日本ハム・新庄監督「進塁打1本はヒット3本分」選手のモチベーションを上げる異例の査定プラン
いよいよ3月27日(金)、プロ野球が開幕する。
テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、北海道日本ハムファイターズ・新庄剛志監督が出演し、ナビゲーターの南原清隆と対談。
昨季2年連続2位に終わり、今季は「ダントツ」でのリーグ優勝を宣言した新庄監督が、王者・福岡ソフトバンクホークス攻略の糸口や今季の打順など、その胸中を余すところなく語った。
テレ朝POSTでは、この対談の模様を全5回に分けて紹介。第3回のテーマは「1点をもぎ取る“自己犠牲”と新庄流の打撃理論」だ。
◆レイエスにも課す徹底したチームプレイ
2月21日、沖縄県名護市。南原は1年ぶりに日本ハムのキャンプ地を訪れた。この日、チームはキャンプ最後の練習日。南原の目を引いたのは、得点チャンスを想定した実践的な練習だった。
ノーアウト1・3塁の場面。打席の万波中正に対し、新庄監督はあえて「ショートゴロ」を打つよう指示を出す。実はこれこそが、今季新庄監督が掲げる最大のテーマだ。
新庄:「チームプレイです。犠牲になる練習は多めにしていきたいと思います。ヒットが出なくても1点を取って守り切って勝つ。『ここでショートゴロを打ってくれていたら』という試合が昨季は何十試合もあったので、もしかしたら『ショートゴロを打ちなさい』というサイン作るかもしれません」
打倒ソフトバンク、そしてリーグ優勝へ。チームのために自分を犠牲にし、確実に1点を取るプレーを練習で選手に植え付けていた。それは、主砲であっても例外ではない。
新庄:「レイエスは昨年、1アウト3塁でフライを上げる場面が6試合ぐらいあったんです。今日も『ショートゴロ打ってくれ』と言って、2回練習をさせました。彼のような打者でも、1点を取りに行くためにゴロを転がすチームにしていかないといけないんです」
何度もやり直しを命じられたレイエスが、嫌な顔ひとつせず「ありがとうございます」と応じた姿に、南原は「素晴らしい」と感心していた。しかし、新庄監督は「それは外国人だけじゃなくても、選手全員ができます」と胸を張る。
「やり直しをさせたら、他の選手たちの集中力が変わってくるんです。やり直しって意外と恥ずかしいから。『レイエスにもさせるんだ。俺たちもっと集中しなきゃ』と思わせる」と、意識改革の手応えを語った。
◆「進塁打1本で給料爆上げ」!? モチベーションを爆発させる新査定
続いて話題は、地味ながら勝敗を分ける「進塁打」へ。新庄監督は、選手たちのモチベーションを爆発させるための“異例の評価”について口にした。
南原:「今日もずっと進塁打の練習をしていましたね。監督は進塁打についてどう考えていますか?」
新庄:「進塁打に関しては練習ではできないんですよ。練習の死んでいるボールならできるけど、本番の生きたボールでできるかは、もう願うしかない。ただ、『進塁打を打ってくれたらヒット3本ぐらいの給料を上げる査定はします』と選手には言っています」
南原:「それは大きいですね」
新庄:「進塁打1本がヒット3本。 ABCの評価があるんですけど、間違いなく僕は『A』をつけますね。そうすれば給料が上がります。進塁打1本だけでも賞金も渡すかもしれない」
南原:「選手も嬉しいですね。進塁打が得意でレギュラーになる道も開けます」
新庄:「ファンのみんなにも進塁打でホームランぐらいの拍手はしてほしいです。『俺ヒーローなんだ。もう進塁打全部取ってやる!』って選手を勘違いさせてほしい」
南原:「なんなら“進塁打ヒーロー”つけましょうよ」
新庄:「進塁打1本売ったら1000万みたいなね(笑)。それぐらい大事にしたいです」
◆「辞めた瞬間、野球はまったく見ない」
南原:「昨年は『セコセコ野球』と言っていましたが、今年はさらにスモールベースっぽくなりそうですか?」
新庄:「セコセコ野球といってもホームラン数はダントツでしょ。もっともっと増やしたいからこそ、いいピッチャーの時にこの作戦をやりたいんです」
南原:「なるほど。エース級とか」
新庄:「だから山﨑武司さんを呼んだんです。41歳で本塁打王を取った山﨑さんの野球道は、今の若い長打者にプラスになるんじゃないかなと。山﨑福也くん、加藤貴之くん、宮西尚生くん、山本昌さんを呼んだのも同じ。やっぱり一緒にやった選手には1年でも長くやってもらいたいという気持ちがあるので呼びました」
南原:「実際にやった人の経験値がありますもんね」
新庄:「それがいちばん。やっていない人に言われても『はぁ?』ってなるんですよ(笑)。昔、阪神にいた時に、走塁コーチを調べたら盗塁0だったことがあって、『言うこと聞くか』ってなりますよね。『あんた0やん』って(笑)。だから実績のある人、経験した人を呼びたい。あと、コーチ経験のない人も。コーチ経験がある人は話が長くなる。経験のない人だったらポイントで教えてくれるから、なるほどなって」
指導については「僕は細かいですよ。でもこれで選手を成長させるんだと思えばそうなります」と断言した新庄監督。一方で「辞めた瞬間、野球はまったく見ない(笑)。本当に興味ない」と本音をのぞかせた。
新庄:「本当に興味ない(笑)。なんなら他のチームを見ているかもしれない。『さあ、このチームどうやって強くしていこうか』って(笑)。オファーが来るかもしれないからね」
南原:「本当ですよ。周りは『阪神の監督にならないかな』って言っていますよ」
新庄:「強いチームはダメ(笑)。あんまり面白みがない。だから、僕が監督になった時に、ほとんど1000万円台の選手だったのが、この4年で1億円プレーヤーが8人に増えたのは嬉しかったですね。自分のことより嬉しいです」
南原:「スター選手を育てたいとおっしゃっていましたもんね」
新庄:「でもまだ全国区じゃないんですよね。表参道歩けないぐらいのスター選手が2人ぐらいは欲しい」
南原:「まだまだ育てていきたい?」
新庄:「まだまだね」
◆恩師・野村克也氏の教えと新庄流の打撃理論
南原:「新庄監督を外から見たら、自由奔放に見えたんですけども、細かくやるようになったきっかけはあったんですか?」
新庄:「野村さんに自由にさせてもらったからかな。『カッコよく野球しなさい。それだけでいいから』としか言われていない。ほとんど野球を教わったことないです。『カッコよくて、ファンを喜ばせなさい』って。
4番を任されたら、打席では慌てず、バッティングフォームもゆっくりタイミングを取り始めて、ゆっくり芯に当てたらいいぐらいの感覚。そしたらバンバンホームラン打って、『よっしゃ来年行くぞ』ってなったのに、僕がメジャーに行って『裏切り者』って言われました(笑)」
南原:「今の話で思ったんですけど、新庄監督は選手によく『ゆっくりやりなさいとか、リラックスしなさいとか、力を抜きなさい』というアドバイスをされますよね」
新庄:「します。僕自身、現役時代はチャンスになればなるほど、いかにバットを遅く振ろうかと考えていたんですよ。慌てない。タイミングを早く取って、ボールに対してゆっくり打つイメージです。そしたらサヨナラホームランも打てたんです」
南原:「よく落合博満さんも、インパクトの瞬間だけは早いとおっしゃいますよね」
新庄:「落合さんのレベルとは違うんですけど、感覚的にはたぶん一緒だと思います。その代わりタイミングは早め早めに取っておかないといけない。僕がチャンスで打てていたイメージは、ファイターズの選手たちにランナーがいない時でもやってもらいたいですね。
いいバッターはやっぱり早いですよね。ピッチャーが投げた球を一回『受けて』から打ち出せる。たいしたことないバッターは真っすぐ待ちのところに変化球がくると、『あーっ』って。球を『受けて』いないんです。グッと受けて見極めてから振り出すバッターと、『行ったれ~』のバッター。『行ったれ~』の選手が他の球団も多すぎますね」
南原:「その『待って打てる』ができるのは、日本ハムでは誰ですか?」
新庄:「レイエスの調子の良い時と、あと郡司(裕也)くん。万波(中正)くんと水谷くんは、当たったらデカいですけど、受けてないでしょ」
南原:「その『一間』がない」
新庄:「そう。『当たってくれ打法』なんですよ。例えばピッチャーからすれば、万波くんに初球インコースの真っすぐなんてあまり投げたくない。外のスライダーからカウントを稼ぎたい。それなら、初球から真っ直ぐ待ちで、早めにタイミングをとって、スライダー1本に絞って待つと、ものすごく見えるんです。イメージは155キロぐらいの球だけど、それを待っていてくるスライダーは遅いので、それを捉えたら『当たってくれ打法』にはならない。だから横尾(俊建)コーチには、『そろそろ配球で打つバッターにならないと、ずっと2割2分、20本18本ぐらいの選手で終わりますよ』と伝えています」
南原:「監督の中では、選手が進むべき道が見えているんですね」
新庄:「僕が現役時代のチャンスの時は、カウント2ボールになれば次はもうほとんどスライダーを待っていました。スライダー待って、ゆっくり、ゆっくり、バーン!って」
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新庄剛志×南原清隆対談、第4回では「今季の理想の布陣」が明らかに。「レイエスが出て行ったら僕も辞める」と語るほどの絶大な信頼、さらに西川遥輝を“6番”に据える新庄流・打撃改造計画とは。
※番組情報:『GET SPORTS』
毎週日曜 深夜1:55より放送中、テレビ朝日系(※一部地域を除く)






