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「私も結構“ピンチ”って…」女子フィギュア4回転時代に挑む、紀平梨花の覚悟。

アメリカのラスベガスで、現地時間の10月18日(金)より開幕した「フィギュアスケートGPシリーズ」。

女子シングルの注目は、シニア2年目を迎える紀平梨花(17歳)だ。

写真:アフロ

紀平は昨季、大技のトリプルアクセルを次々に決め、日本勢では浅田真央以来13年ぶりに、シニア1年目で「GPファイナル」金メダルを獲得した。

世界を驚かせ、トップスケーターの仲間入りを果たした彼女だが、今季を前に紀平が口にしたのは、意外な言葉だった。

「私も、結構ピンチって思うようなぐらいの本当に素晴らしい選手がたくさんいるなと思っています」(紀平)

紀平が抱く危機感の裏には、女子フィギュア界が迎えた“大きな変化”があった。

◆女子フィギュア、4回転時代へ

昨季、ジュニアの大会では、女子選手が次々と4回転を成功させた。

その筆頭が、3種類の4回転ジャンプを操り、ジュニアの大会を数多く制してきたロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ(15歳)だ。

写真:アフロ

シニアデビュー戦となった9月の大会では、3本の4回転を決め、フリーと合計で世界最高得点をマークして優勝を果たした。

さらに、最高難度の4回転ルッツを武器に持つ、同じくロシアのアンナ・シェルバコワ(15歳)。

昨季の「世界ジュニア選手権」で銀メダル、「ロシア選手権」でアリーナ・ザギトワやトゥルソワを抑え優勝した逸材だ。「GPシリーズ」初戦となった先日の「アメリカ大会」でも、4回転ルッツを2度決めて、見事優勝を果たしている。

ほかにも、4回転を成功させる女子選手が次々と現れ、ハイレベルな戦いが予想されている。

その戦いを勝ち抜くため、2019年5月、アメリカ・コロラド州で合宿をしていた紀平は、多くの時間を“4回転ジャンプ”習得の練習に費やしていた。

「トリプルアクセルも安定するまでにはすごく時間がかかったので。北京五輪までにしっかりと安定させられるように、早いうちから挑戦していかないといけないと思いました」(紀平)

◆4回転取得のための“3つの取り組み”

では、どのようにして、高難度の4回転ジャンプを習得しようとしているのか。紀平の取り組みを追うと、3つのポイントがあった。

まず1つ目は、「高地合宿」。

紀平が練習していたコロラド州も、標高1800メートルに位置しているのだが、高地では空気抵抗が少ないため、ジャンプが成功しやすいのだという。

実は、紀平がトリプルアクセルをマスターするきっかけとなっていたのも、標高1800メートルのこの場所だった。

「今までここでトリプルアクセルを何度も跳べるようになって、関大のリンクに帰ってから成長してたくさん跳べるようになりました」(紀平)

その成功体験を増やすことで、高難度のジャンプの感覚をつかむ目的があったのだ。

「練習初めの2、3回目では決まるようになったので、力がついた合宿になったんじゃないかなと思います」(紀平)

2つ目は、「体のケア」だ。

昨季、紀平の躍進を支えたトリプルアクセルの成功率はおよそ5割と、決して安定しているとは言えなかったのだが、その要因となっていたのが“筋肉”だった。

海外を転戦する中で、筋肉のコンディションを保つことができず、ジャンプに大きな影響を及ぼしていたのだ。

今季、4回転ジャンプに挑戦することで、体にかかる負担もさらに増えることが予想される中、新たに体のケアを依頼したのが、かつて荒川静香や浅田真央ら歴代の日本代表選手を見てきた、加藤修トレーナー(71歳)だ。

©テレビ朝日

これまでは、紀平自身でケアをおこなうことも多かったが、今季は加藤トレーナーが帯同してくれることで、コンディションも整えやすくなる。

「前の日に頑張った分の疲れを少しでも軽減させて、調子を保てるようにするにはケアはすごく大事だなと思います」(紀平)

3つ目は、「衣装へのこだわり」だ。

©テレビ朝日

袖丈やスカートの長さ、重さなどで、ジャンプを跳ぶ際の感覚が変わるため、実際に試着し動いてみた感覚で、1センチ単位で衣装の担当に要望を伝えていた。

少しでもジャンプの成功率を上げるため、細かな部分にまで徹底してこだわっているのだ。

「トリプルアクセルも4回転も、高難度のジャンプを入れているからこそ、衣装も一番着心地がいい状態でやりたいと思ったので、すごく調整しました」(紀平)

高地合宿、体のケア、そして衣装へのこだわり…これらすべてが、4回転ジャンプ習得へとつながっていた。

2022年北京五輪も見据え、取り組み始めた紀平の4回転の挑戦について、荒川静香も“可能性”を感じている。

「ポテンシャルはかなり高いと思います。今練習しているのを何度か見ている中で、まだ力を使う加減というのが定まっていないかなというところはあるのですが、そこを手中に
収めてきたら、かなり確率の高いジャンプにしていける力はあると思います」(荒川)

紀平は、日本時間26日(土)から始まる「カナダ大会」で、ロシアの4回転ジャンパー・トゥルソワといきなり激突する。

女子フィギュア“4回転時代”を勝ち抜くために――紀平の挑戦から目が離せない。

※番組情報:『フィギュアスケートGPシリーズ2019「第2戦・カナダ大会」』
10月26日(土)よる6:56~「男女ショート」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信
10月27日(日)よる9:00~「男女フリー」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信