テレビ朝日が“withコロナ時代”に取り組む『未来をここからプロジェクト』。
『報道ステーション』では同プロジェクトのもと、「未来への入り口」というコンセプトで、様々な企画を展開している。
今回紹介するのは、元サッカー日本代表の高原直泰。
現在41歳の高原は、自身が設立したサッカークラブ・沖縄SV(おきなわ・エス・ファウ)で最高経営責任者・選手・監督という三足のわらじを履き、創設からわずか4年で九州リーグ優勝にまで導いた。
プレーヤーとしていまも現役バリバリの高原だが、現在彼はサッカーに加えて別の動きを見せている。それは、「コーヒー」だ。
Jリーグ史上最強の日本人ツートップとして、ともにジュビロ磐田の黄金期を支えた中山雅史が話を聞いた。
◆高原直泰が「コーヒー」に見出した“未来”
高原は2015年、「IT・観光に次ぐ沖縄第3の産業を創出したい」という内閣府沖縄総合事務局からのオファーを受け、サッカークラブ・沖縄SVを創設。モデルケースをつくるべく、沖縄の地を訪れた。
ゼロからのクラブ経営は「相当キツかったです」と振り返る高原。しかし、それをサラッと言ってのける口ぶりからは、どこか清々しさも感じられる。
そんな高原が現在足繁く通っているのが、沖縄県北部・大宜味村にあるコーヒー農園。
「サッカーチームをつくって、『まずJリーグを目指してやっていきます』というのは意味がないと思った」と、サッカー関連の収益だけでクラブ経営をしていくつもりはなかったと明かす高原。「スポーツと何かをかけ合わせて新しいものを生み出したい。スポンサーだったり、入場料だったり、そういうものに頼らずに自分たちでも稼いでいけるものが必要じゃないか」と考えたという。
そこで、「会社の一つの事業としてやっていきたい」と着目したのが農業、そしてコーヒーだった。
高原がコーヒーに目をつけた理由。それは、“コーヒーベルト”だ。
コーヒーベルトとは、北緯25度から南緯25度までのコーヒー栽培が可能なエリアのこと。沖縄はその最北限であり、日本では数少ないコーヒーの産地だ。
「ハワイのKONAコーヒーみたいになったら、沖縄の新しい特産物になる。国産コーヒーという付加価値もつけて売り出していけるんじゃないか」――高原は、沖縄でのコーヒー栽培に未来を見出した。
◆ひとりのサッカー選手の発想が「産・学・官」を動かす
しかし高原は当時、当然のことながらコーヒー生産のノウハウはもち合わせていなかった。
そこで「プロに頼むしかない」と協力をあおいだのが、1994年から2005年にかけて高原が所属していたジュビロ磐田の“胸スポンサー”にもなっていたネスレ社だ。
もともとネスレ社は、2010年より「ネスレカフェプラン」という施策を実施。世界中のコーヒー農家の保護や育成のため、各地で苗木の配布や技術指導の支援をしていた。これまでに世界18か国で10万人以上のコーヒー生産者を支援している。
しかし、日本での実績はゼロだった。そんなタイミングでの高原からのオファーについて、ネスレ日本株式会社の深谷龍彦社長兼CEOは「すごく夢のある話。むしろ僕たちが高原さんにチャンスを与えてもらえたかなと思います」と振り返る。こうして、強力タッグが実現した。
世界的企業のバックアップを得た高原は、さらに名護市、琉球大学とも連携し「沖縄コーヒープロジェクト」を発足させる。
2019年4月には、名護市に提供された土地に沖縄SVの選手全員で最初の苗木を植樹。現在は沿岸部と山間部に環境の違う農園を2箇所耕作し、それぞれで3種類のコーヒーを栽培。どれが沖縄の土壌に合うか適合性を試している段階だ。
夏に沿岸部の農園で実をつけた木もあるが、まだまだごく一部。2年後の収穫を目指し、琉球大学の力も借りながら試行錯誤を続けている。
ひとりのサッカー選手の発想が、沖縄で“産・学・官”を動かした、というわけだ。
◆中山雅史も「叫ばずにはいられない」ほど興奮!
41歳になった現在も中心選手としてピッチに立ち続け、また経営者としてもよりいっそう沖縄SVの運営に力を注いでいる高原。
コーヒー事業については今後、生産・加工・販売まで行う“6次化”を目標としており、また「コーヒーだけが農業ではない」と新たなイメージも。「コーヒーだったら、一緒に養蜂をやったらおもしろいかもしれない」と、コーヒーの香りがする蜂蜜をつくることなども視野に入れているようだ。
組織の長として、アイデアマンとして、そして選手として沖縄SVを牽引する高原。
その姿にかつてツートップを組んだ中山雅史も驚きを隠せず、思わず沖縄の海に向かって「いいな〜タカ〜!」と叫んでしまうほど。「叫ばずにはいられない!本当に楽しみです」と、高原が描く未来に期待を膨らませる。
そして最後に、中山から「ここ(沖縄)に骨埋める気?」と問われた高原。力強く、「そうですね、当然」と返していた。
※関連情報:『未来をここからプロジェクト』