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「現王者を蹴り落として」トヨタのタナック、ラリー・スペインで王者獲得なるか

2019年のWRC(世界ラリー選手権)、年間14戦のシリーズも残り2戦。今週末の舞台は、スペイン。同国第2の都市バルセロナがあるカタルーニャ州はタラゴナの周辺地域で開催される。

©TOYOTA GAZOO Racing

世界遺産にも指定されている古い遺跡群が残る街、タラゴナ。バルセロナまでは約100km程度と、クルマ移動であれば現地の感覚では比較的近い距離にあり、現地での人気はもちろん、海外旅行者も滞在日数次第でラリー観戦に加えて世界遺産観光やバルセロナ観光などが楽しめるラリーイベントとなっている。

◆キャンプスタイル観戦の魅力

ラリーは、必ずしも大きな観光都市の近くで開催されるわけではない。それだけに観戦スタイルも様々だ。

ホテルに宿泊しクルマでお目当ての「SS」(スペシャルステージ)と呼ばれる走行コースまで行くスタイルもあれば、少しでも近く、そして同時にキャンプなども楽しめるよう、コース近くのキャンプ場や臨時に開設されることがあるキャンプ可能スペースで宿泊するスタイルもある。

さらにツワモノになると、現地観戦ルールの範囲内でキャンプ道具をコース近くまで持ちこんだり、コース近くでBBQをして走行を待ってみたりと、まさに十人十色な楽しみ方をしている。

先日、ついに2020年のラリー・ジャパン開催が決定したが、このラリー・ジャパンでもキャンプスタイルの観戦などが楽しめるのではないかと期待されている。

また、TOYOTA GAZOO RacingドライバーとしてWEC(世界耐久選手権)を戦う小林可夢偉は個人的にもキャンプを普段から楽しんでおり、こうしたラリーやレースでのキャンプ観戦を楽しんで欲しいと言う。

「僕がキャンプを始めたのは6年前なのですが、当時は予約が必要ないほどキャンプ場もガラガラでしたが、いまは日本でも週末は予約が取れないくらいキャンプが人気になってきました。キャンプの良さって、人との距離感というか、一緒に食事をし、一緒にテントで寝るわけですから、常に一緒。だから、ふだん家などに居るよりずっと言葉が増えるというか、コミュニケーションが増えます。それってすごく大事だと思うんです。近年、サーキットでもキャンプ観戦するスタイルが増えてきて、ラリーもキャンプとは凄く親和性があると思います」

小林可夢偉は、キャンプ観戦の良さをこのように語っている。

今年、日本では大きな台風が各地に被害をもたらしているが、その復旧時に電気の供給で役立ったのが、クルマから電気を出力できるプラグインハイブリッド車などの日本車だ。可夢偉は、この給電出来る自動車があれば、さらにキャンプ観戦は楽しくなると語る。

「まだ日本のキャンプでは不便を楽しむスタイルが主流ですが、欧米だとキャンピングカーなどで日常と変わらない快適空間をそのまま屋外に持ち出し、生活のオンとオフを楽しむスタイルが増えています。そのとき、プラグインハイブリッド車のように、エンジンを掛けることなく電気を給電できるクルマがあると、テントスペースでも電気毛布が使えたり、電子レンジが使えたり、より快適なキャンプ観戦が楽しめます。こうしたときに、電気の大切さや快適さも感じられると思うんです」

◆トヨタのタナック、王者獲得なるか

©WRC

話をラリーに戻すと、今年もラリー・スペインは、初日がグラベル(未舗装路)、2日目と3日目がターマック(舗装路)を走行するミックスサーフェスと呼ばれるラリーとなる。

このラリーでは初日のグラベルが重要だと、トヨタのヤリ‐マティ・ラトバラはWRC公式インタビューで語った。

「初日のグラベルをどれだけ良くまとめられるかが大切だ。なぜなら、ターマックの路面はサーキットのようにスムーズで、そこを最高のラリードライバーたちがレーシングドライバーのように走る。結果、ターマックでの差はとても小さい。だからこそ、初日のグラベルが鍵となるんだ」

©TOYOTA GAZOO Racing

そして、このラリー・スペインでは2019年のドライバーズチャンピオンシップが決まる可能性がある。

王座にいちばん近いのはトヨタのオット・タナック。それをシトロエンのセバスチャン・オジェとヒュンダイのティエリー・ヌービルが追っている。「僕の次のモチベーションは、現王者(オジェ)が引退する前に蹴り落としてその座を奪うことにあるよ」とタナックは今シーズンでの王者獲得を誓った。

©TOYOTA GAZOO Racing

また、トヨタにとっても2年連続マニュファクチュアラーズタイトル獲得がかかっており、現在ランキングトップのヒュンダイとは8ポイント差。このラリー・スペインでトヨタの3台ともに上位入賞を果たし、ランキングの逆転を狙いたいところだ。

今回のラリー・スペインでは、金曜日の初日はSS1からSS6までを走行。初日はグラベルラリーだが、SS3とSS6は未舗装路とアスファルト路面の両方が組み合わされており、タイヤの使い方が難しい。ラトバラのコメント通り、この初日をどうまとめるかは重要だ。

土曜日はSS7からSS13まで、すべてターマック走行となる。非常に細い山道だが路面はスムーズで、それだけにミスは厳禁だ。SS13はサービスパークがあるサロウの街なかに作られた特設コースを走行する。そして日曜日もSS14からSS16までターマックとなる。

金曜日、SS1の現地スタート時間は9時23分、日本時間は16時23分だ。

現在日本では2年に一度の「東京モーターショー」が東京ビッグサイトとお台場周辺エリアにて開催中(10月24日~11月4日)。オット・タナックの初ワールドチャンピオンという吉報が届くよう、ぜひともラリーを応援したいところだ。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>