<独占インタビュー>渋野日向子、苦境の先で見出した光。メジャーチャンピオンの肩書は「捨てていい」
2019年の「全英女子オープンゴルフ」で日本勢として42年ぶりにメジャー制覇し、世界中に“スマイリングシンデレラ”ブームを巻き起こした渋野日向子。
“5大メジャー制覇”という目標に向け、さらなる飛躍を遂げるはずだった2020年。新型コロナウイルスの影響で相次いで試合が中止や延期になり、いざツアーが再開しても結果が出ず、彼女は苦しみの中にいた。
テレビ朝日で3月13日(土)に放送される『独占密着!渋野日向子~シンデレラが歩んだ432日~』では、予選落ち、苦悩の日々、そして復活まで――渋野日向子激動の1年と、2021年の新たな挑戦に独占密着。
メジャーチャンピオンの努力の裏側やはじめてのアメリカ生活で見せた素顔に迫った。
その放送にさきがけ、テレ朝POSTでは、昨年11月下旬に実施した渋野のインタビューの一部を紹介。「全英女王になってぶち当たった壁」「アメリカでのはじめての経験」「自信を取り戻せた理由」などを紹介する。
◆忘れてしまった“自分らしさ”「過去に戻りたい」
2019年「全英女子オープンゴルフ」の優勝で、一躍シンデレラガールとなった渋野日向子。
今後の目標は「5大メジャー制覇」と公言していたが、2020年のインタビューで渋野は「大口叩いていたな」と当時を振り返る。
「2020年にいろんな経験をして、どれだけ全英がまぐれというか、運で自分らしく戦えていたかということに気づきました。それを考えてしまうと、やっぱりこれから何年後に5大メジャー制覇しているというのが全然想像つかなくなりました」
2020年、渋野は全英女王として世界中から注目を浴びてスタートを切るはずだった。
しかしその矢先、新型コロナウイルスの影響によって相次いで試合が中止や延期に。
さらに、ツアーが再開しても思ったような結果が出ない。予選落ちがつづくこともあり、「全英優勝はまぐれだったのか」など、厳しい声も聞こえはじめた。
「段々と自分のゴルフがわからなくなって、試合を重ねるごとに『あれ、去年ってどうやって打っていたんだろう』とか『どうやって考えてゴルフしていたんだろう』って去年の自分を考えることが多くなって、過去に戻りたいと思ってしまうことが多くなりました」
前年のディフェンディングチャンピオンとして臨んだ「全英女子オープン」でも、連覇を期待するプレッシャーを抱え、思ったようなプレーができずに苦しんだ。
試合結果は、通算12オーバー、105位タイ。練習ではできていることが試合ではできず、大きな壁にぶち当たってしまう。
「自分のゴルフの総合力、メンタルすべてにおいて何も通用していないというか、今まで日本で数字的にはすごくよかったパッティングやバウンスバック率などで、自分らしさが発揮できない。自分らしさもそのときはわからなくなっていたので、どうやってパーをとるんだろうという風に考えてしまって、一打一打打つのをすごく怖がっていました」
予選落ちしても練習場には姿を表していたが、その心境は“無”に近かったという。
◆「メジャーチャンピオンの名前を捨てていい」
そんな渋野の転機となったのは、アメリカでの生活だった。
「全英女子オープン」が終わると、そのままアメリカツアーへ出場するため渡米。2か月、毎日7時間もの練習に打ち込んだ。
「やっぱり自分の気持ちを一番に考えたというか、アメリカツアーを戦いたい思いが強かったです。2カ月間本土で戦って、今自分がどの位置にいるのか、今の自分のゴルフはどういう感じなのか、アメリカではどれだけ通用するのかを知りたかったので、すごく悩んだ結果、アメリカツアーに出るという選択肢を選びました。
あれだけ5大メジャー制覇と言っていましたけど、自分でも上の空というか『どうなんだろう』と思っていたので、目標との距離を知るためにアメリカツアーを選んだ感じです」
失意の中、アメリカへやってきた渋野だったが、師事していた青木翔コーチと2週間離れて過ごすことで、はじめて自分自身と向き合う経験をする。
「ずっと青木コーチに頼ってばかりで、『どうしたらいいですか?』って自分で考えずに聞いていたので、やっぱりいざ一人になると何をしていいかもわからない。『これってちゃんと打てているのかな』とか自分自身でわからないのがすごく情けなく感じました。
やっぱり戦っていくうえで、ずっと青木コーチがいるわけじゃないですし、結局は自分がゴルフをしているのに、なんで自分自身が自分のゴルフに関してわかっていないんだろうと思うようになりました」
自問自答しながら練習をする中で、少しずつ生まれた心境の変化。さらに現地の試合では、こんなことも。
「はじめてのアメリカ本土での試合で、スタートコールでメジャーチャンピオンと紹介されるんですけど、周りを見てみるとメジャーの大会を勝っていない人たちが自分よりも全然上にいて、自分よりも全然強くて、上手くて。試合を重ねるごとにそれを感じてから、ここではメジャーチャンピオンの名前を捨てていいなという風に思えて、プレッシャーから解放されたというのがすごくありました」
◆初心に立ち返り、取り戻した自信
負のスパイラルに陥っていた渋野は、徐々に前向きな気持ちを取り戻し、その気持ちは結果となってあらわれはじめた。
出場したアメリカツアーの試合すべてで予選通過。帰国後も「伊藤園レディスゴルフトーナメント」で2020年シーズン初の予選通過をはたし、そこから2試合も順位を上げていった。
「2019年の全英に臨んだときのような初心を忘れない気持ちで臨めたというのがよかったのかなとすごく思います。一回予選を通ることによって、自分の中で一日一日、一打一打に対する気持ちのコントロールがすごくしやすくなったと思いますし、ムダな一打がだんだん減ったのを実感できました」
その後、12月の「全米女子オープンゴルフ」では、初出場ながら最終日を単独首位で迎えるという快進撃。日本人史上初の全米女子OP優勝、メジャー2勝目は持ち越しとなったが、4位と大健闘。
“スマイリングシンデレラ”がふたたび世界中にその存在を見せつけた。
復調の理由について、さまざまな要因のなかでも気持ちの変化が大きかったという渋野。うまくいかないときは欠点を治すことばかりに執着していたと振り返る。
「今思えば、悪いところばかりに目を向けてそればかりを考えすぎていましたね。欠点ばかりを攻めすぎてそこばっかりを考えてしまうんじゃなくて、自分のいいところをほめてあげないといけないなと思ってからは、自分のいいところをすごく見られるようになりました。でもそうやって悪いところばかり見ていたことによって、『ちゃんといいところをほめなきゃ』という発見もできたので、結局はその経験ってムダじゃないんですよね」
アメリカで自分を見つめなおした経験から、原点に立ち返り、あらたなゴルフ人生を歩みはじめた渋野。
「遠回りしている方が正解」と語る、彼女の今後の活躍に期待したい。
なお、番組では渋野のアメリカ合宿の密着映像や独占インタビューを通して、彼女の苦悩や努力の裏側、そして合間に見せる天真爛漫な素顔を余すところなくお届け。吹っ切った渋野を救った“ある先輩”の言葉、2021年のあらたな挑戦について明かす。
※番組情報:『独占密着!渋野日向子~シンデレラが歩んだ432日~』
2021年3月13日(土)午前11:00~11:40、テレビ朝日系(一部地域を除く)
TELASA、テレ朝キャッチアップ、ABEMA、TVerにて見逃し配信あり