトキ『桐島、部活やめるってよ』の撮影現場は「毎日が修学旅行」「毎晩誰かの部屋に集まって…」

©テレビ朝日

6歳の時に『やっぱりさんま大先生』で芸能界に本格デビューして以降、多くのドラマ、映画、舞台、CMに出演してきた落合モトキさん。映画『MONSTERZ モンスターズ』(2014年)ではゲイ役、映画『日々ロック』(2014年)ではビジュアル系ロックバンドのボーカル役、映画『ホットロード』では暴走族など、イケメン俳優の枠にとどまらず、シリアスな役柄からコメディーまで幅広い役柄に挑戦。11月23日(土)からは脳卒中で半身不随になる青年という難役に挑んだ短編映画『歩けない僕らは』が公開される。

©テレビ朝日

◆撮影現場で井筒和幸監督から「ボケ!」「カス!」と愛のムチ

幅広い役柄を演じ分ける若手演技派俳優として知られる落合さんだが、転機となった作品は井筒和幸監督の映画『ヒーローショー』(2010年)だったという。

※映画『ヒーローショー』
2006年に発生した集団リンチによる殺害事件を基にした青春バイオレンスムービー。中途半端な日々を送りながら、アルバイトでヒーローショーの悪役を務める若者たちが女性のことでショーの最中に大乱闘に。暴力はエスカレートしていき、ついに殺人が。

「シビアな内容で最高に後味の悪い映画ですけど、あれは転機でした。撮影に入った日がちょうど20歳になった時だったんですよね」

-井筒(和幸)監督の現場は厳しいことで知られていますが-

「はい。すごかったです。コテンパンにやられました。『ボケ!』とか『カス!』、『今まで何やってきてんねん』って毎日のように怒られましたけど、そう言われて当たり前だったのでありがたかったです。そういう経験は他にないですし、あれがなかったら、今の僕はいないと思います。

あの映画はずっと、『監督に何を言われるんだろう?』って思いながら不安な顔でやっているんですよ、俺。でも、スクリーンで見ると、それが役柄とマッチしている感じになっていて…。

それで、あれを見た吉田大八監督が、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)のオーディションに呼んでくれたって言っていました」

※映画『桐島、部活やめるってよ』
男子バレー部のキャプテンだった桐島が部活を突然やめることになったのをきっかけに同級生5人の日常に些細な変化が…。
この映画では、神木隆之介さん、東出昌大さん、橋本愛さん、松岡茉優さん、山本美月さん、大後寿々花さん、太賀(現在は仲野太賀)さん、浅香航大さん、鈴木伸之さんなど、若手注目俳優陣が多数出演していることも話題を集めた。

-『桐島、部活やめるってよ』に出演された皆さんは、今すごい活躍されていますね-

「すごいです。みんな出てきましたね。何か世間が『ヨーイドン!』って言ったような気がするかな。でも、久々に会うと、ちょっと照れ臭かったりします、あの人たちは(笑)」

-同年代のこれからという人たちがたくさんいらしたわけですが、意識しました?-

「いえ、楽しかったからそれは感じなかったですね。作る楽しさ、公開されてみんなに評価されるうれしさを初めて感じたんですよね。

それでアカデミー賞もいただいて。何か楽しさがいっぱいあって、『多分これを超える現場というのは、もうないんだろうな』って思いました。撮影が終わってみんなと別れる時、初めて涙した現場でした」

-それほど楽しい現場だったのですか-

「超楽しかったです。毎日が修学旅行ですよ。毎晩誰かの部屋に集まって色んな話をして、楽しかったですね。あの年齢だったからなんでしょうね。今、同じメンツで行ったとしても、ああいう風にはならないと思うので」

-どの年代にどういう作品と出会うかというのは大きいですね。桐島のメンバーで集まることはあります?-

「今はもうあまり集まらなくなっちゃいましたね。一時期はどんちゃん騒ぎしていたこともありましたけど。

連絡先は知っているけど、同じ仕事をしているから、またどこかで会うだろうという感じです。神木君とは『探偵学園Q』(日本テレビ系)とかも一緒にやっているので、同級生に会ったような感じでしたね」

-深水元基さんとW主演の映画『ハイザイ~神さまの言うとおり~』は桐島の後ですか-

「そうです。桐島が年末に撮影で、1月に沖縄で『ハイザイ~』を撮っていました。あれは観光と仕事が半々みたいな感じでした。沖縄に1週間ぐらい行きっぱなしだったんですけど、沖縄が寒かったんですよね」

-あの作品で映画祭に初めて行かれたそうですね-

「沖縄国際映画祭に初めて行きました。あの時はおいしいものを食べに行った記憶があります」

-初めてのレッドカーペットはいかがでした?-

「もう恥ずかしくて(笑)。別に俺は指をさされるタイプじゃないんですよ。『落合君だよね?』って全く言われないし、後ろの吉本のお笑い芸人さんのほうに視線が向いているから、ほんとに顔を下に向けて歩いていたかもしれない。恥ずかしくて(笑)。

今度はちゃんと、もうちょっと頑張って華やかになってレッドカーペットを歩きたいですね」

©テレビ朝日

2014年は出演映画が7本公開。かつてないほど個性的な役柄に挑戦することに。

『日々ロック』では主人公(野村周平)のライバルとなるビジュアル系ロックバンドのボーカル役。白目をむいてシャウトする振り切った演技が話題に。

「あんなにふざけている状態で撮影したことはないというほどでした。台本がすでに強烈だったので、振り切ってやらないと、あとで絶対に後悔すると思ってやりました(笑)」

-落合さんも楽器を演奏されるそうですね-

「ギターとドラムをやっていますけど、『日々ロック』ではプロのバンドの方が入れてくれました。あれはライブのシーンもほとんどアドリブだったので、大変でした。もう必死でやったという感じです(笑)」

※映画『MONSTERZ モンスターズ』
ひと目見るだけで人を意のままに操ることができる男(藤原竜也)と、その能力が唯一通用しない男・田中(山田孝之)との対決を描いたこの映画で、落合さんは田中の親友でゲイのジュンを演じている。

-ゲイの役から気弱な青年、ワルっぽい役…実に多様ですね-

「あの時期は特に濃かったですね、役が。自分ではそんなに意識してないんです。自分でイメージを固めちゃいけないなんて思ってなくて、いただいた脚本がたまたまそうで、自分でフィルターを通してやってみたみたいな、本当にそんな感じだと思います」

-出演された作品はきちんと見ています?-

「そうですね。こういう取材とかがあるので見ておかないとって(笑)。本当は見たくないですよ、恥ずかしくて。でも聞かれた時に一応ちゃんと答えなくちゃいけないので。それでやっぱり初見は自分を目で追ってしまうし、反省します。

しかも試写会ってしらふで行くじゃないですか。酔っ払っていたら結構寛容な気持ちで見られるかもしれないですけど、しらふだと、結構突き付けられている感じがしますね」

-初号(試写)は大体いろいろ反省しながらですか-

「そうです。あと、感想言わなきゃいけないじゃないですか。喫煙所などで監督さんに。それが、何かいいことを言わなきゃいけないっていうような風習があって(笑)」

-否定的なことは言ってはいけない?-

「言っている人もいますけど、29歳の若造が否定的なことを言っても可愛くないじゃないですか(笑)」

©映画「歩けない僕らは」

◆サウナで知らない″オジサン″に気づかれたい?

※映画『歩けない僕らは』
回復期リハビリテーション病院1年目の理学療法士・宮下遥(宇野愛海)は、脳卒中を発症し、左半身が不随になった柘植(落合モトキ)を初めて入院から退院まで担当することになり、厳しい現実と向き合うことに…。

-最初に台本を読んだ時にはどう思いました?-

「繊細な作品だなというのが1番にあって。監督が僕よりひとつ上の30歳なんですね。もっと自分のエゴが強いような作品を撮りたい年頃だとは思うんですけど、こういう繊細な作品を撮るひとつ年上の人もいるんだなって、ちょっと驚きでした」

-病気になってからだに障がいが…という設定は初めてだと思いますが-

「脳卒中で左半身がまひして彼女も出て行って…。そこなんですよね。周りで応援してくれる人があまりいないというのが、柘植さんは1番つらいところだなと思いました」

-役作りはどのように?-

「やったことがない設定なので、撮影に入る前にプロデューサーさんと監督と施設に見学に行かせていただきました。障がい者を演じることはできるのかなとは思うけど、気持ちのモチベーションをどうするのか。

『この人は本当に治したいのかな』っていう気持ちもあるし、『治っても何ができるんだろう?』っていう気持ちも出てくると思うので。リハビリ施設に行ったことで、そういう繊細な部分を導いていただいた気がします。でなきゃできなかったかもしれない」

-病気になったことで仕事もやめなければいけなくなってしまい、その絶望感が痛いほど伝わって来ました-

「彼女も去ってしまい、何のために頑張るのか。何もないですからね。退院までリハビリを頑張りますけど、そこからですよね。いざ家に着いた時、へこむんだろうなぁ。冷蔵庫の中も全部腐ってるだろうし。明日が来るのが怖いでしょうね、そうなったら」

-柘植に起きたことは、いつ誰の身に起きてもおかしくないことなので、色々考えさせられますね-

「そうですね。明日は我が身というか。ただ、実際に障害のある方に不快な思いをさせないように、傷つけてはいけないということは監督が全部くみとってくれていたと思うので、自信を持って演技はできたかなと思います。

-撮影は何日だったのですか-

「4日間です。栃木に泊まって」

-シリアスな役も多いですが、気分転換はどのように?-

「サウナが好きでよく行きます。汗をかくことが好きなので、汗をかきに行っているようなものですね」

-周りの人に気づかれませんか-

「大丈夫です。気づかれない。全然バレないです。サウナで気づかれるようになったら一丁前ですよね。だって自分が出ているテレビを見てなさそうなおじさんばっかりだなあって思いますもん(笑)。一緒にニュース番組を見たりしていますけどね。

撮影現場でも気づかれなくて、『これ、何の撮影?』ってよく聞かれますよ。だから、『何の撮影かな?』なんて言っていて、『落合君』ってスタッフに呼ばれて行くと、唖然とした顔をしていて(笑)。マジでそんな感じですよ」

-だからこそ、どんな役柄にでもなりきれるのかもしれないですね。これまでに苦労した役は?-

「泣くシーンはいつも苦労しています。『歩けない僕らは』は奇跡的に出ましたけど。

年々涙腺は弱くなっているんですけどね。『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)を見て泣いた時にはトシだなあって思いました。あと『千鳥』のノブさんのツッコミが会心で決まった時に泣いたんですよね」

-そこで泣きますか?-

「泣いたんですよ(笑)。見事にツッコミが決まって、思っていた以上に客席が大爆笑していて、感動的で思いっきり泣いてしまいました。個人的にノブさんを知っているわけではないんですけど(笑)。

YouTubeで好きなのがあるんですよ。子どもがディズニーランドに行くよって言われてうれし泣きをするやつ。うれしすぎて泣いちゃう。可愛いんですよ。あれ超泣きますね」

感受性がとても豊かで優しい。スカウトされて25年。数多くの現場を経験しているが、今でも初めての現場に行く前日は寝られないという。「緊張感を持って仕事をしています」と話す姿が爽やか。演じる役によって全く違う顔を見せる落合さん。次はどんな役にチャレンジするのか楽しみだ。(津島令子)

ヘアメイク:田坂たかえ

©映画「歩けない僕らは」

※映画『歩けない僕らは』
11月23日(土)~29日(金)まで新宿K’s cinema
ほか全国順次公開。(同時上映『ガンバレとかうるせぇ』)
監督・脚本・編集:佐藤快磨
出演:宇野愛海 落合モトキ 板橋駿谷 堀春菜 細川岳 門田宗大 山中聡 佐々木すみ江
配給・宣伝:SPEAK OF THE DEVIL PICTURES

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