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羽生結弦、意地の滑りで逆転狙う。首位のネイサン・チェンは“高難度プログラム”に挑戦か<「GPファイナル」男子フリー展望>

12月5日(木)からイタリアのトリノで開催されているフィギュアスケートの「GPファイナル」。

男子は今季のGPシリーズをともに2勝と安定した結果を残している羽生結弦と、ネイサン・チェン(アメリカ)のハイレベルな一騎打ちになるとみられていたが、5日のSPは予想外の結果になった。

2戦をシリーズ前半で終え、この「ファイナル」へ向けて中4週と十分な時間を取ってきたチェンは、予想通りにしっかり仕上げてきていた。

写真:アフロ

SP当日の公式練習でも、3本のジャンプはしっかり決め、特に得点源として後半に持ってきた4回転トウループ+3回転トウループはいい感触で跳んでいた。

本番のSPでは4番滑走で、最初の4回転ルッツは余裕を持って跳び、GOE(出来栄え点)で4・44点獲得する出来にした。

そのあとのトリプルアクセルもしっかり降りると、後半の連続ジャンプも着氷からの流れが若干良くなかったが、確実に決めて今季世界最高の110・38点を獲得。

対する最終滑走の羽生も、それを上回るような滑り出しをした。

羽生はトリノ入りしてから落ち着いた雰囲気を見せ、公式練習でも要所をしっかり締めるような練習をしていた。

これまでのように、氷のコンディションでエッジ系のジャンプに苦しむようなそぶりはなく、むしろ初日の練習では、「氷は『すごい好きだな』と思って滑っていました。ループに関してもサルコウに関しても、トウ系のジャンプに関してもすごく感触が良くて。本当は、試合は楽しむものじゃないと自分では思っているけど、スケート自体がすごく何か……。滑るときにワクワクしていたので、今日はスケートが楽しいなと思いながら滑っていました」と話していたほどだった。

そんな思い通りに、6分間練習でもきれいに3本決めていた最初の4回転サルコウは、力みのないきれいなジャンプで、4・16点の加点を獲得。次のトリプルアクセルは9人のジャッジ中6人がGOE(出来栄え点)で満点の5点を付け、残り3人は4点という完璧なジャンプにした。

この流れていけば当然、チェンの得点を上回る112~113点は確実に出るなと思わせる滑りだった。

しかし、次の4回転トウループは後方に尻が落ちてしまう着氷になってしまい、そこからセカンドの3回転トウループを付けられずに終わった。

それでもその後のスピンとステップはすべてレベル4にする着実な滑りにし、ステップは特に感情もこもった丁寧な滑りにしていた。だが連続ジャンプを実施できず、4回転トウループでも4・75点の減点となったことで、得点は97・43点に止まった。

◆羽生「悔しいと言ってもしょうがない」

試合後、羽生は「トウループは悪くなかったと思うけど、ちょっと力が入り過ぎたかなと思います。何か。ミスの仕方としたらあまりないパターンでしたし、何が何でも降りようと思っていたんですけど……。まぁ、しょうがないですね」と、無念さが滲み出ていた。

チェンが出した得点は、滑る前には知っていた。それでも「ちゃんと自分が納得するきれいな演技をすれば、チェンの得点は超えられる可能性もある」と考えていた。

練習に手ごたえを感じていて、納得できる滑り出しだったからこそ、勝負を意識して少しだけ力が入ってしまったのかもしれない。

チェンとの得点差は12.95点。

羽生は「この得点差はすごく大変だなと思うけど、悔しいと言ってもしょうがないし。ネイサンの演技が良かったのがすごく嬉しいので、明後日のフリーへ向けてはまたいろいろ考えて、何をすべきか、を考えながら1日1日を過ごせたらいいなと思います」と話す。

チェンの初日の公式練習では、FSは冒頭に4回転フリップ+3回転トウループを持ってきてそのあとに4回転ルッツを入れる、4種類5本の4回転を入れる構成できそうな雰囲気を見せていた。

それに対して羽生は、「氷の感触が良かったから」と、連日1本ずつきれいに跳んでいた4回転ルッツの導入を含めて、どういう戦略で来るか。

6日(金)昼の公式練習の曲かけでは、ルッツを入れた4回転5本に加え、最後にトリプルアクセル+トリプルアクセルのシークエンスを入れた構成に挑戦していたが、それは当日の氷の状態や自分の体調、気持ちの乗りなどを総合的に判断したうえで決めていくだろう。

チェンが高難度の構成にしたプログラムをノーミスで滑り切るか。さらに羽生が意地を見せて、“羽生結弦の世界”をしっかりと表現してくるか。それが7日(土)に行われるFSの最大の見どころになる。

写真:アフロ

さらに3位には、1番滑走だった上に音楽の出だしを2回間違えられるというアクシデントもあったケビン・エイモズ(フランス)が、ノーミスの滑りで自己最高の96・71点を出して入り、残り4人の表彰台争いの中で一歩抜け出した。

身体能力の高さを生かした、キレと意外性のある彼独特の滑りの世界が、F Sでも躍動するのを楽しみにしたい。<文/折山淑美>

※番組情報:『フィギュアスケートグランプリファイナル2019
12月7日(土)夜7:54~「女子ショート・男子フリー」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信
12月8日(土)夜9:00~「女子フリー・エキシビジョン」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信

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