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トヨタ、ラトバラがオジェに惜敗で2位。チームでは2台が表彰台【WRC:ラリー・グレートブリテン最終結果】

現地時間の10月7日、WRC(FIA世界ラリー選手権)第11戦「ラリー・グレートブリテン」のデイ4、最終日が開催された。

©TOYOTA GAZOO Racing

最終日は合計5つのSSが行われ、その結果は以下の通り。

優勝はセバスチャン・オジェ(フォード)、2位は10秒6遅れでヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ)、3位は35秒1遅れでエサペッカ・ラッピ(トヨタ)、4位は1分10秒4遅れでクレイグ・ブリーン(シトロエン)、5位は1分14秒4遅れでティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)、6位は1分15秒9遅れでアンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイ)と続いた。

現役最強王者オジェとトヨタのエース・ラトバラによる激しいつば競り合いが繰り広げられた。

©WRC

SS19スタート前の順位は1位オジェ、2位4秒4遅れでラトバラだった。続くSS19でラトバラが競り勝ち、タイム差は1秒7に。SS20でもラトバラが競り勝ち順位を逆転し、1位ラトバラ、3秒6遅れで2位オジェとなった。

そしてSS21ではオジェが勝利し、タイム差は0秒2と、まさに「がっぷり四つ」の戦いに。

いよいよ残りのSSは2つ。両ドライバーともに、ミスを恐れての安全マージンを取った走りでは勝利できない。

まずはSS22、競り勝ったのはオジェ。再び逆転し1位オジェ、3秒1遅れでラトバラとなった。

SS22の走行直後、ラトバラはインタビューで「彼がソフトタイヤだったら、多分僕より速く走る。でも、もしミディアムタイヤで僕より速かったら脱帽するよ」と答えたのだが、その直後にタイムを出したオジェは、まさにそのミディアムタイヤでラトバラに競り勝ったのだった。

3秒1のリードを築いたオジェは「正直タイムは分からない。とにかくすべてを出し尽くした。僕はどうしてもここで勝ちたいんだ!」と答えた。5年連続の王者が、この週末初めて心からの声で絞り出した勝利への渇望だった。

迎えた最後のSS23。グラベル(未舗装路)ラリーで争っているラリー・グレートブリテンのなかで、SS21とこのSS23は、グラベル用タイヤでありながら、ターマック(舗装路)を走るという特殊なSSだった。

そして、王者オジェはターマックの走りにおいて絶対的な強さを持つ。よって、ラトバラが得意とするグラベルのSS22で、オジェが競り勝った時点で、最後のSS23は圧倒的にオジェ有利な状態で迎えていたのだった。

そして、多くの関係者が予想した通り、SS23のオジェの速さは圧倒的だった。ステージトップはもちろんだが、ラトバラに7秒5の大差をつけて走りきったのだ。

SS23のゴール直後、オジェはマシンの屋根に登ってその喜びを爆発させた。

そして、オジェがマシンの屋根から降りる際、手を伸ばして降りるのをアシストしたのは最後まで競ったラトバラだった。ラトバラは、SS22でコメントした通り、脱帽して勝者に敬意を示したのだった。

©WRC

勝利したオジェは「本当にタフな戦いだった。トヨタのマシンはとにかく速い。そして相手はラトバラだ。とくに森林コースでは厳しかった。だから、そこで食いついていければと思ったし、SS22でそれができるとも思っていなかった。なんとかこのターマック(舗装路)まで来れば僕たちが有利だと思っていた。僕の子供が、タナックが勝利している時に屋根に登って喜んでいる姿を見て、「あれは何をやっているの?」と聞かれたんだ。僕も過去にしているけど見たことなかったみたいでね。「パパもできるでしょ?」って。やっと見せる事ができたよ」と満面の笑顔で答えた。

◆混戦のタイトル争い。勝負の行方を占う残り2戦

一方、惜しくも2位となったラトバラはラリー後、チームの公式リリースを通じてコメントを残した。

「素晴らしい戦いを心から楽しみました。最初の2本のステージは良い結果でしたが、その後、勢いを失ってしまいました。もしかしたら、タイヤ選択を誤ったのかもしれません。ユーズドのソフトタイヤを1本積んでステージに向かったのですが、グラベルでは十分なグリップを得られませんでした。それでも、今回の結果はチームのマニュファクチャラー選手権争い、そして自分にとって非常に重要な意味を持ちます。連続で表彰台に上がることができて、本当に嬉しく思います」

©TOYOTA GAZOO Racing

このラトバラのコメントの通り、ラリーは個人が争うドライバーズチャンピオンシップと、チームが争うマニュファクチュアラーズチャンピオンシップという2つのチャンピオンシップを競っている。

ラリー・グレートブリテンを終えて、個人タイトルの方は、1位ティエリー・ヌービル(ヒュンダイ)で189ポイント、2位セバスチャン・オジェ(フォード)で182ポイント。3位オット・タナック(トヨタ)で168ポイントとなった。タナックは2位から3位へと後退したが、残り2戦でまだまだ逆転の可能性はある。

一方チームのタイトルは、1位トヨタで317ポイント、2位ヒュンダイで297ポイント、3位フォードで273ポイント、4位シトロエンで187ポイントと続く。今回、2位と3位に入ったトヨタはリードを広げたが、その差は小さい。こちらもまた、残り2戦で予断を許さない。

WRCも残り2戦。次戦は10月25~28日で行われるラリー・スペインだ。シーズンを通じて唯一となるグラベル(未舗装路)とターマック(舗装路)の両方を走るミックスサーフェイスラリーだ。

今回のラリー・グレートブリテンも、SS21や最終SS23のようにターマックを走行したが、マシンセットアップはグラベルタイヤとグラベル仕様のマシンだった。

一方、ラリー・スペインでは、毎日グラベルとターマックを入れ替える。つまり、夜の短い整備時間にチームはグラベル仕様とターマック仕様にマシンセットアップを大きく変更しなければならない。ドライバーだけでなく、チーム力が大きく問われるラリーとなる。

残り2戦でのチャンピオンシップ争い、そしてシーズン唯一のミックスサーフェイスラリー。果たしてトヨタはどんな挑戦をするのか、ラリー・スペインも目が離せない。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>

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