地球のことを「自分ごと」に。“世界環境デー”に考える日々の暮らしと環境のこと

6月5日は「世界環境デー」だ。

1972年6月5日に「国連人間環境会議」が開催されたことをきっかけに、環境保全に対する関心を高め啓発的な活動を図る日として設定された。

この日にちなみ、6月4日(日)、静岡県・浜松市にあるプラスチック加工会社、株式会社中部日本プラスチックの工場では、子どもたちに楽しく環境問題を知ってもらう機会を提供するエコイベントを開催。

近隣の親子連れや、環境問題に取り組む企業の担当者などが会場を訪れ、廃材を活用したワークショップや環境活動家らが登壇するトークショーなど多彩なプログラムに参加した。

◆次の時代の主役は子ども。未来を担う子どもたちが楽しくエコを学ぶ

中部日本プラスチックは1971年の創業以来、約50年にわたり浜松でプラスチックの加工を行っている企業。

事業を展開する中で、プラスチック製品による海洋汚染やプラスチックごみの増加がもらたす環境負荷など、近年話題になっている環境問題を課題と捉え、様々な活動をおこなってきた。

2013年からは、「エコネットプロジェクト」と題したプロジェクトを立ち上げ本格的に活動。今どんなアクションが必要なのかについて、多くの人に知る機会を提供してきた。

近隣の保育園児を招いてエコ教育をおこなったり、生分解性プラスチックでTシャツを制作・販売するなど、その活動は多岐に渡る。

今回のイベントは、2021年に新工場が完成し、子どもたちが楽しみながらエコを学べる環境が十分に整ったことから、初めて開催された。自社工場を一般開放するオープンファクトリーも兼ねた企画となっている。

代表取締役社長の雪下真希子氏は次のように話す。

「これからの未来は大人というより子どもが創っていくので、未来を託せる子どもに幼いころから環境問題について知ってもらいたいです。大人は固定概念が邪魔して、発想が凝り固まってしまっている。子どもたちが環境に対する知識を持った時、“どんなアイディアでそれを解決しようとするか?”に期待したいと思っています。

子どもの言うことはその親(大人)も聞く耳を持つものなので、まずは子どもが楽しんでくれる機会を作ることが必要なのです」

◆“アート”から“スポーツ”まで暮らしに溶け込むエコを体験

テントブースでは、“海ゴミアーティスト”、高橋あすか氏の手ほどきのもと、子どもたちが廃材をつかったアクセサリー作りに挑戦。使用するのは日本各地の海岸に流れ着いたもの。高橋氏の呼びかけによって、全国から集められた。

通常はゴミと捉えられてしまう小さな素材と子どもたちそれぞれの個性が掛け合わさることで魅力的なアクセサリーが次々と出来上がっていく。

一方、工場の一画に設けられた芝生エリアでは子どもたちがサッカーボール作りに挑戦。再生プラスチックで作られた細かいパーツを組み立てるとボールになるというキットを使って作業を進めていく。

 

素材が“エコ”なのはもちろん、パーツの隙間から中に鈴を入れることで、視覚障害者がボールの場所に気付くことができたり、指を入れてボールをつかめるため、幼い子から高齢者まで多くの人がサッカーを楽しめる工夫が施されている。

自分で組み立てたサッカーボールを使って、元サッカー日本代表・石川直宏氏によるミニサッカーレッスンも開催。ボールを熱心に追いかける子どもたちの姿が見られた。

また、カンファレンスルームでは有識者による「エコ教室」も開催。

和歌山県白浜町にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」で海の生物の飼育を担当する職員が、自然環境と生き物の関わりについてスライドを使って説明。参加した小学生は「使ったプラスチックの容器をちゃんと洗わないとリサイクルできないとか、具体的なことを聞けてすごくためになった。普段の生活のどんなことが環境を守ることつながるのかを具体的にイメージできた」と話していた。

◆時代は3Rから4Rへ。今地球にできること

また今回、子どもたちが楽しみながら自然や自分自身の生活に想いを巡らせることができるプログラムに加えて、「地球のジブンゴト化」をテーマにしたトークセッションも開催。

中部日本プラスチックのエコアンバサダーで、6月から前出のアドベンチャーワールドの「サステナブルSmileアンバサダー」に就任した平原依文氏がモデレーターとなり、元サッカー日本代表・石川直宏氏、アドベンチャーワールド副園長・中尾建子氏、そして中部日本プラスチック社長・雪下氏が今世界で起きていることや身近な生活の中でできるエコ活動などについて、それぞれの視点からトークを展開した。

トークセッションの中では、プラスチック生産量は年間4億トン、そのうち約8000トンが海に廃棄されている現状が紹介され、「3R(Reduce・Reuse・Recycle)」に加えて、「地球に還す=Return to the Earth」、すなわち「4R」の活動が今求められていることが話題となった。

石川氏は、「いつでも整備されたサッカーコートでプレイできることってあたりまえじゃないってことに気がついて。(サッカー選手を引退して)今は地球をピッチにしているんです。僕が動き回っているのは地域や社会、そして地球の中なので、身の回りで感じる課題をサッカーや他のスポーツを通じて発信していきたいと思っています」と話す。

続いて平原氏は、「SDGsの17の目標の中で“環境”に関する部分にはもともとは無関心でした。ただ、バルセロナ留学中に日本語が書かれているゴミが流れついている海岸の風景を見て、地球って大きな一軒家なのだと気付いたんです。一方で宮古島に行ったときに海岸で見たゴミは日本語のゴミではなかったんです。日本で環境保全に取り組むことで、世界のきれいな風景が守られると思うんです」と自身の体験をまじえてコメントした。

また中尾氏は、園で飼育しているジャイアントパンダについて触れ、「パンダが食べる竹の量は少しで、食べなかった分を年間1000トンぐらい廃棄してしまっていた時期もあったのですが、『パンダバンブープロジェクト』を立ち上げて、食べなかった竹を元に、森を守る活動につなげていこうとしています」という事例を紹介。

そして雪下氏は、「これまで人はプラスチックを便利な素材だとして様々なところに使ってきたけれど、地球環境に注目が集まる中、プラスチック自体がだめという言われ方をすることがあります。そうではなく、プラスチックを使った後、便利な素材であるプラスチックを循環させていくことが大切なのだと思います。熱をかけたら再利用できる素材なので、使わないことで環境を守るのではなく使い方を知ること、便利なものをどう使えば環境負荷が軽くなるか、という発想が大切です。人間が自然からいただいた恩恵を、別のカタチで返していく時期に来ているのだと思います」と話した。

世界環境デーをきっかけに、日々の暮らしの中で感じることができる自然や人の営みに目を向けてみることが、未来の地球を守る第一歩になるのかもしれない。

中部日本プラスチックが手がける「エコネットプロジェクト」WEBサイト

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