テレ朝POST

次のエンタメを先回りするメディア
未来をここからプロジェクト
menu

常識を覆す34歳での躍進!「今までの日本競泳界にはいなかった」第2のピーク迎えた鈴木聡美、強さの秘密

競泳選手のピークは、10代半ばから20代半ばに迎えると言われている。その先には、誰もが向き合うことになる“年齢の壁”がある。

しかし、そんな常識を覆す大活躍を見せているのが、鈴木聡美(34歳)。

今年3月には19歳以来、15年ぶりとなる日本選手権での平泳ぎ3冠を達成。史上最年長で日本代表入りをはたし、大きな話題となった。現在開催中の「世界水泳シンガポール2025」では、女子平泳ぎ3種目に出場予定だ。

そんな衰え知らずの姿に、周囲の選手からはこんな声が上がっている。

「あの人がいる以上はベテランなんて言えない」
「今までの日本競泳界にはいなかったような選手」

なぜ彼女は、今も第一線に立ち続けられるのか。テレビ朝日のスポーツ番組『GET SPORTS』では、その強さの秘密に迫った。

◆21歳で快挙を成し遂げた後、低迷期に

競泳人生の原点は、4歳の頃。故郷・福岡で、2歳上の姉の影響を受けて泳ぎ始めた。

高校まではほぼ無名の選手だったが、地元を離れ山梨学院大学に進学すると、猛練習を課すことで知られる神田忠彦監督のもと、一気に才能が開花する。

初めて出場した2012年のロンドン五輪では、日本競泳女子初となる1大会3個のメダルを獲得し、一躍時の人となった。

しかし、その後の世界大会では思うような結果を残せず、東京五輪の代表を逃した時には30歳になっていた。

「勝たなきゃいけない。強くなきゃいけない。そう考えだしたら、水泳に打ち込めなくなってしまって。引退したほうがいいのかなと…」(鈴木)

そんな競泳人生が、ここ数年で大きく好転した。

2024年は、パリ五輪で12年ぶりに決勝進出し、メダルまであと一歩に迫る4位入賞。2025年の日本選手権では、自身15年ぶりの3冠を達成。再びピークを迎えている。

強さの秘密を探るため、彼女の1日に密着した。

◆過酷な練習と“自分を超える力”

朝5時半。週に2日の早朝練習のため、拠点である山梨学院大学にやって来た。一回り以上離れた後輩たちとプールの準備をすると、この日も朝から4.5kmの泳ぎ込み。

長年鈴木を指導する神田監督は、苦笑まじりに語る。

「朝の6時からよく泳げるなーって感心するよ。自分のことを振り返ってみると、ちょっとできないなって思うよね」

ともに練習する学生たちも、驚きを隠さない。

「練習に来る時間がすごい早いです。自分も20分前とかには部屋を出ているんですけど、着いたら絶対に聡美さんはいます(笑)」

「聡美さんのタイム測っていて、速いなと思ったんですけど、聡美さん全然納得していなくて。練習で常に(タイムを)狙っているのがさすがだなって思いました」

およそ2時間、ほぼノンストップで泳ぎ続けていた鈴木。

朝練習終了後は、息つく間もなくジムへと移動。やっていたのは、インターバルトレーニング。20秒間動いて、20秒間休む。これをさまざまな運動で3セットずつ繰り返す。

9年前から指導する永井裕樹トレーナーは、その継続力を称賛する。

「もともと運動能力が高い子ではないんですよ。ただ、継続していく能力は、ほかのどの選手よりも高いと僕は思っている。そこが彼女のすごく強み」

1時間みっちりと追い込み、午前の練習は終了。午後は、3時から再びプールへ。朝から総距離にして10.2km。多い日だと15km以上泳ぐ日もあるという。

「よく続いてるなって思います(笑)。ただ極論やらなきゃ自分を超えられませんし、この生活だからこそ続けられてるのかなっていう気もしますね」(鈴木)

ストイックに積み重ねた練習量が、息の長い選手人生を支えていた。

◆30代で挑んだ冒険 きっかけは意外な一言

一方で、2度目のピークを迎える活躍の裏には、大きな分岐点があった。

「私はこの泳ぎだからこれで行くっていう思いが、ロンドンオリンピック当初からずっとあった。それにこだわりすぎていた。執着しすぎてたっていうのがいちばん低迷期に至った原因でした」(鈴木)

ロンドン五輪で3つのメダルを獲った当時、鈴木は「腕のストローク数の少ない、ゆったりと伸びる泳ぎ」だった。

しかしその後、平泳ぎのトレンドは大きく変わり、パワーのある外国勢が見せる「ストローク数の多い、テンポの速い泳ぎ」が圧倒的主流に。鈴木とは真逆の泳ぎが世界を席巻するようになった。

従来の泳ぎに固執したまま練習するも、タイムは向上しなかった。東京五輪も逃し、「引退」の2文字が頭をよぎる。

そんな時、凝り固まった考えを解きほぐしてくれたのが、永井トレーナーだったという。

「トレーナーさんから言われた『大丈夫だ」っていう一言。このワンフレーズだけなんですけど、『トレーニングも向上しているし、しっかり泳げてる。何の問題もないじゃん。何を悩む必要があるの』って言われた瞬間に、今まで自分で考えて悩んでいたのがバカみたいに思えて。

監督の言うフォームや方針、永井トレーナーの言うトレーニングも全部受け入れてやろう。考えるのも疲れたし、もうやーめたって。ポジティブなほうで」(鈴木)

この時すでに30代。泳ぎを大きく変えていくのは冒険だった。

◆フォーム改善で“第2のピーク”へ

愛弟子の決意を知った神田監督は…。

「今までできてなかったことというと、やっぱり上肢の使い方、プルのスピードをもっとうまく使うということ。上半身の強化ということにも力を入れないと。やっぱり新しい可能性に挑戦していかなきゃならない」

そこで重点的に取り組んだのが、袋状の用具「スイムパラシュート」を付けた練習。水に抵抗をかけることで、筋力の使い方を体に叩き込んだ。

こうして新たなフォームに必要なパワーを身に付け、ストローク数の多いテンポの速い泳ぎに変えていった。

実際に100mの泳ぎの変化を見てみると、ロンドン五輪の頃はストローク数が38回と、ゆったりと伸びる泳ぎ。一方、2024年に自己ベストを出した時はストローク数が49回と、11回も増えていた。明らかに泳ぎのテンポが速くなっている。

鈴木はこう語る。

「元々が不器用なので、みんなが1年かけてできるようなことを、私は3、4年かけないとできなかったり、やりたくてもなかなかできないことが多かった。それだけ時間かかっちゃったけど、『聡美もそれは絶対にできるからやってみよう。やるぞ』っていう風に言われたので、この泳ぎが作れたんじゃないかなって思います」

「世界水泳シンガポール2025」では、10代の頃から積み重ねた練習量と、30歳を過ぎてから手に入れた新たな泳ぎで世界に挑む。

「3種目とも大幅自己ベストを狙って決勝進出。そのなかでまた表彰台を目指していけたらいいです。記録を狙うことでおのずと結果もついてくると思うので、しっかりと目標をぶらさず、自己記録の更新を目指していけたらなと思っています」(鈴木)

大会情報:『世界水泳 シンガポール2025
2025年7月11日(金)~8月3日(日)

競泳は7月27日(日)~8月3日(日)

テレビ朝日系列地上波、ABEMA、CSテレ朝チャンネルにて放送(放送予定詳細はこちら

はてブ
LINE

トピックスTOPICS

おすすめ記事RECOMMEND