来場者1万2000人、国内最大級のスタートアップカンファレンスが目指す“起業が当たり前”の世界

スタートアップ企業やVC、起業を目指す学生などが集まるスタートアップカンファレンス、「IVS2024 KYOTO」 が7月4日から6日まで3日間にわたって京都市伏見区・京都パルスプラザにて開催され、起業家によるピッチイベントや、投資家やスタートアップ支援団体のトークセッションなど198の企画を実施。

過去最多となる1万2000人の参加者を記録した。

スタートアップを取り巻く環境は、ここ数年で大きく変化している。

2022年秋、日本政府が「スタートアップ5か年計画」を発表し、人材、資金、拠点などの整備が行われてきた。

あわせて東京都や愛知県をはじめ日本全国の地方自治体でもスタートアップの力で地域の魅力や経済力を増強する施策の推進がみられ、全国各地でインキュベーション施設の運営やスタートアップ企業の誘致プログラム実施事例が増えている。

また、老舗の大手企業が既存の事業とは異なる領域やスキームで新規事業開発をおこなったり、CVCを立ち上げて成長が見込まれるスタートアップ企業への出資をおこなう事例も多く生まれている。

こういった社会の変化もあり、日本国内で開催されるスタートアップカンファレンスは増加傾向にある。小規模なものも含めるとその数は1年で数百件にも及ぶが、その規模やプログラムの充実度で人気を集めているのがB Dash Camp やICCそしてIVSと呼ばれるイベントである。

中でもIVSは「起業」への関心を幅広い層へと拡張することを重要視し、2023年からは「招待制」をとりやめ、チケットを購入すれば誰もが参加できる仕組みへと変更。学生向けのチケット販売もあり、学割料金でイベントを楽しむことができるほか、高校生や大学生を中心にボランティアスタッフを多数受け入れている。

イベント運営に携わる中で、学生の時期からスタートアップ企業のトレンドや、世界をけん引するビジネスパーソンの想いに触れることができると学生内で評判となり、今年は75名の学生がスタッフとして関わり、イベントを支えた。

さらに、今年のIVSは昨年に続き京都府および京都市のサポートを受け京都で開催。

カンファレンス会場を離れた京都市内の下京区、中京区などでも計300を超えるサイドイベントが連日開催され、ミートアップイベントやエンターテインメントイベント、ピッチイベントなどにより、京都市内がスタートアップ熱に包まれた。

起業や投資、事業開発といった一部のビジネスパーソンの関心事を、学生や一般層へと広げ、地域経済の活性化にもつなげていく。スタートアップカルチャーのすそ野を広げようとチャレンジを続けるIVSが目指す未来とは?

IVSを主催するヘッドラインジャパン社の島川敏明代表にその想いを聞いた。

――IVSに携わるようになったのはいつからですか?

大阪大学の大学院時代からボランティアスタッフとして関わるようになりました。そこからスタートアップとの繋がりができていきました。その縁から入社することになりました。

IVSはもともとスタートアップのエコシステムがなかったところにVCと経営者あわせて50人くらいの会から始まっているんです。いわば経営者の経営合宿みたいなもので、3日間朝から晩までディスカッションするようなものでした。ただ、経営者や投資家が中心となっている完全招待制だと、会を重ねていくと参加するメンバーはだいたい一緒になっていくんですよね。

本来、スタートアップってどんどん新しい企業が出てきて、その中からユニコーン企業が出てくるわけで、常に新しい血を入れていかないといけないのではないかと。そのために運営チームもガラリと代替わりする必要があるとのことで、2019年から企画のトップになり、2020年からは正式に「代表」になりました。

――記者発表の場で島川さんは、今のIVSを第3フェーズにあるとおっしゃっていました。

日本政府も「スタートアップ5カ年計画」を推進して、起業家の数を10倍に増やす、だったり、ユニコーン企業を作っていくような方針を掲げています。

今までの招待制の形だと参加したくても参加できない、スタートアップのメインストリームにジョインできない人が出てしまうんですよね。より一層スタートアップを身近に感じてほしいですし、スタートアップってやり方を間違えると成功確度が大幅に低減してしまう。

そのノウハウを少しでも多くの人に届けて正しい方法で起業する起業家が増えてほしいと思って、アーリーステージの起業家やサポーターも参加しやすい体制を新しく整えました。

結果そのやり方が反響を呼んで、参加者1000人だったのが、急に1万人に増えました。平日3日間、しかも京都に1万人が集まるという事態になったんです。

――去年力を入れていた点はどのあたりだったんですか?

僕たちが大切にしているコアなコミュニティはVCを中心とした投資家コミュニティと投資先のコミュニティです。ほとんどの日本の主要なVCとつながっていますので、さらに海外のVCにも声かけて参加してもらえるようにしました。

スタートアップに必要なものってシンプルで、ヒト・モノ・カネ・情報なんですが、いちばんお金の部分が求めているところだともいえます。IVSの主役はスタートアップなので、スタートアップに関わりたい人は集まってください、という想いでやっています。去年は全国各地のスタートアップ支援をおこなっている方々に個別地道にお声掛けしてIVSを知ってもらい、地道に参加を呼びかけていきました。

――去年から京都での開催となりました。京都府や京都市との連携について教えて下さい。

これまでのIVSは毎回開催場所を変えていました。2回連続京都で開催という同じ場所での連続開催は初です。

京都で開催したい理由は大きく3つあります。ひとつは京都が日本の中でも大学が数多くある街だという点です。これから起業したい学生が多かったり、大学の研究室があるので研究者も多い。ディープテックなどの技術を元にしたスタートアップが生まれやすい環境にあります。

ふたつ目は日本の産業を率いてきた大企業の存在です。和製シリコンバレーともいわれますが、京セラや島津製作所などとスタートアップの共創が生まれたら、との想いがあります。

さらに海外から見たときの京都という点もあります。IVSはグローバルカンファレンスとしてやっていきたいと考えていることもあり、京都に行きたいと思う海外の方の希望を意識しています。去年、実際に京都でやって、スタートアップの圧倒的な熱量を感じることができました。投資家も経営者も熱量高く交流をしていただけではなく、海外の方も活発にコミュニケーションを図っていましたね。

それから合わせて「サイドイベント」も充実させました。このサイドイベントがIVSの特徴でもあり、去年定着したかなと思っています。

――サイドイベントとは、どのようなものなのでしょうか?

簡単に言うとIVSの参加者の人が周辺で勝手にやるイベントです。もともとIVSを運営するにあたっての方針があって、それは「IVSはプラットフォームになろう」ということです。招待制で開催していたときはコンテンツも人選も全部主催者側が決めていました。いわば中央集権的なスタイルです。そのやり方にも限界を感じていて。

YouTubeもそうですが、いわゆるYGCといわれるユーザーが作るコンテンツがたくさんあることで、参加者が学習し、よりクオリティの高いコンテンツが生まれていく。コンテンツを作ることで文化を作っていく。そのやり方のひとつとしてサイドイベントがあります。

もともとサイドイベントという概念も知らなかった人たちにガイドラインを作ってお声掛けをしていきました。皆さんわからないなりに企画をしてくださって、結果、僕たち主催者側だけでは企画できないようなイベントが沢山開催されました。イベントによっては50人の枠に300人の申し込みが来るというような事態も起きるほど大盛況でした。

去年たくさんのサイドイベントを開催したことで、日本のスタートアップ史に刻まれるような新しいカンファレンスの新しい運営の仕方を作れたかなと思っています。

テレビ朝日と電通が主催する事業開発ビジネスプラットフォーム「FUTURE TALENT STUDIO」は、IVSの公式メディアパートナーとして、カンファレンス登壇者やピッチ大会出場者へのインタビューを敢行。テレビ朝日の音声メディア「聴くテレ朝」にて「BooSTAR -スタートアップ紹介します- IVS編」として音声コンテンツの配信を実施。

島川氏のインタビュー完全版や、京都市長がスタートアップ企業に関心を寄せる理由、経営学者・入山章栄氏が語るスタートアップに今必要な思想、ピッチイベント「LAUNCHPAD」出場者への事後インタビュー企画などのプログラムを配信中だ。(Spotify 、Apple Podcast、YouTube、Amazon Musicで視聴可能)

※コンテンツ情報:聴くテレ朝BooSTAR ‐スタートアップ応援します‐
■配信プラットフォーム:Spotify、Apple Podcast、Google Podcasts、Amazon Music
■配信日:7月19日から不定期更新
■コンテンツ内容:
テレビ朝日ではスタートアップやイントレプレナーを応援する経済トレンドプログラム「BooSTAR ‐スタートアップ応援します‐」を4月から放送中。
このたび、BooSTARのスピンオフ企画、ポッドキャストプログラムが始動!
記念すべき第1弾は、2024年7月4日から6日の3日間、京都で開催されたIVS2024 KYOTOとのコラボレーション企画。
テレビ朝日のスタッフがIVS2024 KYOTOに乗り込み、スタートアップやその周辺の方々に、より近い距離で、お話を伺っていきます。

#01ゲスト島川敏明(IVS代表)
#02ゲスト島川敏明(IVS代表)
#03ゲスト今井遵(IVS執行役員・メディア連携担当)
#04ゲスト松井孝治(京都市長)
#05ゲスト入山章栄(経営学者)
#06ゲスト入山章栄(経営学者)・西田良規(京都市都市経営戦略監)
#07ゲスト東真希(LAUNCHPAD出場者・Remendies 代表)
#08ゲスト東真希(LAUNCHPAD出場者・Remendies 代表)
#09ゲスト・安藤奨馬(LAUNCHPAD出場・優勝者・RENATUS ROBOTICS COO)
#10ゲスト・安藤奨馬(LAUNCHPAD出場・優勝者・RENATUS ROBOTICS COO)

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