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宇野昌磨、ジャンプ構成下げずに続ける挑戦。復調のカギは“開き直り”<ロシア大会展望>

GPシリーズ4戦目を終えて、男子のネイサン・チェン(アメリカ)と女子のアンナ・シェルバコワ(ロシア)が2勝でファイナル進出を確定した状況。

第5戦「ロシア大会」の見どころは、誰が「GPファイナル」を確定・有力にするかになる。

◆“表現力”の宮原知子、回転不足克服で「GPファイナル」へ

女子は第6戦の「日本大会」に、フランス大会優勝のアリョーナ・コストルナヤ(ロシア)と2位のアリーナ・ザギトワ(ロシア)、カナダ大会2位の紀平梨花が出場。

順当ならこの3人が3位以内に入り、ポイントを24点以上にして「GPファイナル」進出を決めるだろう状況だ。

その前の戦いとなる「ロシア大会」では、「カナダ大会」優勝のアレクサンドラ・トゥルソワ(ロシア)が「GPファイナル」進出を決めるだろうが、それに続く2人目の座を「中国大会」2位の宮原知子と、「フランス大会」3位のマライア・ベル(アメリカ)が争うことになる。

宮原は2週連続の試合になるが、「中国大会」では熟成された演技を見せた。

写真:アフロ

SPは最初の連続ジャンプの3回転トゥループと、後半の3回転ループで回転不足を取られたが、アイスショーからしっかり滑り込んできたプログラムの完成度は高く、演技構成点は全選手中最高の35・15点を獲得。

68・91点と不本意な得点ながらも、シェルバコワに4・60点差の2位に付けた。

そしてFSも後半のジャンプ3本が回転不足を取られていたが、レベル4にしたスピンやステップ、さらにはコリオシークエンスでもしっかりGOE(出来栄え点)を稼ぎ、演技構成点は全選手最高の72・36点で、得点は142・27点。

トリプルアクセルを2本決めて追い上げたエリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)をかわし、211・18点で2位になった。

今年2019年5月から6月にかけての「ファンタジー・オン・アイス」では、アーティストとのコラボレーションにも挑戦して磨きをかけてきた表現力の高さを見せる演技。

回転不足5本もありながら、この得点に乗せたのは、彼女の演技の確かさを証明するものだ。

一方のベルは、「フランス大会」ではSP、FSともにほぼノーミスという滑りで212・89点を獲得して3位になっている。

写真:アフロ

宮原は、ベルを上回り2位以内に入れば「GPファイナル」進出も確定する。

プログラム全体の出来に関しては「中国大会」の高評価で自信を得ているだろう。「ロシア大会」では、回転不足を克服した納得の笑顔を見せて欲しい。

他の選手を見れば、「カナダ大会」で7位に止まったエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)が「カナダ大会」に続くトゥルソワとの戦いでどんな滑りを見せてくるかも注目だ。

◆宇野昌磨、“開き直り”が復調のカギか

一方男子は、「中国大会」では誰にも優勝のチャンスがあったことで、SPは緊張して有力選手が軒並みミスをし、ボーヤン・ジン(中国)が261・53点で優勝していたが、ロシア大会も本命不在で同じような状況になっている。

その中で「カナダ大会」2位のナム・ニュエン(カナダ)や「フランス大会」2位のアレクサンダー・サマリン(ロシア)、さらには「アメリカ大会」3位のドミトリー・アリエフ(ロシア)のうち誰が抜け出して「GPファイナル」進出を決めるか注目だが、日本にとっての最大の見どころは、「フランス大会」で8位と屈辱の結果になった宇野昌磨が、どんな復調ぶりを見せてくれるかだ。

写真:アフロ

宇野の「フランス大会」のSPは、最初の4回転フリップはしっかり決めたが、次の4回転トウループと最後のトリプルアクセルで転倒して79・05点で4位発進となった。

そして逆転での表彰台を狙ったFSでは4回転倒と大きく崩れてしまい、9位の得点。シニア転向後最低点となる215・84点と屈辱を味わったのだ。

今季の宇野は、コーチが不在という状態。これからの成長のために新しい環境を求めたが、シーズンインまでにコーチを決めることが出来なかった。

そんな影響もあってジャンプが崩れ始めたのだろうが、昨季までは「どんな時でも決められる」とまで自信を持っていたトリプルアクセルをSPとFSで3本とも転倒してしまうというのは、完全に自信を失ってしまっている状況と言っていいだろう。

それでも構成を下げることなく、SPでは2本、FSは3種類4本の4回転に挑戦しているのは彼の意識の高さであり、意地の強さだ。

ジャンプに入る動作などの、微妙なズレを指摘してくれる存在がいなかったことが「フランス大会」の失敗の原因だろうが、元々高い技術力も持っているだけに、気持ちさえ開き直れれば、その失敗を克服できる可能性は十分だ。

他の選手たちのこれまでの結果を見れば、260点台後半に乗せれば優勝可能な状況。

その中で宇野は、優勝してもポイントは18点止まりでよほどのことがない限りファイナル進出は難しいが、ここは無心で自分の演技をすることだけに集中し、羽生結弦やチェンを追いかける存在であることを証明してほしい。<文/折山淑美>

※番組情報:『フィギュアスケートGPシリーズ2019「第5戦・ロシア大会」』
11月15日(金)深夜0:20~「男子ショート」 テレビ朝日 関東地区・東日本放送・岩手朝日テレビにて放送/AbemaTVにて配信
11月16日(土)よる6:56~「女子ショート/男子フリー」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信
11月16日(土)深夜2:00~「女子フリー」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信